一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話11 - 見知らぬ顔
一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話11 - 見知らぬ顔
「よかった!」
俺の意識が戻った時、眼の前にはとても可愛らしい美少女の顔があった。
「君は……だれ?」
俺は久しぶりに使う日本語に、若干のたどたどしさを残しながら聞いた。
「あたしの名前は、広瀬美子。ミコって呼んでね。でも、意識が戻って本当によかった」
俺の右手をきつく握りしめながら、彼女は話しかけてくる。
「何で泣いてるの?」
彼女……ミコは笑顔のまま号泣していた。
「ううん、なんでもないの。気にしなくていいよ」
ミコは俺のことを安心させようとしているのが、はっきりと伝わってくる。
「君は……君は、知らない人だ」
俺にとっては、起きたその時に知り合った女の子であった。
だが、見たのはこれが初めてではない。
「君っていうの。ずいぶんと、おませな言い方するのね、ボク。それより、ボクのお名前を教えてよ。何処に住んでるの?」
その質問はひどく答えづらい。
当然、今の俺はこの世界の住人ではないからである。
周囲を見回すと、点滴やらバイタルをモニターするための機械が見える。
どうやら俺は病院にいるらしい。
ということはミコが俺を運んでくれたのだろう。だが、俺が何処の誰かはわからないし、両親とも連絡がとれていない。
当然のことである。
俺はその質問を、少しだけはぐらかすことにする。
「日野賢吾……君は、ピンクの人?」
俺は転生前の名前を名乗る。
その上で、たぶん一番核心に迫る話に持っていく。
此処から先、シビアな話題になるだろう。
俺にとっては、その方が都合がよかった。
「賢吾君? もしかして、覚えてる?」
俺は黙って頷く。
頷きながら、俺は足に意識を集中していた。
右足はあの時には遠く程ばないが、まだかなり痛みが残っている。
一方左足の方は、まったく痛みを感じない。
というか、そもそも何も感じない。
やはり、左足はダメだったようだ。
まぁ、ミンチになったのだから仕方ないだろう。
これからは、生き抜くことがより大変になりそうだ。
「お願いがあるの。そのことは、ナイショにしてくれないかな?」
可愛らしい笑顔で微笑みながら、ミコが頼み込んできた。
「金色の人のことも?」
俺はさらに付け加える。
もちろん、この後の話につなげるためであった。
「金色って……有紗ちゃんのこと、覚えてる?」
俺に話す時、明らかに表情が曇り声のトーンが落ちていた。
「もちろん、はっきりと。俺の足を吹き飛ばしてくれた人だから」
俺は事実だけを指摘するだけに留める。
言いたいことは沢山あったし、俺は俺なりの都合もあった。
だがそれでも、足一本で命が助かったのだと考えたら、悪い取引ではない。
しょせん俺は弱者であり、転生した先の異世界に戻れば足があろがなかろうが確実に死ぬことになるだろう。
そうなりたくなければ、力を手に入れるしかない。
確実に生き延びることのできる力を。
それがなんであるのか今はまだ分からない。
モンスターと戦っていた魔法少女。彼女たちに、その答えがあるのではないかと俺は探りをいれてみようとしているのだ。
「ごめん……ごめんね。本当にごめんなさい……」
ミコはいきなり泣き出した。
滝のように沢山の涙と共に絞り出した言葉。
最後の方は掠れて声がまともに出ていなかった。
正直、俺にはまったくどうでも良いことだった。
責任を感じているのか、それとも同情しているか分からないが、どっちにしても俺が生き延びるための役にたつわけではない。
だから、俺は取り合うことなく、質問を重ねていくことにする。
「金色の人……有紗っていう人は、今何をしてるの?」
これは、真っ先に確認しておきかったことだ。
俺の記憶の中では、彼女は俺の左手に握られたカプセルの中に閉じ込められていた。
そのことを、ミコは知っているのかどうかも含めて知っておきたかった。
だが、俺の質問に対して、ミコはすぐには答えられなかった。
俺は何も言わず、ベッドの上からただ有紗の顔を見つめ続けた。
最初は反射的に目を逸したが、俺が黙ったまま、じっと見つめ続けていると、ミコは耐えきれなくなったのかついに口を開く。
「……行方がわからないの……。敵を斃して、その直後から姿が見えなくなってしまった……」
その先に続く言葉を、ミコは飲み込んでしまう。
五歳児である俺に聞かせたくなかったのか、それとも現実と向き合うことに耐えきれなくなったのか……。
どちらにしても、俺にとって必要な情報はそれで十分であった。
有紗は今もカプセルの中に囚われたままになっている。
そして、そのことをミコは知らないようである。
では、次だ。
確認したいこと……いや、しなくてはならないことがある。
「あの時、化物に襲われたんだ。それを金色の女の子……有紗が助けてくれた。あれは、何?」




