苦悩のC/秘密の朝の特訓
ある病院の一室にて、ある男の見舞いに芹沢が来ていた。
その病室の名札には神田という名前が書いてあった。
「体の調子はどうかしら?」
「特におかしいところはないです。担当の先生もこれならあと数日で退院してガルガウズの装着も可能だそうです」
「そう。でも、これからは自分の体に気をつけなさい。バトルナイフの被検体にされた副作用で、あなたには特殊な薬品が体を駆け巡った後。もしかしたら、意図せずに超能力まがいの減少が暴発するかもしれないわ」
芹沢は知っている。彼になんのナイフの被検体にされていたのかを。シャルロットの件が収束してから報告書にもう一度目を通した彼女は、神田の体の心配をしてガルガウズの装着車を変えようかと思案したが、彼以上の適合者がいないのも事実なので、変更もできない。
次の適合者が金木となればなおさらだ。
ちなみに神田が被検体として刺されていたナイフは、Bomb。爆弾の力が込められたナイフだ。
病院側も、得体のしれないナイフの成分などすべてを容易に抜けるわけがない。おそらく、ナイフの毒素は神田の体の中にまだ残っている。
芹沢もそれを危惧して、神田の復帰に慎重な姿勢を見せている。
ほかの被害者たちも色々なナイフを刺されたりしていたが、その人たちも同様に体の中にわずかながら毒素が残っている。
だが、社会復帰そのものはそこまで難しくないだろう。
「神田君は、これから一か月安静にしてもらうわ。ドレードが出たらそうも言ってられないし、最近、ナイフの流出が見られるから、一か月もないうちに復帰させちゃうかもね」
「いいですよ、それくらい。僕の仕事がそういうことなのは理解してますから」
「本当に優しいわね、あなたは。療養もかねて調べてほしいことがあるのよ」
「はい?」
芹沢はお願いと言って、神田にある資料を見せる。
「これは?」
「最近の特殊事件の被害者及び関係者のリストね」
「それって、ドレードやバトルトルーパーの事件の資料ってことですか?」
「まあ、そうね。で、見てほしいのは最近のリスト」
「それがなにか?」
「最近、劉生町というところの、私立劉生高校の生徒が頻繁に関与しているのよ」
「確かに、多いですね」
「そこでね、捜査一課だったあなたに、この学校の調査を頼みたいの」
「わかりました。劉生高校ですね」
「ありがとう」
こうして、少しずつだが警察の手が大雅のもとへと近づいていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やあ!……とりゃあ!」
「しっ!……」
梓家の誰も使っていない道場で、2人の怪人が殴り合いをしていた。
まあ、怪物と言っても、片方は俺の変身したガーディア。もう片方は澄香の変身しているカラスだ。
事の発端は、つい一時時間前にさかのぼる。
「特訓?」
「そう!私って、あんまり役に立ってないよね。だから、私も強くなりたいの!見た感じ、大雅っていろんな力が覚醒してるでしょ?私にもそういうのあるんじゃないかって」
食事中に何事かと思えば、自分は役に立っていないんじゃないかという。そんなことはないと言いたいが、こいつが活躍しているさまがすっと出てこない。
なんと悲しいことか。
そんなバカなことも言ってられないけど……
「だからって、特訓?」
「そう。自分より強い奴と戦えば、覚醒するんじゃないかって」
「まあ、そういうことならいいよ。芽衣もいいか?」
「私は別にいいよ。家の裏に昔少しだけ使った柔道場があるから」
「「お前んちなんでもありだな」」
それから、俺たちは食事を済ませ、芽衣の言っていた道場に移動した。
「大雅、手加減はできるだけしないでね!私も自分の式神使うから」
「使い魔から式神になってるのか。まあいいか。そこらへんはどうでもいい」
澄香の出した式神は二体。赤と青の式神。色によって能力が違うのか、色々と気になることはあるが、戦っていればわかる。
そう考えつつ俺は、澄香の懐に飛び込む。
「なっ、はやっ!?」
「ふぅー……、【激震】!」
「ゴハ!?」
俺の打撃に、少しだけ後ろに飛ぶ澄香。それなりのダメージがあったのか彼女はお腹を押さえながら、立ち上がる。
それと同時に式神二体が俺のもとに飛んでくる。
二体は、両サイドから俺に総攻撃を仕掛けるが、俺はそのすべてをさばききる。
見切るのはそれなりに大変だったが、今まである程度の修羅場を抜けてきた俺だからこそか、どうにか切り抜けられた。
「どうしてあたらないの?」
「澄香、どうやって式神操ってる?」
「どうって?私が直接動かしてるけど?」
「え?じゃあ、もしかして三人分の動きを考えながら戦ってる?」
「そうだけど?」
「はあ……それじゃあだめだ。慣れてもないのに三人分の操作は無理だ」
「じ、じゃあどうしろって言うの!」
「それは自分で考えろ。多分、澄香が弱いのはそれが原因だ。キャパシティーオーバーだ。三人に向ける意識を少しでも自分だけに向けたら、少しは余裕ができるはずだ」
俺の言葉を聞いて、黙り込む澄香。彼女自身も納得することはあったのだろう。
あとは彼女の力の使い方次第。彼女にあった戦い方は彼女が生み出すしかない。型に収めたところで、たぶん限界が来る。彼女らしいやり方が一番だ。
「さあ、早くしたくしないと学校遅刻するぞ」
「あ、そうだった!早くしないと!」
そこから時は進んで登校中。登校中といってもまだ、最寄り駅には到達していないので、登校している生徒は俺たち以外は見受けられない。
それが理由かはわからないが、澄香が俺に質問してきた。
「そういえばさ、大雅に赤い力が覚醒してから大技に名前つけるて叫ぶようになったよね?」
「ああ確かに、大雅って急に『グレネードフィスト』とか『グレネードバースト』とか言うんだもん。あれってどういうこと?」
「ああ、俺にもよくわかんないの。なんか勝手に口が言っているっていうか、なんというか……
まあ、俺的にはカッコいいからいいんだけどね」
「大雅は男の子なんだねー」
「私たちにはよくわかんないなー。だってこれから出す技名言ってるんだよ?避けてくださいって言っているようなもんだよ?」
「こら!全国の特撮ファンに謝りなさい!」
芽衣の特撮ファンを敵に回すような言葉は無視して登校する俺たち。
そんな姿はすっかり学校では当たり前の光景になっていて、俺のことをよく知らない人たちは、俺のことを浮気すらも二股するクズと言われていることを知って、ブチギレるのは後のお話。
この時俺と芽衣は想像だにしてなかった。澄香がどれだけ心に闇を抱えていたのかを
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