『五年後の鉛筆』第40回 ✲ 72歳と21歳、人生の往復切符をなくした日(笑) ――行きはよいよい。 帰りは怖い。 怖いのは、帰り道ではなかった。――
✦『五年後の鉛筆』第40回
✲ 72歳と21歳、
人生の往復切符をなくした日(笑)
――行きはよいよい。
帰りは怖い。
怖いのは、
帰り道ではなかった。――
………
★目次
■第1章
AIに健康寿命を終了された朝
■第2章
就活AIに全滅した21歳
■第3章
世界一の記憶が値崩れした日
■第4章
パソコンは安くなり、求人は消えた
■第5章
全員同じ文章の面接会場
■第6章
「往復三回」が分からない教室
■第7章
行きはよいよい、帰りは怖い
■第8章
漢和辞典には電源ボタンがない
■第9章
転んだ場所を住所にしない
■第10章
名刺を失っても、大根には呼ばれる
■第11章
あっちの水は甘いぞ
■第12章
ゲームの中の自分の方が柔らかい
■第13章
戻る場所がない人
■第14章
72歳が就職し、21歳が息をした
■第15章
安寧ですか
❥Z世代のあなたへ
★あとがき
ホームズとワトソン、
人生の最短ルートを捜査する(笑)
………
■第1章
AIに健康寿命を終了された朝
二〇三一年。
瀬戸内のある田舎。
夏の朝。
祖父は七十二歳になった。
誕生日の朝。
枕元の健康管理AIが、
明るい声で言った。
《お誕生日、
おめでとうございます!》
「ありがとう」
《日本人男性の
健康寿命を参考にすると、
今後は無理を避け、
穏やかな余生を
お過ごしください》
祖父は、
布団から起き上がった。
「ちょっと待て」
《何でしょう?》
「今、
わしの人生を
勝手に最終章へ
入れんかったか?」
《最終章とは
申し上げていません》
「余生と言うたじゃろうが!」
《統計上の表現です》
「統計に、
わしの明日の予定まで
決められてたまるか!」
健康管理AIは、
少し黙った。
《昨夜、
午後十一時四十八分に、
そうめんを追加で食べています》
「そこは事件と関係ない」
《牛乳も飲んでいます》
「寝る前の一杯じゃ」
《フルーツグラノーラも
追加されています》
祖父は、
布団をかぶった。
「誕生日に
取り調べするな……」
その時。
茶の間から、
孫のゆづきの声がした。
「おじいちゃん」
「なんじゃ」
「私も、
人生終了したかもしれん」
祖父は、
布団から顔を出した。
「お前も健康寿命か」
「私は二十一歳」
「では、
何が終わった」
ゆづきは、
スマホを見せた。
《選考結果のお知らせ》
五社目。
不採用。
祖父は言った。
「お前は
会社の最終選考」
ゆづきは言った。
「おじいちゃんは
人生の最終選考」
二人は、
顔を見合わせた。
「似た者同士じゃな」
「全然うれしくない」
健康管理AIが言った。
《ストレスを検知しました》
祖父が怒鳴った。
「原因はお前じゃ!」
………
■第2章
就活AIに全滅した21歳
ゆづきは、
大学四年生だった。
来年の春。
どこかへ就職する予定だった。
予定だった。
だが。
二〇三一年の就職活動は、
五年前とは
大きく変わっていた。
学生はAIに、
エントリーシートを書かせる。
企業もAIに、
エントリーシートを読ませる。
学生のAIが書く。
会社のAIが読む。
人間は、
その間で合否だけ受け取る。
祖父は聞いた。
「お前が書いた文章は、
会社の人間が
読んどるんか」
「たぶん、
最初は読んでない」
「誰が読んどる」
「AI」
「では、
誰が落とした」
「AI」
祖父は、
腕を組んだ。
「お前は
人間の会社へ入りたいのに、
入口でAIに
追い返されたんか」
「そう」
「門番が
強すぎるじゃろ」
ゆづきの志望動機は、
とても立派だった。
《私は生成AIを活用し、
社会課題の解決と、
持続可能な未来の創造に
貢献したいと考えています》
祖父は読んだ。
「これは誰が書いた」
「就活AI」
「お前は、
こんな言い方するんか」
「しない」
「では、
何がしたい」
ゆづきは考えた。
「分からん」
「何が好きじゃ」
「ゲーム」
「ほかには」
「古い写真を見ること」
「ほかには」
「外国の人と話すこと」
「ほかには」
「寝ること」
「最後のは
履歴書から外せ」
ゆづきは言った。
「でも。
就活では、
“社会課題を解決したい”
って書かんといけん
感じがする」
祖父は、
首をかしげた。
「社会課題を
解決したい人が、
こんなに大勢おるのに」
「うん」
「なんで社会課題は、
増え続けとるんじゃ」
