番外編第一話『独白』
『お前は明日から白の都の学園に通いなさい。』
「それはまた、急ですわねぇ……。」
黒の森の統治者にして黒の源流を持つ
“黒妃”と呼ばれる存在。
彼女を母に持つピア・シュバリーは、
突然屋敷から呼び寄せられたと思ったら
有無を言わさぬ命令を下された。
「なにそれ、勝手に呼びつけといて
意味分かんないっス。
なんでかわい~いピアちゃんが、
脳内まっしろけっけ共のおうちに
わざわざ行かなきゃなんないの?」
親子ではあるが共に住んではいないので、
ピアとその兄ゼブは、母から与えられた
屋敷で二人暮らしをしているのだ。
普段は関わってこないくせに、こんな時だけ
呼び寄せるとはどういう事か。
妹を可愛がっているゼブが難色を示すと、
黒妃は溜め息をつき、子ども達の
興味をそそるであろうエサを垂らす。
『あの脳内真っ白男……白王を潰す為に
わたくしは動くわ。
だからお前達も手伝いなさい。』
「お任せください!」
「頑張れっスよピアちゃん!」
そうしてやる気の出たピアは
すぐに荷物をまとめ、御者のフリをした
兄と共に白の都へ向かった。
馬車の中で、確認した自身に課された
指令は、〖王太子の婚約者候補になれ〗と
いうものだ。
この指示自体は“神”にこの国から
手を引かせる為のものである。
だがら最終的には母が誰よりも嫌う相手、
白王を絶望させてくたばらせる作戦の
準備でもあるそう。
まずは黒妃からの紹介状、もとい
計画表を持って白王の元へ赴く。
周囲からの白い目線などピア達には
全く刺さらない。
とんとん拍子で白王と面会し、
学園への入学と王太子妃候補になる事が出来た。
……『私と黒妃との間に子がいれば、
君のような子が生まれただろう。』
と白王が言い出しはじめ、思わず
嗤いそうになったが何とか必死で耐えて
ピアは馬車に乗り込み、学園へ向かう。
あの白王が、まだ伴侶からの愛を信じ、
再び一緒になる未来を夢想していただなんて。
あの白王が兄を見たらどうなるのだろう。
白王の子孫であり、顔がそっくりの父……に、
これまたそっくりな御者を見たのなら。
とても面白そう!と思ってしまった私は
やはりあの人の子どもね。
そう思いながら、馬車に揺られて
学園へと向かったピアを待ち受けていたのは
不機嫌全開の王太子とその側近達、
そして他の学園の生徒達だった。
ピアは非常に優秀だったので、
成績で文句をつけられる事はない。
王太子妃教育のマナーや歴史、周辺国の言語や
特産品も覚えてしまい、講師や周囲も
ケチがつけられない。
陰口もあっただろうが、白の都では
私語が禁じられている場所が多く、
彼ら白の民達がそれを律儀に守っているせいで
直接ピアの耳に入る事もない。
そうなると、彼女への嫌がらせは
無視といったものになっていったが
ピア自身は彼らに興味がないので
ノーダメージだった。
長期連休以外は真っ白で単調な部屋に
押し込められてしまう事だけが面倒だったが、
それ以外はわりと快適に過ごしていたピア。
卒業も近付き、王太子も各貴族の家も
ピアを妃にしない為の教育に全力をかけている。
白王としては、どちらに転んでも最終的に
黒妃と元の鞘に戻れると思っているのだろうが、
黒妃側の人間としては他の候補者が
選ばれてほしい。
どう頑張っても自分に勝てない貴族の子女達を
見るのが楽しくて本気を出していたが、
そろそろ手を抜いても良いだろう。
この任を終えたピアに与えられる白王からの
褒美は、〖白の貴族達へのお仕置き〗の
権利だけれども、こんな無茶振りをしてきた
母には何をお願いしようか。
そんな事を考えている彼女がいつものように、
教師への質問を無視されていた時の事。
職務怠慢ともとれる教師へ、ほんの一瞬
白い目を向けた生徒がいた。
彼の名前は確か、ダリアル・ワイティ。
ピアと同じ学年で優秀な生徒だが、
〖染まり柄〗であるが故に卒業と同時に
放逐されるのが決まっている悲しい青年だ。
そんな彼が誰にも気付かれないように
向けた冷たい目。
ピアもよく、白の民達へ向けている目。
しっかりとダリアルの顔を見てみれば、
穏やかそうなタレ目に甘い顔立ち。
うん、とてつもなく好みだ。
顔面がめちゃくちゃピアの好みであるし、
彼の内面も恐らく、自分好みだと判断できる。
母へのおねだりが決まったところで、
ピアは何回目か分からない王太子妃候補の
選別会へと向かっていった。




