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01

あぁ、どうか俺の血液で君の全てが満たされますように―――



いつも願っていた。


首筋に喰い込む君の牙。

チクリと鋭い痛みが走り、身体を廻る液体が流れ出ていく感覚。

力が抜ける様なふわふわする不思議な感覚だった。


その度に快感が走る。

君の細胞に俺が流れ込み、吸収されていく。


学校の屋上の片隅、入り口の反対側の壁に隠れる様に行われるいつもの行為。

コンクリートの壁に背中を押しつけると、その冷たさに背中がぞくりと総毛立つ。


感覚が研ぎ澄まされていく。


首筋にかかる大切な君の柔らかくて色素の薄い少し癖のある髪の毛。

肩を握る細くて白い手。

密着する身体から伝わる心臓の鼓動。

コイツを受け入れるために解いたカッターシャツ。

そこから覗く肌にシンの少し冷たい手が触れる。

互いの体温が混じり合って融和していく不思議な感覚。


その全てに心地よさを感じながら、ぼんやりと青く冴え渡った空を眺めていた。


このまま、2人で溶けてしまえればいいなんて思いながら…



「っ…」


棘が抜ける様な感覚は彼が首筋から離れる合図。


視線を戻すと、目の前にいるのは妖艶な君。

長い睫毛を憂いに伏せて、唇から覗かせる赤い舌が紅の滴を攫っていく。

白い肌に茶色の髪の毛は陽の光を浴びて、キラキラと輝いている。

それは近くにあるのに遠いそんな存在だった。

俺はこんなに綺麗で妖しいものを知らない。

いつも見惚れてしまう…



「レイ、いつもごめんね…ありがとう…」


胸ポケットから取り出した眼鏡を掛け直した君には先程までの妖しさはない。

申し訳なさそうに謝る俺の幼馴染。

いつもの大人しくて地味なシンに戻る。


シンはヴァンパイアだ。

俺はそんなコイツに数日に1回”食事”を提供している。

それは、俺の部屋だったりコイツの部屋だったりと普段は人目につかない場所で行うけれど、

今日はシンの調子が悪そうだったから急遽学校で”食事”をすることにしたんだ。


「ちょっとは元気出たか?」


「うん…」


力なく笑う幼馴染。

このすこし寂しそうで儚い笑顔が俺の心をかき乱す。

いつか、このまま何処かへ消えてしまいそうで怖くなるんだ。


「じゃあ…僕、次生物だから先に行くね」


「あぁ…」


そう、いつも"食事"の後は気まずそうにシンは俺の前から逃げていく。

避けるように。

多分、俺の血液を吸う事に申し訳無さを感じてるんだろうな。

そんな事気にしなくてもいいのに…



後ろ姿を見つめながら、そんな事を思っていた。




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