「AIが
書いてるからじゃない?」
「なるほど」
祖父は、
湯呑みを置いた。
「社会課題を解決したいAIが、
社会課題になっとる」
………
■第3章
世界一の記憶が値崩れした日
その日の昼。
韓国から、
大きなニュースが流れた。
《AI向け高性能メモリー価格、
下落幅拡大》
五年前。
韓国は、
世界のAIへ記憶を供給する国として
輝いていた。
AIには、
大量のメモリーが必要だった。
文章。
画像。
動画。
計算。
世界中の企業が、
高性能メモリーを欲しがった。
韓国企業は、
歴史的な利益を上げた。
二〇二五年。
SKハイニックスの売上高は、
約九十七兆ウォン。
営業利益は、
約四十七兆ウォン。
利益率は、
五割に近かった。
「五割って、
ものすごいな」
ゆづきが言った。
「百円売ったら、
五十円近く残る計算じゃ」
祖父が答えた。
「うちの近所の食堂なら、
百円売って、
割り箸代で赤字じゃ」
韓国では、
半導体学科が人気になった。
自治体は、
工場を呼んだ。
銀行は、
金を貸した。
家族は、
子どもに言った。
「半導体へ行け!」
「AIを学べ!」
「大企業へ入れ!」
世界一のメモリー国家。
国家全体が、
東大に合格したような
空気だった。
ミンジュの父親も、
その空気を信じた。
半導体工場の近くに、
新しいマンションを買った。
「これから、
この町は上がる」
銀行も言った。
不動産会社も言った。
テレビも言った。
みんなが、
同じ方向を指さした。
だから父親は、
その方向へ、
家族ごと進んだ。
弟を塾へ入れた。
車を買い替えた。
住宅ローンを組んだ。
五年後。
最初に下がったのは、
メモリーの値段だった。
次に下がったのは、
父親の賞与だった。
その次に、
家族の声が
小さくなった。
企業は増産した。
競争相手が追いついた。
AIは、
少ないメモリーでも
動くようになった。
顧客は、
値下げを求めた。
高性能メモリーは、
必要とされ続けた。
ただし。
以前ほどの
夢の値段では、
売れなくなった。
ゆづきが言った。
「技術が
なくなったわけじゃ
ないんだよね」
「そうじゃ」
「なのに、
なんでこんなに騒ぐの」
祖父は答えた。
「製品の価値が
消えたんじゃない」
「じゃあ、
何が消えたの?」
「永遠に高く売れる、
という物語じゃ」
………
■第4章
パソコンは安くなり、求人は消えた
メモリー価格が下がると、
パソコンは安くなった。
スマホも安くなった。
ゲーム機も、
少し買いやすくなった。
ゆづきは、
広告を見て喜んだ。
「おじいちゃん。
このパソコン、
去年より三万円安い」
「よかったな」
その三分後。
別のニュースが入った。
《国内半導体装置メーカー、
新卒採用計画を縮小》
ゆづきの顔から、
笑顔が消えた。
「私が
受けようとしてた会社」
「そうか」
「パソコンは
安くなったのに」
「求人も
安くなったな」
「笑えん」
韓国企業の設備投資が止まる。
すると。
日本の半導体装置会社。
化学材料会社。
精密部品会社。
物流会社。
工場を建てる会社。
そこへ、
順番に波が来る。
祖父は言った。
「隣の国のメモリーが
安くなれば、
日本人は
安いパソコンを買える」
「うん」
「その代わり、
日本の会社の注文が減る」
「うん」
「わしらは
値下げを喜びながら」
祖父は、
広告を指さした。
「給料の値下げに泣く」
ゆづきが言った。
「世の中、
片方だけ得することって
ないの」
「ある」
「何?」
「スーパーの半額シール」
「それも、
誰かが在庫で困ってる」
「お前、
賢くなったな」
「就活には
落ちてるけどね」
二人は黙った。
三万円安くなった
パソコンの広告が、
画面の中で輝いていた。
その下には、
《AI人材の採用を
効率化します》
と書かれていた。
………
■第5章
全員同じ文章の面接会場
ゆづきは、
オンライン面接を受けた。
画面には、
採用AIの顔が映った。
人間に似ている。
だが。
少しだけ、
笑顔が一定だった。
《あなたの強みを
教えてください》
ゆづきは答えた。
「柔軟性です」
《具体例を
教えてください》
ゆづきは固まった。
柔軟性。
就活AIに
勧められた言葉だった。
自分のどこが
柔軟なのか。
考えたことはなかった。
「ええと……」
《十秒経過しました》
「数えるな!」
《回答を続けてください》
ゆづきは言った。
「私は、
変化に対応できます」
《具体例を
教えてください》
