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僕の絵本日記  作者: 高冨さご
9月
31/103

9月21日 『森のオラクル』

 いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました。

 ここは『森のオラクル』。

 人間の感情データを収集し、その管理を仰せつかっております。

 あなた様がこちらにいらしたのは初めてですね。

 どうぞ、こちらへおかけください。

 飲み物はいいかがです?コーヒー、紅茶?沸かしたての渋柿茶もありますが。

 おや、結構ですか。それもまたよろしい。


 さて、今回あなた様がこちらにいらした理由をお聞きしてもよろしいでしょうか。

 「ここでは人間の感情を出し入れできると聞きました。捨てて欲しい感情がありまして」ですか。

 確かにあなた様のおっしゃる通り、ここでは人間の感情データを収集し、その保管を仰せつかっております。

 どの感情を捨てにいらしたのですか?


 ほう、悲しみですか。随分とご苦労されてきたようですね。

 もうあれこれ悲しむのは疲れたということですか。

 なるほど、なるほど。

 いいでしょう、その感情、いただきます。


 こちら、契約書になります。こちらにサインと印鑑を。

 おっと、その前に今一度契約内容のご確認を。

 あなた様が『森のオラクル』に感情を預けられた場合、その感情は肉体から欠落し完全に排除されることになります。

 ですが、ここに来ればまた元に戻すことは可能です。いつ、どんなときでも。

 ただし元に戻した場合、もう二度と同じ感情を預けることは出来なくなりますのでご了承願います。


 おや、どうやら数日後にあなた様の愛犬が事故にあわれるようで。

 それはさぞかし悲しい未来になることでしょう。

 よほど可愛がってきた愛犬なのですね。

 生まれて数か月の頃からお世話をしてきたのですか。

 それはそれは。悲しみに明け暮れることになるでしょう。

 けれどご安心を。ここで『森のオラクル』に預けておけば、アナタは一粒たりとも涙を流すこともありません。

 愛犬とのお別れも、さぞかしフレッシュな気持ちで迎えられることでしょう。

 最愛の御主人との最後のお別れ、簡素になってとてもよろしいことかと。


 さて、準備はよろしいですか?

 おや、どうしました?やっぱり辞める?

 ええ、それもまたいいでしょう。

 いらなくなった感情があってよかったのだと、充分に味わうとよろしい。


 またのご利用を、お待ちしております。

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