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1話 我、思った以上に可愛い声が出る。

暗い。


だが、温もりを感じる。


我は、何だ。


眠っているのか。


落ち着かない。


体は、中々思う様に動かぬ。


感覚が掴めぬ。


だが、動いている。


全く、まるで幼子の様だ。


前脚と後ろ脚があるようだ。


動かしていると何かに当たる。


堅い。


だがこの程度なら幾分かに壊せよう。


落ち着かぬ。


出せ。


我をここから出せ。


出せ!


─ピキ


ヒビが入ったか。


もうじきだ。


もう一押し。


─パキパキ


開けたぞ。


何と眩い。


何も見えぬ。


何も聞こえぬ。


しばし待つとしよう。


世界にまだなれぬ。


何か聞こえたぞ。


漸く見えたぞ。


どうやら我は卵から孵ったばかりの様だ。


ふむ、我は赤ん坊か。


親類の者は何処だ。


腹が減ったぞ。


何かないか。


たまごの殻、これでも取り敢えず食うか。


思ったより柔らかいが、食べるのが難儀だ。


それどころか体が動かしづらいな。


まずは空腹を満たしてからだ。


ふぅ、漸く食い終わった。


この軟弱な体は食べるだけでも億劫だ。


なんと情けない。


少し疲れ、眠い。


しばし寝る。





「グギャグギャ」


なんだ。


我の眠りを邪魔するものは、一体なんだ。


「グギャギャ」


「グギャグギャ」


「ギャギャ」


何だ、この醜悪な生き物共は。


産まれたばかりの我より小さい、二足歩行か。


まるで餓鬼のようだ。


「グギャ!」


─っ、ほう。


我に楯突くか。


身の程知らずが。


我は確かに生まれたばかり。


だが、餓鬼に負けるなどありえぬ。


断じてありえぬ。


眠りから覚め、満たされた我の体は思う様に動くのだ。


それに、内から溢れる我が力。


試させてもらうぞ。


「グギャ!」


遅い。


「くぁあ!」


「グギャァアア!?」


前脚で蹴り飛ばしたが、体に穴を開け臓物(ぞうぶつ)を撒き散らし飛んでいったわ。


思わずその事実に驚きそうになるが、それ以上に驚いたぞ。


我、思った以上に可愛い声が出る。


なんて事だ。


これでは威厳が出ぬぞ。


・・・まぁ、真の強者は多くは語らぬ。


姿勢と実績、そして醸し出す強者のオーラがあれば大丈夫だ。


「グギャギャ!?」


「グギャァア!」


おっとすまぬ。


仮にも戦。


色々初めての経験で余韻に浸っておったのだ。


餓鬼だろうと我に挑んだその勇気に報いて、一息で終わらせてやろう。


「くるぁああ!」


我、可愛い声で毎度ビビりそうだ。


内から溢れるエネルギーを口から解き放ってやれば二体の餓鬼は氷漬けになった。


ふむ、我氷属性か。


一度自分の足を見てやれば、少し青いか?


ふむ、毛はある。


深い毛ではなく、青く艶があり、美しい。


うむ、我は美しいな。


先ほど凍らせた餓鬼を見ればどうやら反射し鏡の様になっている。


我の顔は、ほう。


美しい。


まだ幼いが、凛々しい目をしておる。


顔立ちは左右対称で腹から伸びる白い毛と外に青い毛。


鼻は少し伸び、口の牙は少し鋭い。


角は、まだ短いか。


立て髪も生える気配があるな。


首後ろは濃い青をしておる。


恐らく立派な立て髪が生えることになろう。


将来はまるで伝説に語られる様な獣になるだろう。


いや、なってみせよう。


よし、我の夢は伝説の獣になることにしよう。


ところでここは何処だ。


洞窟か?


妙に壁が青白く光っているが、ふむ。


匂いで何か分からぬか。


すんすん。


分からぬ。


取り敢えず出口へ向かいたいところだが、ふむ。


まぁ行くとするか。


何、生まれたばかりだ。


獣生(じんせい)はまだまだ長い。


我が決めた道こそが王道よ。


さぁ、行くぞ!





「グギャァアア!?」


ふむ。


何度此奴らを倒せば良いのだ。


出口は見つからず、行き止まりばかり。


会う奴らは此奴らばかり。


良い加減飽きたぞ。


お。


暇つぶしに奴らの住処を荒らしておったら妙な物を見つけたぞ。


飽きて来た所にいつもと違うことが起きる。


我はこれを求めておるのだ。


それはそうと何だこれは。


鞄か?


少し小さそうではあるが、ふむ、しょるだばっぐという奴か?


触れてみるか。


─キュイン


!?


なんだ!?


光ったぞ!?


・・・消えた?


─ギシ


おお、いつの間にか我に巻き付いておる。


外せるのか?


─キュイン


おお、目の前に現れよった。


なるほどな、面白い。


─キュイン


取り敢えず持っていくこととしよう。


戦では邪魔にならなさそうだ。


うむ、着け心地も良し。


良い物を手に入れた。


ではまた行くとするか。





「グギャァアア!?」


飽きた。


此奴ら一体どれほどいるのだ。


倒しても倒しても湧いて出て来よる。


そろそろ違うのが出ても良いだろう。


ちょっと服が違ったり、少し体が大きい奴がいたが、大して変わらぬ。


腹も減って来たぞ。


お、奴らの住処に妙な穴を見つけた。


すんすん。


ふむ、何か異臭がする訳ではないな。


それどころか、この青臭さ。


森の匂いか!


「きゅるるるる!」


ふはははは!


ではな餓鬼共!


我は行くぞ!!

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