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J 慟哭(黒)

「これから田淵の葬儀を始める。みんな、最期に田淵の顔を見てやってくれ。」


 そう言って組長は田淵の遺体が入れられた棺桶に歩み寄り、何か声をかけた後、自分の席に戻った。


次に若頭である松林が棺桶に近づく。


「田淵、本当にお疲れ様だな。お前とは長い付き合いだったな。お前は酒に弱いくせによく飲みに誘ってきたよな。そのくせ度数の高い酒頼んで直ぐに泣いて寝ちまって。俺と香夜がいつも運んでたんだ。なぁ、田淵もうお前と飲む事も出来ねぇんだな。…ちょっと待っとけ。もうすぐ俺もそっちへ行くから、そん時はまた奢ってやるよ…グゥッ!」


松林は田淵の前で涙を流した。

次に立松が近づく。


「田淵…香夜は私に任せろ。お前のような立派な極道にしてやるからな。」


 立松は涙を流す前に田淵への別れを告げ、席に戻った。


「田淵の兄貴、アナタは私の憧れでした。女神は私にお任せください。必ず守り抜いて見せます。私たちの結婚式は必ずあの世から見ていてくださいね。」


 いつもの道草とは思えない程に真剣な声色で、愛する香夜を守り抜く決意を誓った。


「クッソ!!田淵の兄貴…すみません…俺がアイツらを殺さなかったから!!本当にすみません!!仇は絶対取りますから!!」


 田淵と戦う前に二人と戦っていた勝谷は、その責任を感じていた。香夜と同期である勝谷は、将来有望な武闘派として田淵が指導していた。香夜と三人で朝まで飲み明かしたり、共に仕事をすることも多かった。勝谷は最も慕っていた兄貴分の仇を取る事を決意して、最期の話を終えた。


 皆が最期の別れを告げる中、香夜の番が回ってきた。


「…おじちゃん、私ね強くなったんだよ。お父さんの、みんなの仇を取ったんだよ。あの悪魔を倒したんだよ…でも、なんでかなぁ……ちっとも嬉しくなんてない…なんでこんなに悲しいの…

 おじちゃんはいつも言ってたよね、戦争のない平和な世界がいいって。本当にその通りだと思った。だから…私が必ず変えてみせるよ!帝国の人達は凶暴で残忍で、これからも戦争を仕掛けて来ると思う。だからもうこんな事が起きないように…戦争をしようとする人たちは私が全員倒すよ!!そうして平和な世界にするからさ……だから……だから、いつまでも見守っていてね。さよなら…大好きだよ、おじちゃん。」


 香夜は涙を流す事なく、今見せられる最高の笑顔で田淵を見送った。


 全ての儀式が終わり、葬儀場からの帰り道で立松が香夜を引き止めた。


「香夜、こっちへ来い。」


「…立松姐さんどうしたの?」


その瞬間、立松は香夜を抱きしめ、胸に埋めた。


「うわぁ…何ふるんでふか…」


「立派だったぞ。きっと田淵もそう言っている。だから…もう我慢しなくていい。」


「・・・うん……う、うわぁぁああ!!おじちゃーん!!うわぁぁぁぁぁああん!!!!」


限界を迎えた香夜の慟哭は葬儀場に響き渡った。

これにて第一章(黒)も完結となります。


 恩人の意思を継ぎ、奇しくも二人の最終的な目的が一致しました。これからどうなっていくのでしょうか。


 さて、最終話という事で第一章の感想をここで少し述べたいと思います。

 先ず能力に関してはハンターハンターの念能力とヒロアカの個性の影響を強く受けております。しかし、所々オリジナル要素を加えているので、温かい目で見ていただけるとありがたいです。

 残念ながらお亡くなりになってしまったリミエルと田淵ですが、20歳やそこらの主人公二人に負けてしまいましたが、リミエルは本調子(疲労無し)なら香夜を瞬殺してましたし、田淵は流石に初見殺しすぎた事と、単純に相性が悪かったですね。物語の都合で死んでしまいましたが、二人とも見事な死に様だったと思います。それと、モルモンがリミエルに刺さった刀を見て少し戸惑うシーンがありますが、そこでは刀に彫られた『山下』という字を見ています。これは第二章での伏線になっていますので、少し説明させていただきました。

 それと、話を分かりやすくするために、キャラの登場を可能な限り削りました。それに、主人公二人の視点しか描いていないのですが、ちゃんと背後では色々と起きてます。非常に分かりにくかったと思いますが、副隊長を殺したのも、シュリスの腕を切ったのも、裏口の部隊を全滅させたのも道草です。彼、実はかなり強くて現段階で登場してるキャラの中で最強だったりします。これからも活躍しますので乞うご期待ください。


 次回から第二章が始まります。興味を持ってくださった方は、今後も是非よろしくお願いいたします。

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