「大学の授業で……」
《よく使われる回答です》
「アルバイトで」
《よく使われる回答です》
「祖父のスマホ設定を……」
《独自性があります》
ゆづきは驚いた。
「そこなん?」
《詳しく教えてください》
「毎回、
同じところを説明します」
《忍耐力があります》
「三日前に教えたことも
忘れます」
《継続力があります》
「勝手に設定を変えます」
《問題解決力があります》
面接のあと。
祖父が聞いた。
「どうじゃった」
「おじいちゃんのおかげで、
AIに褒められた」
「ほう」
「でも最後に落ちた」
「なぜじゃ」
「“祖父への感情に
軽い攻撃性が見られます”
って」
祖父は笑った。
「AIも、
見るところは見とるな」
ゆづきは、
ソファへ倒れた。
「もう嫌だ。
みんな同じAIを使って。
同じ言葉で。
同じように落ちていく」
祖父は言った。
「同じ靴を履いて、
同じ入口へ走ったら、
入口が混むのは
当たり前じゃ」
「じゃあ、
どうすればいいの」
「靴を脱ぐ」
「比喩?」
「わしは今、
足が蒸れとる」
………
■第6章
「往復三回」が分からない教室
その夜。
韓国の若者と、
オンライン交流会があった。
参加していたのは、
韓国の大学生ミンジュ。
日本のゆづき。
そして。
なぜか祖父。
祖父は、
カメラの位置が低すぎて、
画面に鼻だけ映っていた。
ゆづきが直した。
「おじいちゃん。
顔が
鼻社会になってる」
「デジタルは
難しいのう」
ミンジュが笑った。
「韓国では五年前、
子どもの読解力が
話題になりました」
二〇二四年。
韓国の教師、
五千八百四十八人への調査。
生徒の文章理解力が
以前より低下したと
感じる教師は、
九一・八%。
教師からは、
「往復三回と言っても、
往復の意味が伝わらない」
という声も出た。
ゆづきが言った。
「日本も
似てるかも」
祖父が言った。
「わしの孫も、
“ゲームやろう”
の五文字で、
夜八時の約束を
成立させた」
「それ、
約束してないの?」
ミンジュが聞いた。
「してない」
「でも待ってた?」
「待ってた」
「韓国でもあります」
三人は笑った。
ミンジュは言った。
「短い文章だけで話すと、
自分の頭の中には
全文があるのに、
相手にも見えていると
思ってしまいます」
祖父は、
うなずいた。
「意味を文章の外へ
置き忘れるんじゃな」
「そうです」
「しかし“往復”は、
漢字を知れば
分かりやすい」
祖父は、
紙へ書いた。
往。
復。
「往は行く」
「復は戻る」
ミンジュが言った。
「韓国の社会は、
往ばかり
教えてきたのかもしれません」
「どういうこと?」
ゆづきが聞いた。
「良い大学へ行け。
ソウルへ行け。
大企業へ行け。
世界へ行け。
でも。
戻る方法は、
あまり教えない」
祖父は黙った。
日本も、
同じだった。
………
■第7章
行きはよいよい、帰りは怖い
祖父は、
ゆづきの履歴書を見た。
進学。
資格。
インターン。
語学。
AI講座。
全部が、
前へ進んだ記録だった。
「休んだことは
書かんのか」
「書かない」
「迷ったことは」
「書かない」
「失敗したことは」
「面接で聞かれたら、
成功談に変える」
「便利な世の中じゃな」
祖父は、
自分の履歴書を思い出した。
学校。
就職。
昇進。
転勤。
退職。
そこにも、
往しかなかった。
何度泣いたか。
何度逃げたかったか。
何度人に助けられたか。
履歴書には、
書かれていない。
祖父は言った。
「履歴書というものは、
人生から
都合の悪いところを
全部切り取った紙じゃな」
ゆづきが言った。
「それを会社が、
人間そのものだと
思ってる」
「人間も、
自分の履歴書を
自分そのものだと
思い始める」
良い学校へ
入れなかった。
一流企業へ
入れなかった。
新卒で
決まらなかった。
それだけで。
人生の進行方向を
失ったように感じる。
祖父は、
昔の歌を思い出した。
行きはよいよい。
帰りは怖い。
子どものころは、
ただ怖い歌だと
思っていた。
だが。
七十二歳になって、
少し意味が
分かった気がした。
人間は、
行く時には拍手される。
進学。
就職。
上京。
昇進。
起業。
投資。
だが。
戻る時には、
理由を説明しなければならない。
なぜ辞めた。
なぜ帰ってきた。
なぜ続かなかった。
なぜ負けた。
行きはよいよい。
帰りは怖い。
怖いのは、
道ではなかった。
戻ってきた人間を見る、
世間の目だった。
祖父は言った。
「ゆづき」
