プロローグ
プロローグ
まるでイソギンチャクのような姿をした宇宙生命体を、戦車がミサイル攻撃にて撃破した。その際、千切れ飛んだ破片が元になり複数体が再生した。千切れ飛んだ破片が付着した人間は体を侵され化け物になった。両手と頭は触手に置き換わり人間の足で動き回る化け物であった。
この化け物に有効な攻撃は火炎放射だった。完全に焼き殺せば再生できないようだ。
よって、戦車によるミサイル攻撃は中止し火炎放射による攻撃に切り替えた。国際警察があちこちに徘徊している元人間だった“化け物”を取り囲み、一斉に火炎放射を浴びせることにより1体ずつ殲滅していった。
俺はたまたま最初の戦車によるミサイル攻撃にて誕生した人間の足を持つ“化け物”と戦うことになった。
その日は仕事が休みであり、たまたま街に出かけていた。宇宙生命体に寄生された人間が至る所で走り回っていた。その光景はこの世のものとは思えないほどの阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
通りで襲われた人間が次々に化け物に変身していく姿は脅威にしか思えなかった。
俺はマグナムを構える。この“化け物”相手に1発2発と打ち込むがノーダメージだ。
しばらくして銃弾が尽き、アーミーナイフに切り替える。単純な攻撃をしてくる触手を切り捨てる。が、切れた破片も生きており近くの道端でウネウネ動いている。
かろうじて1体の化け物相手には何とかなっていたのだが、複数体に取り囲まれ触手攻撃を受け、俺の体にも触手が数本貫通した。
駆け付けた国際警察が“化け物”を焼き殺した時、俺は虫の息だった。俺もこのまま化け物になり殺される運命なのだろうか。薄れる意識の中で俺は思った。
俺はこれまでの人助けにより地元では名誉市民として有名だった。国際警察の一員であり
凶悪犯罪やテロに対しての功績が認められエリートとしても一目置かれていた。
国際警察の中にある特殊機関では、かねてよりある実験が進んでいた。サイボーグ計画だ。職務により大怪我をした者にサイボーグ手術を施し現役復帰させる研究が進められていた。
俺は緊急手術により一命をとりとめた。体の殆どをサイボーグ化したのだ。
俺は意識を失い化け物に変身する前に、急速冷凍され特殊機関に回収されたのだ。
意識を取り戻した俺の中には怒りしかなかった。宇宙生命体への憎しみ。自分の力のふがいなさ。様々な感情がすべて憤怒に集束していった。
それはいつも見る夢だった。
「迷ったら殺せ。躊躇するな。一瞬の情けで命を落とす。肝に銘じろ。」俺に指導してくれた先輩の最後の言葉だ。テロ鎮圧の最中に人質であろう子供を救おうとしたときに、その子供が発砲したのだ。子供は洗脳されているとはいえテロ集団の一員だった。
戦時の最中には迷ったものが死ぬ。殺すことを躊躇した者が真っ先に死ぬ。強い意志を持って精神をコントロールできないものは気が狂う。それが戦争だ。
俺はサイボーグ化された体になじむために過酷なリハビリに取り組んでいた。
ただ、目の前の敵を撃ち殺すことだけを考え引き金を引き続けた。
現在、国際警察はこの宇宙生命体に対抗する手段として人型ロボットを投入していた。
1体ずつ対峙すれば火炎放射にて焼き殺すことは出来るが、複数体を相手にすると潰され破壊された。ゆえに増殖を続ける宇宙生命体に対してはアドバンテージが低かった。
この人型ロボットの性能を拡張できないものか。
研究は加速度的に進み、初めてサイボーグ化された人間とAIロボットの合体が実現した。この第1号が俺である。俺の体の主要なパーツがすでにマシンであるため、同調性が高いのだ。合体することにより俊敏性はそのままに能力が強化された。
ボディは1500度までの高熱に耐える。ナパームミサイルの炎の中でも活動できるのだ。この宇宙生命体は焼き殺せば死ぬ。人類側にアドバンテージが向いてきた。
事の発端は1カ月前、地球はUFOによる未知の攻撃を受けた。5発のミサイルと思われるものが地球に被弾した。NASAがこのUFOを認知してから数時間後の事であり、迎撃システムを稼働させる暇さえなかった。各国への報道は、隕石が地球上に5個落下したことになった。その際、この5個のミサイルが人間に接触したときにミュータントが誕生していた。また、このUFOによるミサイルは月にも1発撃ち込まれていた。月面有人基地に。
俺はそいつと対峙していた。イソギンチャクのような体をした人間のような生命体。ミュータントと呼ばれる存在だ。至る所で火柱が上り続ける夜のニューヨークにおいて、こいつとの戦いの火蓋が切られた。
粘液を撒き散らしながら触手が8本襲い掛かってくる。俺の首、両腕、胴体、両足に絡みつき締めあげてくる。しかし、この合体ロボットのボディには効かない。
「クラーク、火炎放射で焼き殺す。最大出力だ。」
「了解。準備完了。発射。」
俺はありったけの燃料を使って火炎放射を浴びせ続けた。イソギンチャクに似たミュータントは唸り声を上げ続けていたが、最後には干からび燃え尽きた。最初の事件は無事解決した。
俺の名は、グレイ。




