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10月9日 『忘れ物』
なんだか今日は何かを忘れている。そんな時はないだろうか。僕はしょっちゅうある。
火をつけっぱなしにしたか?いや、つけていない。家の鍵は?ちゃんと閉めた。子どもの荷物?着替えも入れた、連絡帳、水筒、お弁当箱、今日必要なもの…全部入れた。体温も測った。体調が万全なことも確認した。出かける寸前にオムツが爆発しそうな生産物を誕生させたお子のパンツもきっちり変えたし、その片付けもした。
ならば自分のことか?財布、ある。車の鍵、ある。社員証、ある。朝飲むコーヒーも忘れがちなアップルウォッチもつけて来た。提出物はなかったはずだし、着替えは会社に置きっぱなしだ。
あ、靴下はなかったか。昨日置きっぱなしにしたものを履くしかないが、まあ大きな問題ではない。
なんだ、思い出したところでこんなものだったか。僕の異様な不安は、ただの思い過ごしだったのか。すっきりした気持ちで、僕は車を降りる。今日はやけにカラダが軽いな。なんだが涼しくも感じる。もう秋だからかな。
コーヒー片手に歩く僕の背に張り付くリュックは、未だリビングの隅で今か今かと僕を待っているのだ。