「何?」
「戻るのは、
往復の半分じゃ」
「当たり前じゃん」
「その当たり前を、
大人は
教えてこんかった」
祖父は、
静かに続けた。
「帰り道を
怖くしたらいけん」
………
■第8章
漢和辞典には電源ボタンがない
祖父は、
押し入れから
古い漢和辞典を出した。
分厚い。
重い。
少しカビ臭い。
ゆづきが言った。
「何これ」
「漢和辞典じゃ」
「アプリあるよ」
「これは
充電が切れん」
「検索が遅い」
「三千年前から
更新し続けとる」
「絶対盛ってる」
祖父は、
辞典の表紙をなでた。
「わしが若いころから
尊敬しとった
松原泰道先生はな」
「誰?」
「百一歳まで生きて、
亡くなる直前まで、
人前で話し、
本を書き続けた
お坊さんじゃ」
「百一歳?」
「そうじゃ。
難しい仏教の話を、
普通の人の悩みや
毎日の暮らしへ
つなげて話してくれた」
祖父は、
辞典を開いた。
「先生の本を読むとな。
分かったつもりの言葉を、
もう一度、
辞書で確かめたくなるんじゃ」
「たとえば?」
「苦しい時には、
“苦”とは何か。
迷った時には、
“迷”とは何か。
幸せになりたい時には、
“幸”とは何か」
「それで答えが出るの?」
「すぐには出ん」
「役に立たないじゃん」
「そこがええんじゃ」
祖父は笑った。
「AIは、
すぐ答えを出す」
「うん」
「漢和辞典は、
わしが何を悩んどるのかを
もう一度考えさせる」
「松原先生って、
答えを教える人じゃ
なかったんだ」
「自分で気づくまで、
問いの横へ
座ってくれる人じゃった…」
ゆづきが聞いた。
「それ、
松原先生が本当に言ったの?」
祖父は固まった。
「たしか、
そんな意味の話じゃった」
「どの本に書いてあったん?」
「それは、
あとで調べる」
「おじいちゃん。
AIより記憶が
あいまいじゃん」
「わしの頭は、
無料版じゃからな」
二人は笑った。
祖父は、
漢和辞典で
「成功」を引いた。
成功。
成。
功。
ゆづきが言った。
「じゃあ。
会社へ入ることが
成功じゃないの?」
祖父は答えた。
「会社へ入ることも、
一つの成功じゃろうな」
「大企業なら、
もっと成功?」
「そうとも限らん」
「なんで?」
「大企業へ入っても。
毎日つらくて。
体を壊して。
朝、
会社へ行くのが
怖くなったらどうじゃ」
ゆづきは黙った。
祖父は続けた。
「年収が高くても。
寝る時間がなくて。
家族や友達と話す時間もなくて。
それを成功と
呼べるかのう」
「じゃあ、
成功って何?」
祖父は、
少し考えた。
「それは、
人によって違うんじゃろうな」
「辞書を引いても、
答えは出ないの?」
「辞書には、
成功という言葉の意味は
書いてある」
祖父は言った。
「でも。
ゆづきにとって、
何が成功なのかまでは、
辞書には書いてない」
「じゃあ、
何のために引くの?」
「自分が今まで、
成功という言葉を
どう思い込んどったかに
気づくためじゃ」
良い会社へ入る。
高い給料をもらう。
人より先へ進む。
ゆづきは、
それだけが成功だと
思っていた。
だが。
好きな仕事を
続けられること。
体を壊さないこと。
困った時に、
戻れる場所があること。
誰かと笑える時間があること。
それも、
成功かもしれなかった。
AIは、
成功の例を百個出した。
漢和辞典は、
「それは誰の成功か」
と一つだけ聞き返した。
………
■第9章
転んだ場所を住所にしない
ゆづきは、
「転職」を引いた。
転。
ころぶ。
回る。
向きが変わる。
ゆづきが笑った。
「転職って、
最初から転ぶ字なんだ」
祖父も笑った。
「人間は転ばんと、
向きが変わらんのかもしれんな」
「おじいちゃん、
何回転んだ?」
「数えきれん」
「じゃあ、
ものすごく
方向転換したんだね」
「ほとんど同じ場所で
転んどった」
祖父は、
若いころの話をした。
仕事で失敗した。
上司に怒られた。
転勤した。
人間関係で悩んだ。
一度決めた道を、
変えられないと思っていた。
「昔のわしはな」
祖父は言った。
「転ぶことより、
転んだと
見られることが
怖かった」
「今は?」
「転んだら、
まずメガネを探す」
「現実的だね」
「七十二歳になると、
世間体より
メガネが大事じゃ」
ゆづきは笑った。
だが。
その言葉は、
少し残った。
転ぶ。
止まる。
戻る。
向きを変える。
今まで全部、
負けの言葉だと
思っていた。
だが本当は。
生き延びるための
動作かもしれない。
祖父は言った。
