17話 我、新たな獣の“すかうと”に成功じゃ!!
我と子竜は様々な獣の視線を集めながら上流を登って行っておる。
だんだん足場が広くなって来た。
森から抜けるやもしれぬ。
狼の群れは我の褒美を受け取った後、我の拠点の方へ向かって行った。
我の残り香を辿っておるのだろう。
我の住む近くを生息圏にするやもしれぬ。
我、新たな獣の“すかうと”に成功じゃ!!
「ぴぃ・・・」
ぬ、子竜がこの数多の視線に怯えておる。
子竜よ、お主は竜だ。
この程度で獣見知りになったでは格好がつかぬぞ。
ほれ、先ほどの様に勇ましく我の前を先陣切って見せよ。
「ピィ!」
うぬ、それで良い。
子竜を先頭に優雅に歩を進む我。
その様子を伺う数多の獣達。
実に絵になる!
我と子竜は美しい!!
─ザァァ
ふむ、奥に滝が見えるな。
そして我が来た方は森、川を境に向こう側は開けた大地。
川の流れは変わらず緩やかで向かいの平原では水を飲みながら我を見る見知らぬ獣。
うぬ、ここでよかろう。
すまぬが、我の雄大さを知らしめるため、少し川を凍らせるぞ。
我は角に内なる力を貯め、解き放つ。
同時に鈴の音の様な音が響く。
─チリン
『氷雪絨毯』!
出力を高めた我の『氷雪絨毯』は目の前の川を一時凍らせる。
我はその氷を踏み締め、佇む。
ふふふ、視線を集めておる。
我は滅多に姿を現さぬが、全く現さぬのもまた問題だ。
此奴らの記憶に我の存在を一度認識してもらう必要があろう。
滝を眺めながら氷の上で優美に佇む我。
美しい!
「ピィ!」
子竜は我と一緒に胸を張っておる。
うぬ、竜もまた気高き獣よ。
それで良い。
しばらく待つと先ほど見かけた大きな赤い鹿が現れた。
うぬ、中々大きいではないか。
我ほどではないが中々の大きさよ。
角も傷が多いが立派に生えておる。
恐らく数多の戦いで勝ち続けた歴戦の鹿よ。
「ブルッ」
ふむ、低い鳴き声だ。
鹿らしくはない。
貴様は我に挑むのか?
「ブルッ」
頭を振り氷の前で待っておる。
ふむ、角をこちらに向けるだけで動く気配がない。
これが貴様らの挨拶か。
なら我もそれに応えよう
恐らく我の美しい角を見て同族の挨拶が通じると思ったのだろう。
我は荘厳で優美な雰囲気を保ちながら獣の前に立ち、見つめる。
貴様は待ち、我に足を動かせたのだ。
分からせねばならぬ。
「ブ、ブルっ」
ふむ、首を少し下げたな。
これで序列は決まった。
我も挨拶に応えよう。
我は奴の角に我の角を何度か合わせる。
我の角は簡単には傷つかぬ。
─カコンカコン
木と木がぶつかる音が何度か響いた。
「ブルッ」
そして満足したのか去って行った。
うぬ、彼奴はあれでよかろう。
さぁ次だ。
─ドシン、ドシン
今度の客は平原からだ。
「パォオ」
象だ。
立派な牙を生やし、我と同じ程の大きさをしておる。
流石像、獣の中でも一二を争う雄大さだ。
だが、我には及ばぬ。
貴様の声に返事を返してやろう。
「ヒュゥイ」
象は氷を踏み締めこちらへやってくる。
─ミシミシ
一歩踏み締める毎に我の視界が揺れる。
やはり象は凄まじいな。
そして我の前で止まりこちらを見つめる。
知性のある目だ。
うむ、象は賢い獣と聞く。
我の荘厳で優美な姿勢をしかと理解しているやもしれぬ。
「パォオ」
象は我の前へ鼻を伸ばす。
我はそれを二又の尻尾の一つを差し出し、絡ませた。
「パォオ」
うぬ、どうやら満足したらしい。
そこでもう一匹の象がこちらへ来るが、滑って転けた。
子象だ。
「パォオ!?」
「ぱぁぱぁ」
子象は平原へ戻り先ほどの親の象が駆け寄る。
群れの象も集まって来た。
なんとも愛情深き獣達よ。
我は象の群れに子竜を連れ荘厳で優美に歩く。
「パォオ!」
後から寄った象が我に警戒するが先ほどの群れの長の一鳴きで警戒を解いた。
素晴らしい群れだ。
では子竜よ、子象が怪我をし泣いておるのだ。
我のせいでもある。
治してやって欲しいが気付けるか。
「ピィ?」
子竜は小象へ近づく。
「ぱぁぱぁ」
「ピィ!」
泣いている小象の怪我の部分が光り、傷が消えた。
「ぱぁ!」
「ピィ!」
子象はなれぬ鼻で子竜の尻尾を握り、子竜もそれに絡めた。
うぬ、良き友人になれば良いな。
我も詫びをやろう。
「ヒュゥイ!」
いつもの氷の結晶だ。
我の美しさを理解できるならその美しさも理解できよう。
「パォオ!」
象は群れを引き連れ去って行く。
うぬ、では次だ。
─ガサガサ
「ウキキ!」
次は木の上に住む猿か。
此奴らもまた賢そうだ。
長が木から降り、我の元へ来ようとする。
「ガァ!」
「ウキ!?」
な!
