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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第一章 二人と二人
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I 悲痛(黒)

「感謝しますぞ。女神が目覚めたらすぐに教えてください。どこにいても、すぐに駆けつけますから!」


 いつものやかましい道草の声で香夜は目を覚ます。


「……おはようございます、道草の兄貴。ここは病院ですか?」


「なんと!もう目覚めるとは。そうですぞ、ここは敷地内の医療施設です。それより貴女のその背中の傷、安静にしておいてくださいね。何か望みがあれば、将来の夫であるこの私が介抱しますぞ!」


 病院のベッドの上にいる香夜に対して、道草は大袈裟な動きで状況を伝える。


「そうですか。なら飲み物でも用意してくれますか?とびきり冷えたアクエリアスとか。」


 香夜はその好意を利用して兄貴分である道草にパシリを頼む。


「お安い御用です!」


 そう言って嬉しそうに病室から出ていく道草を見送った。


「背中と肩が痛い。死んじゃう…」


 香夜の傷は重傷であり、治療を受けた今でも痛みが残っている。


 そして、病室の扉が開き誰かが入ってきた。


「兄貴、遅いですよっ…て、立松姐さん!わざわざありがとうございます!」


 入ってきたのは、立松だった。普段から香夜と仲の良い立松は、香夜のお見舞いに来たのだ。


「ああ…傷は大丈夫か?」


「全然大丈夫じゃないですよ。痛すぎて死にそうです。」


 香夜はそう言って大袈裟にベッドに倒れる。


「軽口を叩けるようなら大丈夫だな。」



「女神ぃ〜!買ってきましたぞ!おっと、立松の姉御ではありませんか。本部に居なくて良いのですか?今が一番大変でしょう?」


「お前は相変わらずやかましいな。…カシラが入院中だからな、諸々の事はカシラが復帰してから行うそうだ。それより香夜、お前にこれを届けに来たんだ。」


 そう言って立花は腰に下げた刀を取り出した。


「立松姐さんが持ってたんですか。ありがとうございます!」


 香夜にとって父の形見でもあり、相棒でもある刀を受け取りとても嬉しそうにしている。


「そういえば、あの女は!『純白の悪魔』はどうなりましたか?」


「彼女は死んだよ、お前の傷のおかげでな。最期は壮絶な立ち往生だった…本当にとんでもない女だ。お前のおかげで助かったとカシラも褒めていた。本当にお前は自慢の妹分だよ。」


 立松はそう言って香夜の頭を撫でる。それを聞いて香夜は嬉しそうに話す。


「そっか…お父さん、組員のみんな、仇はとったよ。そうだ、おじちゃんにも教えてあげなきゃ。おじちゃんは今どこにいるの?」


 香夜は田淵が来ない事を疑問に思い、無邪気に立松に質問する。


「……」


 だが、立松はその問いには答えない。下を向いたまま黙ってしまった。


「立松姐さん?」


 それを見て香夜は再び質問する。隠す事に限界を感じた立松は、一つ息を吐いてから真実を告げる。


「ふぅ……落ち着いて聞け、香夜。………田淵は殺された。」


「な!何ですと!?」


 立松の言葉を聞いた瞬間、香夜は立松が何を言っているのか分からなかった。いや、分かろうとしなかった。そして立松に詰め寄る。


「えっ…ウソだよね、だっておじちゃんはさっきまで…ねぇ!嘘って言ってよ!!ねぇ!!立松姐さん!!ねぇってば!!!」


「…」


 香夜は立場も忘れて立松の肩を掴んで揺さぶる。それでも立松は下を向いたまま何も答えない。


「だって、おじちゃんの防御は鉄壁だもん。誰にも負けるはずない!」


 香夜は田淵が傷を負った事を見た事がなかった。それほどに硬く、強く、尊敬できる男だったのだ。しかし、頭の良い香夜は立松の表情から何となく察していた。田淵は本当に死んだのだと。しかし、それを否定する為に声を上げ続ける。


「…私だって信じたくはない…だが……」


 立松は既に田淵の遺体を見ている。故に心でも否定する事は出来なかった。


「そんな…田淵の兄貴が……信じられませんぞ!」


 隣で聞いていた道草も驚愕の表情を浮かべた。



 しばらく無言の時間が続き、香夜が絞り出すように、祈るように聞いた。




「…ねぇ、ほんとにおじちゃんは死んじゃったの?」


「…ああ…田淵孝雄は死んだ。既にこの世にはいない。」


「イヤァァーー!!!」


 香夜はそう言って堰を切ったように声を上げて泣いた。その悲鳴は広い敷地内に響き渡るほどに大きく悲痛だった。

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