「サバイバーとは、
一回も転ばん人ではない」
「じゃあ?」
「転んだ場所を、
住所にせん人じゃ」
………
■第10章
名刺を失っても、大根には呼ばれる
祖父は、
元証券マンだった。
だから、
ゆづきへ言った。
「人生も分散投資じゃ」
「また株の話?」
「一社に全部預けるな」
祖父には、
二人の知り合いがいた。
一人は。
四十年間、
大きな会社で働いた。
肩書きがあった。
部下がいた。
名刺を出せば、
相手の声が少し丁寧になった。
だが退職した日。
電話が鳴らなくなった。
名刺を失った日に、
自分の名前まで
失ったような顔をしていた。
もう一人は。
会社では、
それほど偉くなかった。
だが。
小さな畑があった。
町内会があった。
趣味のバンドがあった。
週に一度、
子どもへ将棋を教えていた。
退職しても。
朝になれば、
畑の大根が待っていた。
祖父は言った。
「一人は、
名刺を失った日に、
自分の名前まで失った」
「うん」
「もう一人は、
名刺を失っても、
大根には呼ばれとった」
「大根は呼ばないでしょ」
「気持ちの話じゃ」
祖父は続けた。
「仕事を一つ。
収入を一つ。
居場所を一つ。
人間関係を一つ。
成功の形を一つ」
「うん」
「それだけにすると、
一つ壊れた時、
全部が壊れる」
韓国は、
半導体で世界一になった。
それは、
大きな強みだった。
だが国全体が。
半導体。
AI。
財閥。
ソウル。
高学歴。
同じ方向へ寄りすぎれば、
反転した時の揺れも
大きくなる。
個人も、
同じだった。
祖父は指を折った。
「仕事」
「うん」
「居場所」
「うん」
「楽しみ」
「うん」
「人に頼る先」
「うん」
「冷凍庫のアイス」
「それは
隠してるだけでしょ」
祖父は言った。
「未来を当てるより、
外れた時の道を持て」
………
■第11章
あっちの水は甘いぞ
ゆづきは聞いた。
「仕事が減ったら、
どうやって生きるの?」
祖父は答えた。
「生活を軽くする」
「節約?」
「それだけではない」
祖父は、
昔の童謡のように言った。
「あっちの水は辛いぞ」
「何それ」
「こっちの水は甘いぞ」
「急に怖い」
大企業の水は、
甘そうに見える。
東京の水も、
甘そうに見える。
AIの仕事も。
高い年収も。
タワーマンションも。
だが。
甘い水ほど、
たくさん飲み続けなければ
生きられないことがある。
高い家賃。
長い通勤。
見栄。
競争。
途中でやめられない借金。
祖父は言った。
「甘い水を飲むために、
人生全部を
辛くすることもある」
ゆづきは黙った。
祖父は続けた。
「何でも削れ、
という話ではない」
食事。
睡眠。
楽しみ。
人とのつながり。
病院へ行く金。
学び直す時間。
そこは残す。
一方で。
見栄。
惰性。
昔決めた目標。
他人の期待。
そこは軽くする。
ゆづきが言った。
「固定観念も、
荷物なんだね」
「重たいぞ」
「おじいちゃん、
何を捨てる?」
祖父は考えた。
「老人は、
もう新しいことを
覚えんでええ、
という考え」
「いいね」
「お前は?」
「新卒で一流企業へ
入れなかったら、
人生が終わるという考え」
「それも捨てろ」
「あと。
おじいちゃんは
機械に弱い、
という考え」
「それは事実じゃ」
………
■第12章
ゲームの中の自分の方が柔らかい
不況になると、
人は楽しみから削る。
ゲーム。
漫画。
音楽。
旅行。
カラオケ。
推し。
「そんなことを
している場合か」
と言われる。
ゆづきも、
就活に落ち続けてから、
ゲームをやめていた。
遊んでいる場合ではない。
そう思ったからだ。
だが。
ゲームをやめても、
内定は増えなかった。
笑う時間だけが減った。
祖父が言った。
「ゲームしろよ!」
「急にどうしたの」
「顔が死んどる!」
「就活中だよ……」
「就活中でも、
顔は生かしとけ!」
二人は久しぶりに、
一緒にゲームをした。
ゆづきは、
地図を読む。
祖父は、
迷う。
ゆづきが、
素材を集める。
祖父は、
同じ場所で敵にぶつかる。
「おじいちゃん。
そっち、
行き止まり」
「人生と同じじゃ」
「ゲームで哲学するな」
ゲームの中で、
道が塞がれば。
ゆづきは、
別の道を探した。
仲間が倒れれば。
役割を変えた。
装備が足りなければ。
いったん町へ戻った。
失敗すれば。
やり直した。
なのに現実では。
一社に落ちただけで、
世界が終わったと
思っていた。
ゆづきは気づいた。
ゲームの中の自分の方が、
