番外編 新聞配達人のカザーナ2
朝、すこし寝坊してしまった俺はいつもより遅く仕事にゆく。
「あぁ、カザーナ!」
背後から焦ったようなルイスの声がした。
「良かった、まだ出てなかったのね…!」
「一体どうしたんだ。とりあえず落ち着けよ」
「アーシャネット見てない?今日家に行ったらいないのよ!」
アーシャネットがいない、だって?
そこで、昨日みた彼を思いだす。
「あいつねら昨日の夜何故か荷物を持ってあっちに去っていたけど…………出ていったのか?」
そういえば、あいつが行った方向は町からの出口だ。普段この町な住んでいるのならあまり利用されない。するとしたら旅をしている人か、商人だ。
「なんで止めてくれなかったの!」
「いや、本当に気付かなかったんだって」
あの時は本当に。まさかあいつがこの町から出ていくとは考えもしなかった。それにもし出ていくとしたらルイスに黙って行くとは考えれない。
「手紙とか、何かなかったか?」
「……あ、これかしら」
ポケットから出てきたのは紙を二つ折りにしたものだった。2人は手紙を読む。
ーーールイスへ
いきなりですまない。急遽、戻らなくてはならないことになったので戻ります。ルイスには感謝してもしにきれないぐらいお世話になったな。なのに、何も言わず出ていって本当にすまない。ありがとう アーシャネットーーー
読み終えると紙に1つの水滴が落ちた。……ルイスだ。
「バカ、バカバカバカ!アーシャネットの大バカ者め!」
「……ルイス…」
クシャリと音を立てた手紙はルイスの手の中にあった。
「出ていくなら、せめて、私に会ってから……」
「あいつ、変なプライドとかありそうだろ?だから、何も言わず、格好良くさりたかったんじゃないか?」
「そんな、男の変なプライドなんて知らないわ。」
ふぅと息をついたルイスは手の中でくしゃくしゃになった手紙を伸ばし、元通りに折った。
「…ごめんね、カザーナ。仕事に出る途中だったのに引き止めちゃって。」
「まぁ、それはいいんだけど、」
どうせ仕事が伸びるだけであって、今日は量が少ない。昨日は寝坊するまで寝たことだし、十分活動できるだろう。
「じゃあ、ね。お仕事頑張って」
ルイスが来た道を戻ろうと体を反対に向けた。その後ろ姿を見て、俺は何か言わないといけないことがあるような気になるが、何もわからずただただルイスの後ろ姿を見つめる。彼女似合う度ムズムズとする胸は、今最高潮に達している。そのムズムズは気づけばルイスに手を伸ばしてそうで、あのきしゃな体に抱きついてしまいそうになる。
それが、恋というものだと知るのは2人の姿を見た時だった。
恋人になっていたルイスとアーシャネットは互いに寄り添うように下町を歩いていた。また、さらに雰囲気が落ち着いたアーシャネットは久しぶりの下町に懐かしさを感じて、ルイスはアーシャネットとこれて嬉しそうにこの町を歩いていた。
その2人は絵になるような美男美女であり、誰もが溜息をつくような美しさが、あった。
そして、極めつけに完敗だな、と感じてしまった。自分でもあんなルイスの顔はさせた事がなかった。
「ルイス、アーシャネット」
町の人から祝福される2人の後ろを見つめ、そっとつぶやく。
「…幸せに」
町に吹き込んだ春の日差しは、いつまでも2人を照らしていた。
ルイスに恋するカザーナの話でした。
しかし、失恋してしまうカザーナ。そんな彼にこの後春がやってくる…!
はずです。相手を思いやるカザーナには是非とも幸せになってほしいですね。
では、ここらへんで。
閲覧ありがとうございました。