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初手でやらかしてしまった俺が、一目惚れしたあの子と結婚するまで  作者: アカツキユイ
六年目

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17/17

17 「みーんなイモと同じ」

ブックマーク・評価・ご感想ありがとうございます!

 ダイニングに行くと、王弟殿下はまだ戻っていなかった。

『殿下がいらっしゃるまで待った方が良いのでは……』


 そう、ターニャさんに尋ねると、ターニャさんはふふんと鼻を鳴らした。

『殿下は待たなくて大丈夫ですからねぇ。お城でもそうなのではないですか?ジョセフィーヌお嬢様』

『はい。研究にのめり込んでいたり、毎度何かしらの理由で遅くなるので、皆気にせずに食事や休憩をとっています』


 フランクすぎるだろみんな。


『こちらが前菜でございます』

 デボラさんが俺の前に前菜の皿を置いた時、室内の温度が急に下がった。


『ギリギリのお戻りですねぇ』

 ターニャさんがニヤリと笑い、まだ空いている殿下の席に目を向ける。


 空中に現れた頭の大きさくらいの水の球がパキパキと音を立てて凍り、それが粉々に割れた。


『ごっめーん遅くなった!!』


 いきなり転移してきた王弟殿下に驚いているのは俺だけで、ジョセフィーヌを始めデボラさんたちも全く表情を変えていない。


『殿下の分もご用意しますので、かけてお待ちください』

『はぁい』


 自分で椅子を引いて席に着く。一応王弟のはずなのにこの飾らなさがすごい。


『やー、久しぶりにディアマンタに会ったら話が全然止まんないの!契約精霊のドゥメルも騎士みたいにべったりディアマンタに張り付いて、ありゃ死ぬまであの調子だねぇ』


 殿下も話が止まらないが。


『ディアマンタ様は、確かメルシエ商会の』

『うん、商会長。たまたまユジヌに戻ってるって教えてもらったから会ってきたんだけど、相変わらずだったなぁ。こっちに来る余裕はなさそうだった。君たちによろしくって』


『そうでしたか。いずれ何かお礼をさせていただきます』

 ジョセフィーヌの言葉に、王弟殿下がにっこりと笑った。

『うんうん。それが良い。あの子は昔っから、心がこもった贈り物が大好物だ』


 夕食を終えると、殿下が真っ先に席から立ち上がった。


『大会もお茶会も明日からだよね。僕はずっとは張り付けないから、基本的にはターニャとデボラについてもらう。たまぁに顔を出すよ』


『はい、よろしくお願いします』

『お心遣い、ありがとうございます』


『うん。今日は早く寝るんだよ』



 ***



『…………眠れねえ』


 寝られるわけがないだろう。

 壁一枚隔てたところにジョセフィーヌがいるのだ。


 明日から模擬統治の試合だから、寝た方がいいに決まってる。けど……。


 ベッドでごろごろと寝返りを繰り返していると、扉がノックされた。

『!!はい』

『ああ、起きてたね、僕だよ。入っていいかな?』



 そして、なぜか俺は殿下と自分のハーブティーを淹れている。

『これ、よく眠れるんだ。僕がブレンドしたの』


 そうだった、この人、薬師でもあった。


『グレイリオに紅茶の淹れ方は教わってるでしょう?僕が淹れるより絶対美味しいからね』

『そうでしたか。……いい感じに蒸らし終わったと思います』

『わぁい、いただきます』


『ええと、ジョセフィーヌは』

『ぐっすり寝てた。あれは親譲りだね。本当に肝が据わってる』

『はは、そうでしたか……』


 なんだ、やっぱりドキドキしていたのは、俺だけだ。


『本当に君は、ジョセフィーヌが大好きなんだね』

『……はい』

『自分ばっかり好き、って、思ってるんだ』


 まだ熱いハーブティーを一口。少し甘い。


『だって、そうじゃないですか。俺は隣の部屋であいつが寝てると思うだけで、こんなに落ち着かないのに、熟睡だなんて』


『ふふ。レックスくん。好きの形は、ひとつじゃないよ』


『ひとつ、じゃ、ない』

『うん、そう。君みたいに「好き!」全開の人もいれば、日向ぼっこするみたいにぽかぽかと「好き」を感じる人もいる。形は違うけど、優劣はない』


 くぴっと音を立ててハーブティーを飲むと、殿下が俺を見た。

『一気に燃えてすぐに消えてしまう「好き」と、地味に炭火のように長く燃え続ける「好き」。

 どっちが良いかは人それぞれだよね。

 ジョセフィーヌが君に「好き」を向けたとして、激しくあっという間に燃え尽きる「好き」と、燻りながら長く燃える「好き」、どちらを向けて欲しいかな?』


『……すぐに消えちゃうのは、嫌です』

『うんうん、だよねぇ。

 ジョセフィーヌは感情の波が少ないから、メラメラ燃える好きにはならないと思うんだ。

 でも、火がつけばちゃんと燃える。君が燃え続ければ、ちゃんとあの子に火は着くよ』

『そう、でしょうか』


『だってあの子、君しか見てないもん』


『……へ?』


『他の男子はみーんなイモと同じ。僕にはそう見える。僕ですらちょっと良いイモだ』


『……』

 たとえがイモってどうなんだ。そもそもちょっと良いイモってなんだ。


『君もイモなら、別に何年も婚約しなくても良いじゃない?』

『……でもそれは、俺が泣きついたからで』

『泣きつくほどに一途に求めてくれる人が、人生にどれくらいいるかな』

『……』


『ジョセフィーヌには鮮烈だったみたいだよ。よくその話聞かされるもん』


『へっ!?』

『城のみんな、微笑ましく聞いてる』


 だから俺が初めて登城したとき、みんなちょっと笑ってたの!!?


『恥ずかしい……』

 新事実に頭を抱える。

 ジョセフィーヌに可愛いと伝えることは全く恥ずかしくなくても、恥を感じないかといえばそんなことはないのだ。

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