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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第五章 革命の光
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AU 事件(黒)

「全く、今日は2度も気絶させられたわ。壊れかけのオモチャみたいじゃない。」


 少し経って失神していた香夜は目覚めていた。しかしその時既に、赤川が迎えに来ると言っていた約束の時間が迫っていた為、休む暇もなく料亭を出て赤川を待っていた。


「香夜ちゃん、本当にごめんね。私、またやっちゃった…」


 不機嫌そうな香夜を見て、百合は申し訳なさそうに謝った。


「えぇ、まあ骨は無事だったから何とか大丈夫よ。…それより恥ずかしいから早く降ろして欲しいんだけど…」


 料亭の玄関付近で4人は赤川を待っていたが、何故か待っている間ずっと、香夜は百合にお姫様抱っこ状態で抱えられていた。


「ダメです!私は怪我人である香夜ちゃんを介護する義務があります。」


 百合は香夜を抱き抱えたまま、その提案を拒絶する。その目を見て説得は無駄だと判断した香夜はため息をつく。


「いや、確かに全身痛いから助かるけど…これじゃあ公開処刑だよ…」


 人通りはそこまで多くないが、既に10分以上が経過しており、何人もの人に目撃されている。その様子を見て道草が悔しそうな顔をする。


「ぐぬぬ…女神をこの腕に抱くのは、夫たるこの私の特権…今すぐにでもそこを変わってほしいですぞ…」


 そう言って2人に近づこうとする道草だが、百合は香夜を触らせようとしない。


「ダメですよ。さっき、私が勝ったんですから。香夜ちゃんは私のモノです。ねー、香夜ちゃん。」


 香夜を抱っこする権利をかけて、道草と百合は腕相撲で勝負していた。結果としては百合の圧勝で、道草も渋々諦めたのだ。


「くっ!…まぁ、良いでしょう。私は既に3度も女神をこの腕に抱いております。まだまだ、貴女には負けません。」


「いいえ、私は昨日一日、香夜ちゃんと添い寝しました。抱き枕としても最高で、危うく私の初めてを…」


「ちょっと今、聞き捨てならない事を聞いたんだけど。昨日私からやっておいてなんだけど、ホントにやめてね?百合の力で無理矢理襲われたら私の純潔なんて直ぐに散って…」


「そうですぞ!百合殿!女神はこの私が」


「3人とも、カシラが来たようです。その話はまた後で…」


 白熱しそうになった3人を止めたのは、呆れるようにして見ていた伊東だった。遠目に見える黒い車に気付いた香夜は真剣な表情に戻る。


「もう2度としません。百合、そろそろ本当に降ろして。赤川の若頭(あの人)の前でこんな姿は見せられないわ。」


「……はい…では続きは夜に…」


「しない。…よっと。」


 香夜は百合の腕から降りて、4人が並んだ。

 走って来た車は4人の前に停まり、中から赤川が出てくる。


《お疲れ様です!!》


「おう、待たせたな。立松さんは?」


「はい!今朝目覚めましたが、仕事があると言って直ぐに柏木組へ戻られました。昨夜、気を失ってしまった事と同時に謝罪しておくように言われております!」


 立松の事情を把握していた道草が説明した。


「了解だ、伝言ご苦労。じゃあ早速行こうかね、全員乗りな。」


 そう言って赤川は車の中に入っていく。それを受けて4人も車の中に乗り込んだ。

 車内は非常に綺麗に清掃されており、広々としていた。向かい合うようにして4人が座り、赤川は間に座る。


「さて、昨日はどうだったかな?特に、百合と香夜ちゃん。」


「えぇっと…どうと言われましても…」


「はい!!私たちとっても仲良くなりました!!香夜ちゃんは本当に素敵な女の子です!!ね、香夜ちゃん!!」


 その屈託のない笑みを見て赤川は嬉しそうな表情を見せる。


「百合、お前変わったな。前とは大違いだ。香夜ちゃんと何かあったな?」


「い、いやそれは」


「はい!私の弱さや甘さを正す為に、思いっきりビンタしてくれました!」


 百合は満面の笑みでそう告げた。それを聞いて赤川や他の2人も驚く。


「な、何!?」


 それを見て焦り始めた香夜は冷汗をかきながら言い訳をする。


「い、いや!あの!それは成り行きといいますか…私も酔っていたといいますか…本当にすみません!」


 理由はどうあれ、2度も顔をぶってしまった香夜は2人に対して頭を下げた。


「何言ってるんですか!!香夜ちゃんが謝る事なんて何もありません!!全部、弱虫だった私が悪いんですぅ!!…私、生まれて初めて誰かにビンタされました。頬は全然痛くなかったですけど、心にとっても響きました。そこで改めて思ったんです!私もあの人や香夜ちゃんみたいな極道になりたいって!!だから、これからも一生懸命頑張ります!!」


「…そうか…いい決意だ。本当にいい顔になった。オヤジに早く見せてやりたいな。香夜ちゃん、俺からも礼を言う、ありがとうな。」


「いや、そんな!私は本当に何も…いや、ちょっと強めに叩いただけで…」


「実はな、俺も含めて組の連中は全員、コイツを本気で叱ってやる事が出来なかった。コイツにはそれが最も必要だと分かってたんだがな…本来は俺たちの役目だったはずなのに、すまねぇな香夜ちゃん。オヤジにも俺から言っておく。」


