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異世界に転生して虚弱体質の村人になった俺が、唯一頼ることができるのはカプセルでゲットした魔法少女だけだった。  作者: ぢたま
一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話
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一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話01 - 転生

 一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話01 - 転生


 俺が物心ついたのは、生まれた瞬間であった。

 生まれてから一年間は基本的に泣くことしかできなかった。

 食事も基本母乳であった。

 動き回るにもハイハイしか出来ないし、すぐに眠くなったので一日の大半は寝て過ごしていた。

 話せるようになってからは、言葉を覚えることに必死だった。

 俺が話せるのは日本語なのだが、それでは通じないからだ。

 そう、俺は異世界に転生したのだった。

 だが、立って歩けるようになり、ある程度現地の言葉を理解できるようになると、自分の置かれた状況がよく分かってきた。

 俺の名前はケルク。名字無しのケルクだ。

 正確に言えば、ミリハ村のケルクとなる。

 父親はガザン、母親はラセリ。

 さらに、姉弟が上に五人もいた。

 そう、俺は農家の末っ子としてこの世界に生まれ変わったのである。

 俺の夢見ていた異世界転生とは、まるで違う現実がここにはあった。

 毎日の暮らしにくたびれ切った両親と、それを支える働き者の姉弟。

 まともなお金がない、貧乏と正直さが取り柄のような家であった。

 領主が徴収する人頭税が最近になって二倍になったらしく、ただでさえ質素な食事がさらに質素というか、まともに食べられないような状況となっていた。

 そんな農家であったから、俺にも労働力としての期待があったのだろう。

 俺が成長するにつれ、俺を見る両親の目が絶望的な物になっていくのをまじまじと感じていた。

 俺はことあるごとに病気となり、ちょっとした仕事でも頻繁に倒れたので、労働力としてはまともに使い物にならないことが分かってきたからであった。

 もちろん、そんなことは自分で望んだことではなかったのだが、貧しい農民にとって理屈などどうでもよかったのである。

 それに、人頭税の負担がこのまま続けば、明らかにお荷物となっている俺を食べさせる余裕はなくなる。

 両親は口減らしをする決心をした。

 俺が五歳の時だ。


「ケルクちゃん。隣村まで、これを届けてきてね」


 その日、母親のラセリがいつになく優しい声で俺に話しかけてきた。

 すでに赤ん坊ではなかったが、少年というにはまだ稚すぎる年齢だ。

 隣町までは三十キロメートル以上も離れており、五歳児の俺にとってはとんでもなく長い道のりであった。

 子供がお使いで簡単にいけるような距離ではない。

 ましてやこの日、俺は熱を出して寝込んでいた。

 優しげに母親は言ったが、言っている内容はまったく優しくない。

 それでも五歳の俺にとって、母親の言うことに逆らうことはできなかった。

 病弱の五歳児が一人で生きていくことなど、普通なら到底できないからだ。

 それに、元の世界で長いこと社畜として生きてきた俺にとって、無理をするこはいたって普通のことであった。


「うん、かぁちゃん。行ってくる」


 俺は特に考えることもなく、反射的にそう答えていた。

 すると、母親は正面にしゃがんで、俺の目線の位置に自分の顔を持ってくる。

 ひどくくたびれた顔で、年齢以上に年老いて見える。


「気をつけて言ってらっしゃい」


 ただそれだけの言葉を、母親は絞り出すようにひどく掠れた声で言った。

 それを見て、俺はこれがどういう『おつかい』であるのかすぐに察したが、気が付いていないフリをした。

 中身はどうあれ、五歳児の俺に何ができるというのだろう。


「うん」


 俺は無表情のまま頷く。


「それじゃ、これお願いね」


 俺はボロ布に包まれた荷物を受取る。

 あまり大きくはないし、重くもないのだが、それは大人にとってである。

 五歳児の俺にとっては、一抱えもあるような荷物であった。

 俺が家を出る時、母親は俺を見送りに出てくるようなことはなかった。

 さすがに、前世も合わせると中身は50過ぎのおっさんなので、その心情を察することはできる。

 要するに、これ以上俺のことを見ることが辛くなったのだろう。

 生家に背を向けると、両手に荷物を抱えて、とことこと歩いていく。

 百メートルほど歩くと、両手がキツくなり一端荷物を降ろして少し休憩する。

 もちろん熱が下がっていたわけではないので、やたらと体がフラフラする。

 あまり長く休むと自分が本当に動けなくなることは分かっていたので、腕の疲れが取れたところでまた荷物を持ち上げて歩きはじめる。

 結局の所、五歳児の俺がこんな感じで30キロメートルもの道のりを、険しい峠を超えて無事に歩き通すことができるかどうか非常に怪しい。

 此処は日本ではない異世界である。

 舗装された道路なんて存在していないし、馬はいても五歳児の俺に乗れるわけがない。

 さらにいえば、警察官などいないし領主が農民の安全なんて考えるはずもない。

 安全保障などと言う概念は存在すらしていないのだから。

 峠には追い剥ぎなど普通にいたし、いない場所にはもっと恐ろしい獣やモンスターがいる。


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