現実の自分より、
ずっと柔らかかった。
祖父は言った。
「お前。
会社の面接より、
こっちの方が賢そうじゃな」
「ゲームでは、
正解が一つじゃないから」
「それを
仕事へ持っていけ」
「どうやって」
「知らん」
「また答えない」
「答えがないから、
一緒に考えるんじゃ」
………
■第13章
戻る場所がない人
祖父とゆづきは、
町の公民館で
小さな講座を始めた。
名前は、
《人生の避難訓練》
だった。
会場へ来たのは。
就職活動に疲れた大学生。
会社を辞めたい若者。
一人暮らしが不安な老人。
そして。
冷房目当ての人が二人。
高校生が、
入口の紙を見て言った。
「人生の避難訓練って、
何から逃げるんですか?」
祖父は答えた。
「仕事がなくなった時」
「はい」
「家賃が払えなくなった時」
「はい」
「心がしんどくなった時」
「はい」
「スマホのパスワードを
忘れた時」
「最後だけ小さい!」
会場が笑った。
祖父は、
黒板へ大きく書いた。
《今の道がダメになった時、
次にどうするか》
「普通の防災訓練ではな」
祖父は言った。
「火事になったら、
どこへ逃げるかを考える」
「うん」
「地震が起きたら、
誰へ連絡するかを決める」
「うん」
「では。
会社を辞めた時。
病気で働けなくなった時。
就職に全部落ちた時。
どこへ行くか、
決めとるか?」
会場が静かになった。
ゆづきは、
紙を配った。
質問は、
三つだけだった。
《仕事がなくなったら、
最初に誰へ連絡する?》
《今の家に住めなくなったら、
どこへ戻る?》
《心が止まりそうになったら、
何だけは残す?》
最初は、
鉛筆の音が聞こえた。
だが。
会場の隅に座っていた若者は、
何も書かなかった。
祖父が聞いた。
「書けんか」
若者は、
小さな声で言った。
「戻る場所なんて、
ありません」
会場から、
笑いが消えた。
「実家には
戻れません」
「友達もいません」
「会社を辞めたら、
家賃も払えません」
「相談できる人も、
いません」
祖父は、
すぐには答えられなかった。
これまで祖父は、
戻ればいい。
休めばいい。
誰かに相談すればいい。
そう言ってきた。
だが。
戻る場所が、
最初からない人もいる。
頼れる家族がいない人もいる。
電話をかける相手が
一人もいない人もいる。
祖父は、
黒板を見た。
往。
復。
戻る。
だが。
戻る場所は、
どこにある。
しばらくして。
祖父は言った。
「では」
若者が顔を上げた。
「ここを、
最初の戻る場所に
してみるか」
「ここ?」
「この公民館じゃ」
「でも、
講座が終わったら?」
祖父は黙った。
ゆづきが言った。
「終わらせなければいい」
「毎日?」
「毎日は無理」
「じゃあ?」
「週に一回。
誰かがここにいる日を
作ろう」
老人が言った。
「わしは火曜日なら来られる」
大学生が言った。
「私は木曜なら」
冷房目当ての人が言った。
「夏だけなら毎日でも」
「それは
冷房が目当てじゃろ」
会場に、
少しだけ笑いが戻った。
祖父は、
若者へ言った。
「戻る場所はな。
最初からあるものとは
限らん」
「……はい」
「誰かと一緒に、
新しく作る場所もある」
若者は、
紙へ一つだけ書いた。
《何かあったら、
火曜日に公民館へ来る》
それは、
住所ではなかった。
仕事でもなかった。
家族でもなかった。
だが。
最初の帰り道にはなった。
祖父は、
講座の最後に言った。
「人生の避難訓練はな」
「はい」
「失敗せんための
訓練ではない」
高校生が聞いた。
「じゃあ、
何のため?」
祖父は答えた。
「失敗しても。
そこで人生全部を
終わらせんための訓練じゃ」
………
■第14章
72歳が就職し、21歳が息をした
祖父は、
町の小さな仕事を始めた。
週に二日。
高齢者のスマホ相談。
外国人向け防災案内の確認。
AIが作った文章の読み直し。
古い町の資料を、
若者と一緒に
現代語へ直す。
時給は高くない。
肩書きも立派ではない。
だが。
役割がある。
初出勤の日。
ゆづきが言った。
「七十二歳で就職?」
「健康寿命の
最後の年じゃからな」
「普通は
引退するんじゃないの」
「AIに余生と言われたから、
腹が立って
働くことにした」
「反抗期が
六十年遅い」
一方。
ゆづきは、
就活を一週間休んだ。
以前なら。
休むことが怖かった。
誰かに追い抜かれる。
採用枠が減る。
人生が遅れる。
そう思っていた。
だが祖父が言った。
「一週間休んで
