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飛妖戦

 ここでは、剣を使う者は居ない。ハッキリ言って、使い勝手が悪い。弓矢の方が射程が長い。棍棒相手に、槍や斧より特に有利な訳では無い。それに、金属の必要量が多く不経済だ。

 権威の象徴として金属製の剣を持っている村はあるが、単に、神棚に飾ってあるだけだ。


 剣の丁々発止のやり取りは、娯楽として見る分には楽しいだろう。だが、実戦は死に直結する。もっと有利な方法の方が良い。同様に、寡兵で勝つのは物語としては面白いが、ワシは断固として圧倒的戦力で踏み潰す事を選ぶ。遠距離から徹底的に叩いた上で、圧倒的な兵力差で瞬殺する。それが、ワシの目指す戦い方だ。


 全ての社会で、人命は最も尊い。そして、この世界の問題の大半は、人口が少なすぎる事が原因だ。戦死者を少なくすることが何より正しい方策だと信じている。


 勿論、問題が無い訳では無い。物資が大量に要るし、男手を取られて、女子供にも相当の負担を掛けている。実は、昨日の宴会もヒヤヒヤだった。酒の調達だって大変なんだ。


 この社会でも、麹が存在する。考古学者の魂が、『弥生早期の麹! 大・発・見』と思ってしまうが、前世とは地形が違う。さらに、昔あったクニは、海外と盛んに交流していたようだし、何の参考にもならない。


 ここでも、酒が好きな者は多い。そのため、酒造りは案外盛んだ。だが、大量に必要になったら、酒は集めるのが大変だ。何と言っても、木桶も樽も無い。馬車どころか大八車も無い。大量の液体を村から村へ(こぼ)さずに運ぶ手段が無い。

 何が言いたいかというと、『酒は村単位で造っているので、村にある分を飲み干したら終わり』という事だ。


 戦意を維持するのに戦勝祝いは重要だ。その為に、村々には多めに造って貰っているが、飲み尽くすだろう。作戦後暫くは、ムギツク村民は酒断(さけだち)だ。


 余談だった。連合の作戦は、無理して物資を集め、無理して戦士を──今回はハモ村隊除き250名──集めて実行される。


 その貴重な部隊が、攻撃予定地点に着いた。


「ライゾウ殿、打ち合わせた通り飛妖が上空に来たら、ワシは其方に専念します。その間、最もヤバイ弓持ちへの火炎攻撃をお願いします。

 また、ライゾウ殿を狙って、此処に敵の攻撃が集中する可能性があります。中央の打撃部隊が突撃してくる敵を抑える予定ですが、くれぐれも気を付けてください」


「任せておけ。我らの強さを魅せつけよう。我らに手柄を奪われて、悔し涙を流さんように、其方の戦士にも良くハッパを掛けておくんだな」


 そして、標的から約800歩の位置から、手順通りに攻撃を開始した。ワシの超遠距離攻撃を見て、ライゾウさんは、暫く疑問を顔に浮かべていた。だが、敵が矢の距離に来る頃には闘う顔になって適確な対応をしていた。


 飛妖の動きは……やはり猿妖と同じか。奴らなりに最も有利なタイミング──接敵と同時──に襲い掛かるつもりだな。そうはさせぬ。ワシは、飛妖が敵陣から浮かび揚がった瞬間に突撃を掛けた。


 ワシの飛行の最高速度は時速70㎞程度はある。そして、最近、風の壁という魔術を取得している。これは、強風が渦巻くフィールドを展開する魔術だ。媒質が空気の為、重い物への効果は低いが、矢避けには十分だ。ついでに、飛行時の風防にもなり、これを使うと飛行中の寒さはかなり和らぐ。


 高速飛行で吶喊してくる敵など経験した事が無かったのだろう。飛妖は、ワシを見て硬直してしまった。すれ違いざまに、胴体に斧を叩き込む。

 下から矢の集中攻撃を受けるのが怖い。そのまま後ろを見ずに、高度を確保してから、地上を確認した。飛妖は、墜落して死んでいる。成功だ。

 そして、ライゾウさんだろう。敵陣後方に火の手が上がった。ワシも、一度風の壁を切って、弓持小鬼への火炎攻撃に参加だ。


 風の壁を切ったのは、魔術の三重発動が辛いからだ。飛行と風の壁と火炎操作だと三重発動になる。すると、あっという間にへばって気絶してしまう。敵陣上空で気絶したら、終わりだ。着地は無意識でも出来るが、着地した地上で、袋叩きにされる。この問題は、魔力操作のレベルを上げれば解消しそうだが、先の話だ。


 イカンイカン、余所事を考えるような余裕は無い。戦闘中のこの時間は、一秒が惜しい。弓持に(とど)めを刺すための部隊も走り出したようだ。ワシは、瀕死者の救命に移らねばならない。


                 ◇


 瀕死者の対応と消火は、無事終わった。今回は戦死者無しだ。無論、負傷者は多い。ライゾウさんが連れて来たハモ村隊にも、2名重傷者が居る。ハモ村隊が奮闘してくれた結果だ。幾ら感謝しても足りない。


「ライゾウ殿、非常に助かりました。ハモ村隊が奮闘して下さったお陰で、戦死者を出さずに済みました。繰り返しになりますが、本当にありがとうございます。

 そして、恐縮ですが、負傷者を護衛して、ムギツク村に向かってはくれないでしょうか。ワシ等は、これから残敵掃討と繁殖地の焼き払いをする必要があります。これだけの人数の負傷者、護衛にまとまった戦力がどうしても必要になってしまうのです」


「お、おお。我らは構わんが……いやいや、北部大連合殿の闘いは見事だった。兎も角、戦勝をお祝い申し上げます。これからも、手を携えて共に闘っていければと思う。今回は、本当に勉強になった」


 何故か、ライゾウさんは困惑気味に表情をクルクル変えながら返答し、ムギツク村に戻っていった。


 全ての処理を終え、ワシ等も夕方にはムギツク村に戻った。当然、その夜も戦勝祝いの宴会だ。その中で、ライゾウさんが、北部大連合との友好増進のため、熊村とトンビ村への修行者派遣と、連合の若長隊への戦士の派遣を提案してくれた。

 共に闘う事は、友好を増進させるのに高い効果がある。ライゾウさんが来てくれて本当に良かった。


次は、ライゾウの苦悩です。


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