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造島師の爺さん

ここはサチの浮遊島を構築した造島師ヨルハネキシがいるところ。


他にも造島師が何人か住んでいて、その造島師に天機人が仕えているらしい。


レオニーナはヨルハネキシ仕えの天機人らしく、サチの浮遊島構築の時も居たので面識があったとか。


「見てたけど仕えているって感じしなかったんだが」


「そうですね、私も最初見たときは驚きましたが、あれが二人の関係性みたいです」


「そ、そうか」


当人らがそれでいいならいいけど、あんなガラの悪い天機人は情報館には居なかったな。


ぼんやりまだかなと上を再び見てたら流星のように二人の人影が降って来た。


「・・・ぉぉぉぁああああ!ぐえっ!」


「お待たせしました」


レオニーナは見事に着地。そして彼女に首根っこを掴まれた人物は地面に直撃してぐったりしている。・・・死んでないよな?


「・・・大丈夫か?」


「ん?おぉ、大丈夫じゃ。いつもの事だから気にするな。よっこいせっと」


俺の声に気付いて顔を上げた人物。


子供のような風体しているんだが喋り方や仕草が老けてる。


「お久しぶりです。ヨルハネキシさん」


「おぉサチナリアのお嬢ちゃん、久しいの。そっちの兄ちゃんは誰かね?」


「こちらはソウ。私が仕えている方です」


サチがそういうとレオニーナは何かに気付いたようで慌てて身なりを整えてこちらにお辞儀してきた。


「はて、お嬢ちゃんの仕事はなんだったかの」


「・・・主神補佐官だよジジイ」


お辞儀のままレオニーナがこっそり教えてるがほんっと口の悪い天機人だな。


「おぉ、そうじゃった。んで、その仕えて、いる・・・」


視線がだんだんこっちに移ってきて目が合った瞬間驚愕の表情にかわる。


「ほああ!こ、これは神様!ご無礼申し訳ありませぬ!」


最近このやり取りしてると自分が前の世界の映像作品のご老公の気分になってくる。あっちの方がご老公っぽいけど。


サチは満足そうに笑いを堪えてツヤツヤしてる。


こいつ今回あえて俺の事を仕えている方って言いやがったからな。


「何卒お許しを!」


気付いたらヨルハネキシが五体当地しはじめたから慌てて止めた。




「ほう、お風呂とな?」


「えぇ、お風呂について詳しくはソウが説明しますが、出来れば今回もお願いできればと」


サチが今回の依頼内容を簡単に説明してる。


「わかった、引き受けよう。ソウ様に説明していただく前に若い衆も集めよう。レオニーナ、召集かけてくれ」


「あいよ」


しばらくすると十人ほど人が集まってきた。


天使が多いが数名は天機人のようだ。


「ではソウ様、説明をお願いします」


「わかった」


風呂の構造をざっと説明。湯に入るって事ぐらいだが。


そしてその後作るにあたっての問題の提起。


「ただあの島は対称につくってあるだろ?だから出来ればそれを崩したくないんだよ」


これを聞いた職人達は安堵のような嬉しいそうな表情をしていた。


そりゃこだわってるの分かるからな。


それ故に結構もめた。


「二つ作ればいいのではないか」


「二つも要らないだろ。一つで十分だ」


「場所はどうする?外か?家の中か?」


「地下に作るというのはどうだろうか」


あれやこれやと意見が飛び交っている。


サチはというと離れたところで天機人の女性達となにやら盛り上がっているようだ。


あの口の悪いレオニーナが顔を赤くして俯いてる。ああいう表情もするんだな。


「ソウ様すみませんの。難航してて飽きてしまわれたじゃろ」


余所見してたのに気付いてヨルハネキシが気を使ってくれた。


「あぁいや、そんなことはない。聞いててなかなか楽しいよ」


「神様の手前、若い衆も気合が入ってしまっての。どれか気になる案はありましたかな?」


「そうだな・・・、池から水を引き込むというのが好きかな」


「ほうほう」


「んで、こんな感じで普段は板で堰き止めておいて、必要な時だけ流せば温度調節もし易いかなって」


ヨルハネキシが持ってた図面の端に下手だが図を描いて説明する。


「なるほど、これなら熱い湯でも冷ませますな。して湯はどうやって用意します?」


乗せるの上手いなこの爺さん。自分でも色々案は持っているのに出さずに相手から引き出そうとしている。


「湯は石を熱して入れればいいんじゃないかな」


これは前に居た世界でも使われている技法だ。


「それなら精霊石を使ってみてはどうでしょうか」


気付けば俺とヨルハネキシの会話に若い衆が食いついていた。


「精霊石?」


「はい、火の精霊石を檻のような容器に入れて稼動状態で水に浸ければお湯に出来ると思います」


「それいいね。稼動非稼動出来るよな、確か」


「出来ますね。排水は穴を開けて外と通じるようにすればいいかと思います」


「うん。そうなると後は場所か」


「それならここならどうかね?」


ヨルハネキシが池の付近の林を示した。


「ここなら対称から漏れまいて。多少木を切るがよいですかな?」


「あぁそれはもちろん。出来れば切った木は風呂作りに活用できないかな」


「それはもちろん。これで大体は決まりましたかな」


みんなが頷く。


「後は我々に任せていただきますが、何か要望などありますかな?」


「んーじゃあ外装なんだけど・・・」


折角なので色々と注文させてもらった。


うーん、これは思ってた以上に楽しみになってきたぞ。




「終わりましたか?」


俺が相談している場から少し離れたのに気付いてサチが声を掛けて来た。


まだ職人衆はあれこれと話し合ってるが専門技術的な話になってきているので俺はお役御免のようだ。


後は彼らに任せるとしよう。


「あぁ、大体な。池の近くの木を少し伐採する事になったがいいよな?」


「えぇ、構いませんよ。池に行きやすくなっていいかもしれませんね」


こういうサチの前向きな考えはいいと思う。


本当にそう思ってるだけかもしれないが。


「そっちはそっちで盛り上がってたようだが」


「えぇ、色々といい話が聞けました。これ以上は女子の秘密ですけど」


「そうか。それは残念だ」


レオニーナの様子から何となく察しは付くのでこれ以上は聞かない。


「じゃあ用も済んだし帰るか」


「そうですね」


ヨルハネキシ達職人衆は話しに熱が入ってるようだし、声かけなくていいかな。


「お帰りですか?」


そう思ってたらレオニーナが気付いてこっちに来た。


「うん。あっちは盛り上がってるみたいだしね。こっそりお暇しようかと」


「すみません。アイツら熱が入ると周りが見えなくなる連中でして」


「ははは、職人らしくていいじゃないか。施工時期が決まったら連絡してくれ」


「はい、そう伝えておきます」


職人らしいという言葉を聞いてレオニーナが少し嬉しそうにしてる。


口は悪いがいい子だなこの子。


「それじゃ行こうか、サチ」


「はい、それではまた」


「またのお越しお待ちしてます」


さて、どんな風呂が出来上がるかな。今から楽しみだ。

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