壊れる人生なら、
もともと設計が弱い」
ゆづきは、
町の博物館へ行った。
古い写真を見た。
災害で消えた道。
移転した駅。
昔の商店。
町へ来た外国人。
祖父の仕事を手伝った。
AIで古い資料を読み。
分からない言葉は、
辞書を引いた。
外国人向けの
防災ゲームも作った。
水害の時。
どこへ逃げるか。
何を持つか。
日本語が読めなくても、
どう伝えるか。
その経験を見た
町の会社が言った。
「週二日なら、
AI事務をお願いできます」
博物館は言った。
「月四万円なら、
資料整理を頼めます」
学校は言った。
「防災ゲーム講座を、
一回だけお願いしたい」
大企業ではなかった。
年収も、
理想より低かった。
防災講座は、
単発だった。
博物館の仕事も、
いつまで続くか分からなかった。
それでも。
一つの会社に
人生全部を預けなくてよかった。
祖父が聞いた。
「どうじゃ」
ゆづきは答えた。
「成功した感じはしない」
「そうか」
「でも」
ゆづきは、
少し笑った。
「昨日よりは、
息ができる」
祖父はうなずいた。
「それでええ」
「勝ち組ではないけどね」
「負け組か」
「それも違う」
「では何組じゃ」
ゆづきは考えた。
「生き残り組」
祖父は笑った。
「ええ組じゃ」
………
■第15章
安寧ですか
数か月後。
韓国のミンジュから、
連絡が来た。
半導体企業へ勤める父親の
賞与が減った。
弟は、
塾を一つやめることになった。
弟は怒った。
「僕だけ落ちる」
「みんな続けるのに」
母親は、
何も言えなかった。
父親も、
何も言えなかった。
その夜。
家族は久しぶりに、
四人で夕食を食べた。
父親は言った。
「今まで。
お前を勝たせることばかり
考えていた」
弟は黙っていた。
父親は続けた。
「でも。
お前が眠れているか。
朝が怖くないか。
聞いたことがなかった」
弟は、
しばらく黙っていた。
そして言った。
「僕。
最近ずっと、
朝が怖かった」
家族は、
塾を一つ失った。
だがその夜。
初めて四人で、
何を残すかを
話し合った。
ミンジュは言った。
「韓国では、
アンニョンと挨拶します」
「うん」
「漢字では、
安寧に由来します」
安。
寧。
安らかか。
無事か。
穏やかか。
ミンジュは笑った。
「毎日。
安寧ですかと
言っていたのに」
「うん」
「本当に安寧かと、
家族で聞いたことが
ありませんでした」
ゆづきも言った。
「日本では、
毎日
“お疲れさま”って言う」
「疲れていない人にも?」
「言う」
祖父が入ってきた。
「東アジアは、
挨拶だけは
正直じゃな」
三人は笑った。
祖父は七十二歳。
ゆづきは二十一歳。
五年前。
祖父は。
七十二歳になれば、
人生は余生に入ると
思っていた。
ゆづきは。
大学を出て、
大きな会社へ入れば、
人生は安定すると
思っていた。
どちらも外れた。
だが。
予定が外れたからといって、
人生まで
外れではなかった。
AIは、
最短ルートを教える。
しかし。
道が壊れた時。
AIがまだ学んでいない道を
選ばなければならないことがある。
そんな時。
必要なのは。
未来を当てる力だけではない。
戻る力。
向きを変える力。
休む力。
確認する力。
笑う力。
楽しみを残す力。
そして。
戻る場所がない人のために、
新しい戻る場所を
一緒に作る力。
ゆづきが聞いた。
「おじいちゃん」
「なんじゃ」
「五年後のサバイバーって、
どんな人?」
祖父は、
少し考えた。
「一番強い人ではない」
「うん」
「一番賢いAIを
持つ人でもない」
「うん」
「昔決めた正解が
壊れた時」
祖父は、
古い漢和辞典を閉じた。
「笑いながら、
別の道へ
転べる人じゃ」
その時。
健康管理AIが言った。
《本日の歩数は
不足しています》
祖父は立ち上がった。
「散歩へ行くか」
ゆづきが言った。
「往復?」
「もちろんじゃ」
「何キロ?」
「行けるところまで」
「帰りは?」
祖父は笑った。
「疲れたら、
バスじゃ」
行きはよいよい。
帰りは怖い。
けれど。
帰り道が怖いからといって、
行った場所で
倒れる必要はない。
歩けなければ、
バスに乗ればいい。
バスがなければ、
誰かに電話すればいい。
電話する相手がいなければ。
その相手を、
元気なうちに
一人作っておけばいい。
二人は、
家を出た。
世界ではまだ。
AIが文章を書いていた。
半導体の値段が動いていた。
会社が生まれ。
会社が消えていた。
若者が迷い。
老人が、