そこを狙うかの様に飛び掛かる虎の様な獣が現れよった!
「ヒュイ!」
『氷結魔弾』!
「ガァ!?」
「ウキキ!」
猿が我の元へ走ってくる。
「ガルルル」
虎は唸り声を上げこちらの様子を伺う。
威力は最小限にしたのだ。
今我が貴様らの秩序を少し乱している自覚はあるからな。
この場は殺しはせぬ。
が、我に会いにくる獣の邪魔はさせぬ。
今は去れ。
「グルルルル・・・」
目で語れば虎は去っていく。
貴様もまた何処かで語ろうぞ。
「ウキキ!」
「ピィ!」
猿と子竜は息が合ったのかお互いの尻尾を絡ませている。
此奴も友人になれるか。
「ウキ!」
猿は我に手を向け何かを差し出す。
すんすん。
妙な匂いだ。
開いて見せたのは粉だった。
改めて鼻を寄せ、近づいて嗅いでみるが─
「ヒュィ!ヒュイ!ヒュイ!」
「ウキ!?」
なんだ、これは!?
くしゃみが止まらぬ!
おのれ!
イタズラか!
「ヒュイ!」
「ウキ!?」
「ピィ!」
ぬ、そうだな。
猿は子竜と友人になったのだ。
だが、まだ苛立ちが治っておらぬ。
疾く去れ。
「ウキキ!」
全く。
困ったものだ。
さて、ではこれで終わりか?
他にも遠巻きに伺う視線を感じるが、まぁよかろう。
日も暮れ始めた。
一度野営の準備と飯の支度をしよう。
「ウリ!」
?
なんだこの小さき獣は。
どうやら今日最後の客が来ておる様だ。
猪ではない、子のウリ坊か?
「ウリ!」
だが親が見当たらぬ。
それに此奴が来たであろう方へ目を向ければ此奴と同じ様な獣の群れがあった。
もしやこれで此奴成体か。
「ウリ!」
お主ら子竜が産まれた時より小さいぞ。
よう今まで生きておったな。
いや、我の鼻では此奴らを探れていなかった所を考えるに、恐らくその秘密が此奴らの生存能力に繋がっておるのだろう。
ふむ、不思議な獣だ。
「ウリ!」
挨拶の仕方はどうやら頭を擦りつける様だが、我とお主では大きさが違いすぎる。
子竜、此奴に挨拶してやってくれぬか。
「ピィ?」
「ウリ!」
うぬぅ、いまいち伝わっておらぬ。
我に何かして欲しいとは感覚で分かっていそうだが、それが分からぬらしい。
「ウゥリ!」
そこでもう一匹のウリ坊が走って来た。
そして互いに挨拶をする。
「ピィ!」
子竜は分かった様でウリ坊へ頭を向ける。
「ウ、ウリ!」
「ピィ!」
よし、挨拶は出来たぞ。
だが、子竜の角に当たり少し痛そうだ。
面白き獣よ。
我に驚愕と神秘を与えた褒美に結晶を授授けよう。
無論、サイズは此奴らでも持って行きやすい様小さくしておる。
「ウリ!」
うむ、行くが良い。
最後に思わぬ珍客が現れたが、中々どうして面白い獣であった。
うむ、今日は我の威厳を振り撒き伝説の獣へとまた一歩近づいたと言っても過言ではない!
では野宿の準備と料理の時間よ!




