その男、執着につき。3
あの約束からと言うものの、金城くんはいつも以上に仕事熱心だった。
「すみれ、金城にあなた何か言ったの?」
「…何が?」
隣のデスクで同期の冬木梨花が耳打ちしてくる。
内心どきっとしながらも、しらをきる。
「だって分かりやすくすみれ以外の先輩たちにプランの相談してるじゃん。いつもだと1番に指導係のすみれに聞きにくるのにさ」
確かに最近の金城くんはプランを書いては誰かに聞いて、また書いては別の誰かに聞いてと周りから高評価をもらってた。
それをまた他人から聞くことも多々。
熱心なだけではなく、それなりに先輩方々から設計についても褒められてるのを聞く。
そしてこの隣の梨花も聞かれてる場面に遭遇もした。
いつもの余裕で女性扱いが上手な彼で。
【梨花さん、さすがっすね。女性らしい細かい目線、俺には思いつかないです。流石です】
【あら、金城。私の魅力に気づいた?】
【そうっすね〜、奥様から人気なのが分かります。梨花さんって、長い時間かけてヒアリングしてるじゃないですか?そういう所に時間かけてるから、生活のイメージが湧きやすいんですよね】
【お、おう。照れるじゃないか。】
スラスラと褒めの言葉が出てくる彼に若干照れて目が泳いでる梨花。
梨花が何を言われて1番喜ぶかを彼は無意識に当てていた。
【思ったことを言ったまでですよ?】と自分の顔の良さをいかした笑顔をみせて。
それを思い出して、少し胸がざわついたのを隠す。
「別に巣立ったってことじゃないかな?」
「本当〜?」
梨花に見透かされてるようで怖い。
まともに恋愛をしていない人間は心理的なところを隠すのは上手くない。
何かバレてそうでヒヤヒヤする。
その丁度いいタイミングでお昼の12時を告げる音がした。
ランチに逃げようと思った瞬間
「藤野さん、ランチミーティングしましょ」
金城くんもタイミングよく声をかけてくる。
嫌と断りたいのに、ランチミーティングと言われるから断りづらい。
もしかしてプロジェクトの相談かもしれない…そう思うと了承するしかなかった。
「ここ、行きましょう」
スムーズに店を提示される。それがまた私のツボを分かってか、好きな雰囲気の内装に料理。
慣れてると感じながらも、好みな雰囲気に惹かれるかれずにはいられない。
「…行きたい」
金城くんに聞こえるか聞こえないくらいの声で言う。
その言葉を金城くんは聞き取り
「じゃあ外寒いんで、暖かい格好して行きましょう。マフラーとってくるので少し待っててください」
急いで自分のデスクからマフラーを取ってきていた。
そのやりとりを梨花が見てて「え、いいじゃん。私も行きたーい」と私の何倍も大きい声で言ってるがそれは聞こえていなさそうだった。
「良かったの?」
「何がです?」
エレベータに乗り、下へおりる。
2人の空間になってしまったから沈黙を崩すために振った。
「梨花がランチ一緒に行きたがってたけど…今から誘ってこようか?」
その方が私的には気まずくないし…
梨花がいる方が金城くんも仕事の話題が弾むじゃないかな。…この前褒めちぎってたし。
「…冗談言ってます?」
私よりもいくつか身長が高い彼が私を見下ろす。
少し表情が固い彼はため息をついたあと、ずっと手に持っていたマフラーを私の首に巻いた。
「…寒いので、つけといてください」
「あ、ありがとう」
巻かれたマフラーは金城くんの匂いでいっぱいだった。
それにまたしても不意に心臓がなる。
マフラーをずっと自分につけてなかったのは、私に貸すためだったのかと気づく。
…この人はどこまで人たらしなんだろう。
それを思い知らされ嫌な気持ちになる。
こういう所にどの女性も彼に惹かれるんだろうね。