「いえいえ、私は百合を更生させてあげようとかそんなんじゃなくて………ただ…私の初めての女友達として相応しくないと思っただけです。」


「…うぅ…香夜ちゃーん!!」


 その言葉に感動した百合が香夜に抱き着こうとするが、香夜は華麗な身のこなしで避ける。


「はい、抱きつきは禁止。次は本当に折れちゃうから。」


「むぅう…」


「そうだな百合、座れ。では香夜ちゃん、これからもよろしく頼むよ。」


「はい、もちろんです。」



 数時間後、ようやく目的地に到着する。


「着いたぞ、全員降りろ。」


 赤川を筆頭に全員が車を降りると、目の前の門の前に数十人の組員が待ち構えていた。


《お疲れ様です!カシラ!》


 組員たちは一斉に頭を下げる。それを見て赤川は軽く手を振りながら答える。


「出迎えご苦労。下田、オヤジは?」


「へい、今日はずっと組長室にいらっしゃいます。」


「今から向かうと伝えろ。…土岡、()()のヤツは?」


「後藤の兄貴なら、もうすぐ帰ってくるはずですぜ。」


「帰って来たら俺の部屋まで来るように言っておけ。…悠太、姐さんは?」


「今は出られています。夜には帰るとおっしゃっていました。」


「夕食の時間を取れるか確認しろ、メンバーは百合と友人1人だ。…花子、『柏木組』から2人、人員を借り受けた事を組員全体に通達しておけ。当面、客人待遇として迎える。」


「了解しました。」


「他のヤツは業務に戻れ。解散!」


《はい!》


 その合図と共に数十人の組員が一斉に散っていった。香夜と道草はその光景に感心していた。


「すごい連携…ウチでもやりたいですね。」


「そうですな、これならばカシラやオヤジの負担も減らせますし、見栄えも良い。」


「さて、では早速2人にはオヤジに会ってもらおうか。軽く挨拶するだけだがな。」


「了解しました。」


「では、全員ついてきてくれ。」


 赤川はそう言って施設の中に入り、組長室まで向かった。後ろを追従する香夜はその施設の綺麗さに驚いていた。


「はぇえ…なんか凄く綺麗で新しい建物ばかりですね。柏木組(ウチ)とは大違いです。」


「そうですね、柏木組(ウチ)は年季の入った建物ばかりですからね。」


「いえ、これは決して誇れるような事ではありません。5年ほど前までは高木組(ウチ)も古くて伝統ある建物ばかりだった。しかし、5年前の()()()()の際に殆ど建て替えたんだ。」


()()()()?」


「ええ、簡単に言えば【集団記憶喪失事件】。あの日、いつも通りに業務をしていた我々でしたが、昼過ぎに突然敷地内が舞台で覆われました。それはこの広い敷地を全て網羅するほどの大きさで、いきなり現れた規格外の敵に警戒していた我々ですが、次の瞬間、我々の目の前に広がっていたのは、衝撃的な光景だった。

 その日、敷地にいた全ての人間がその場で能力を暴走させ、暴れていた。かく言う俺も、気付いた瞬間には目の前の壁を無意識に破壊していた。」


「何ですか、その奇妙な事件は…」


「強制的に暴れさせられた後、その記憶が無くなっていた、と言う事ですね。」


「そうだ、俺も含めて組の全員が同じ証言をしているから間違いない。幸い犠牲者は出なかったが、全員がメチャクチャに能力を使ったせいで建物はボロボロ、まぁちょうどいい機会だと思って全部を新しく建て替えたって訳だ。」


「それってまさか…『真なる王』のチカラ…なのかな?」


「お嬢、心当たりがあるのか!?」


「うーん…記憶喪失っていうのはちょっと違うかもしれませんけど、王属性の超特殊血統の中に他者を洗脳する力があるそうですよ。」


 香夜は立松に言われた通り、自分の能力については伏せたまま鈴木から聞いた話をした。

 それを聞いた赤川が少し考えた後に思い出したように話し始める。


「ああぁ!皇帝の持つイカれた力の事か!確かにその可能性はあるな、だが皇帝の野郎が態々ここまで来てあんな中途半端な事をするか?目的は一体何なんだ…」


「もしかしたら皇帝以外にもその力を持つ人間がいるのかもしれませんね。」


「そうだな、いずれにせよ報いは受けさせる。2人も何か分かったら教えてくれ。」


「はい。」



 そうこうしている内に5人は組長室の前に到着していた。赤川はネクタイを少し直してから扉に手をかける。


「ふぅ…では入るぞ。…オヤジ、赤川です。客人を連れて来ました。」


「……」


「オヤジ?」


「……」


「入りますよ、オヤジ。失礼します。


 中から返事がない事に違和感を感じながら赤川は扉を開けた。

【集団記憶喪失事件】に関しては、非常に重要な人物が関わっています。本章では全く関係ありませんが、いずれその人物が登場するでしょう。

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