新しい仕事を始めていた。
夕方。
ミンジュから、
短いメッセージが届いた。
《アンニョン》
ゆづきは、
少し長く返した。
《うん。
今日はまあまあ安寧。
そっちは?》
………
❥Z世代のあなたへ
五年後。
今ある仕事が、
なくなるかもしれない。
今人気の技術が、
普通の商品に
なるかもしれない。
AIを学んだのに。
AIが仕事を
減らすかもしれない。
一生懸命入った会社が。
君より先に
進路変更するかもしれない。
でも。
その時。
今までの努力が、
全部無駄になるわけではない。
技術は残る。
経験は残る。
失敗は残る。
誰かと笑った時間も残る。
ゲームで覚えたことも。
アルバイトで困ったことも。
学校を休んだ時に
考えたことも。
全部。
次の道の材料になる。
一つの会社へ。
自分の価値を
全部預けないでほしい。
一つの試験へ。
人生を全部
預けないでほしい。
一つの正解へ。
未来を全部
預けないでほしい。
行っていい。
戻っていい。
転んでいい。
休んでいい。
ただし。
戻る場所を、
一つでも
残しておいてほしい。
話せる人。
安く暮らせる場所。
小さな仕事。
好きなこと。
もう一度学べる場所。
それが。
君の人生の
非常口になる。
そして。
もし。
戻る場所が
どこにもないなら。
新しく作ってもいい。
誰かと一緒に。
週に一度でも。
一時間でも。
「ここへ来ていい」
と言ってくれる場所を。
AIは。
一番速い道を教える。
でも人間には。
遠回りしなければ
見つからないものがある。
五年後のサバイバーは。
未来を一発で
当てる人ではない。
予想が外れた時。
自分の人生まで
外れにしない人だ。
そして時々。
自分へ聞いてほしい。
勝っていますか。
ではなく。
安寧ですか。
………
★あとがき
ホームズとワトソン、
人生の最短ルートを捜査する(笑)
ホームズ
「ワトソン君。
今回の事件の犯人が分かった」
ワトソン
「AIですか」
ホームズ
「違う」
ワトソン
「半導体ですか」
ホームズ
「違う」
ワトソン
「就活サイトですか」
ホームズ
「かなり怪しいが違う」
ワトソン
「では誰です?」
ホームズ
「“一つの正解で、
一生安心できる”
という思い込みじゃ」
ワトソン
「名前が長い犯人ですね」
ホームズ
「昔はな。
良い学校へ入り。
良い会社へ入り。
定年まで働けば。
だいたい人生の道が見えた」
ワトソン
「今は?」
ホームズ
「道案内の途中で、
会社の方が消える」
ワトソン
「怖い!」
ホームズ
「AIに最短ルートを聞いたら」
ワトソン
「はい」
ホームズ
「目的地が閉店しとった」
ワトソン
「最短で失業!」
ホームズ
「だから、
人生には往復切符がいる」
ワトソン
「戻るためですか」
ホームズ
「そうじゃ」
ワトソン
「でも先生。
戻ったら負けでしょう?」
ホームズ
「違う」
ワトソン
「何が違うんです?」
ホームズ
「戻らずに崖へ進む方が、
負けじゃ」
ワトソン
「なるほど」
ホームズ
「転職も同じじゃ」
ワトソン
「転ぶ仕事?」
ホームズ
「転んで、
向きを変える仕事じゃ」
ワトソン
「先生は何回転びました?」
ホームズ
「数えきれん」
ワトソン
「では、
方向感覚がすごいですね」
ホームズ
「ほとんど同じ場所で転んだ」
ワトソン
「成長してない!」
ホームズ
「だが生きとる」
ワトソン
「そこは強い」
ホームズ
「五年後のサバイバーはな」
ワトソン
「はい」
ホームズ
「一番速い人ではない」
ワトソン
「一番賢い人?」
ホームズ
「違う」
ワトソン
「一番金持ち?」
ホームズ
「違う」
ワトソン
「では?」
ホームズ
「予想が外れた時。
自分まで外れにせん人じゃ」
ワトソン
「先生。
今日の予定は?」
ホームズ
「散歩じゃ」
ワトソン
「何キロ?」
ホームズ
「行けるところまで」
ワトソン
「帰りは?」
ホームズ
「バスじゃ」
ワトソン
「往復切符じゃない!」
ホームズ
「サバイバーは、
途中で交通手段も
変えるんじゃ」
ワトソン
「柔らかすぎる(笑)」
――人生は。
最短ルートでなくてもいい。
行き止まりなら。
戻ればいい。
転んだら。
向きを変えればいい。
疲れたら。
バスに乗ればいい。
五年後。
最後まで残るのは。
一度も失敗しなかった人ではない。
失敗しても。
自分の人生を
値下げしなかった人だ。
そして。
戻る場所がない人のために。
新しい帰り道を。
一緒に作れた人だ。――




