不思議なS/ファイターズミサイル
Fighter―――戦う人という意味合いで受け取られそうだが、今回の場合は戦闘機だ。
やけに雑多な能力であったが、おそらくこの名称のナイフなら使えるだろう。前回のバトルトルーパー戦で対峙した二体のバトルトルーパーは、それぞれ名称通りの能力を使用していた。
だから、今回も名称に準じた能力を使ってくるだろう。
そして、奴のナイフで使ってくるであろう能力は、今までのを別にすると考えられるのは―――
「なにじっとしてやがる!もっと踊れ!」
「言動がキショすぎる。なんだよ踊れって……」
「な!?いつの間に後ろに!?」
―――ジェット加速とかかな。
俺の読みは見事に当たり、すぐさま敵の後ろに回り込むことできた。
俺はそのまま手のひらを相手にむける。
「【サイコキネシス】」
「ぐはっ……」
俺の力によって大きく吹き飛ばされる敵。相当効いたのか、だんだんと動きが鈍くなっては来ている。だが、相手のナイフの機動力は元々高いものか中々動きはおとなしくなってくれない。
「クソクソクソクソ!これならどうだ!」
「どこ狙ってんだよ……って、そういうことか!」
敵はなりふり構わず、俺に対してミサイルを放ってきた。ように、見えたが、軌道は大きく逸れていき明らかに俺という標的から外れていた。
だが、ミサイルの進行方向の先を見てみると、瓦礫の影に隠れて戦いの様を見ていた風見先輩がいた。
俺はとっさに先輩の上に覆いかぶさる。
俺が力を使うのが遅れて攻撃のすべてが俺に命中した。
「が、があ……」
「あ、有藤……」
「大丈夫ですか……先輩」
「だ、大丈夫だが、お前は……」
「俺は丈夫だから……先輩にけががなくてよかった……」
先輩にけがはなかった。だが、先輩が心配するように命中を受けた俺の背中は損傷を受けていた。
変異後の俺の体には大した傷は目立っていないが、やはり衝撃と熱でダメージがある。
それでも、先輩の命を守れたのならすべていい。
「なにもできない人を狙うのはいつも通りか?」
「そうだよ!俺は今までナイフで一人一人殺してきた。だけどな、こんなすげえ力と出会っちまったんだ。虐殺が楽しすぎて。ああ、気持ちいぜえ。人間が断末魔を上げながら、少しずつ力が抜けて声も小さくなっていくさまが」
「気持ち悪い変態が……お前は生かしちゃいけない。そう思うが、ナイフ使用前の余罪は警察に任せる」
「あ?俺を逮捕するのか?そいつは無理な話だな!」
「は?絶対にするに決まってんだろ」
「無理だね。だって、お前はここで殺すから!」
どんな自信だよ。と、言いたいところだが、奴は正気ではない。おそらく、ナイフの使用による副作用で今はとてつもない全能感にあるのだろう。
だから、奴は俺を倒せると錯覚している。
これ以上は危険だ。正気を失っている人間がまともな判断を下せるとは思えない。奴が俺たちではなく、街に放射し始めたら収集つかなくなってしまう。
「これで決めようか……【サイコフライト】」
俺は、そう唱えると同時に腕を前に伸ばし、両手のひらを合わせて円柱形の光弾を飛ばした。
それは、光弾は見事に敵の腹を貫き撃墜した。
その後、敵からナイフが排出されて、事態は収束した。
変身者の男は縛り倒して遊園地内に放置しておいた。
その後は被害者の一人として警察に少しだけお世話になったが、すぐに家に変えれる運びとなった。
帰路についた俺たち二人は、休憩がてら公園のベンチに隣り合って座っている。
しばらくの沈黙の後、先輩が口を開いた。
「すまない……私の父があんなものを生み出してしまったばかりに」
「先輩のせいでも宗光さんのせいでもないですよ。すべての根源はシャルロット=アンバニーだ」
「だが……」
「先輩も聞いてたでしょう?宗光さんはナイフの破壊を目論んでいたこと。開発には嫌々付き合っていたこと。父親のこと信用しないんですか?」
「それは……」
先輩は一つのことを悩んで、一人でため込んで腐っていく面倒なタイプ。だが、人として一番ありふれている。
こういう時の対処法はいくらでもあるが、もう話は聞いてやった。後は、無理やりでも先輩の歩く道を舗装してやるだけだ。
「先輩は宗光さんが嫌いですか?」
「嫌いじゃない……」
「なら、信じてあげましょう。あなたのお父さんは優しいってことを」
「信じる……」
「それに、宗光さんは俺に戦う名をくれた。あの時のお父さんの顔は、先輩の時折見せる優しい顔と同じでしたよ」
「そうなのか?」
「そう。寂しい気持ちはわかる。でも、腐るのは違う。辛くなったらいくらでも相談に乗ります。だから、学校に行きましょう。みんな心配してますよ」
「有藤……
そうだな。ここで腐って大学にも行けず働きもせず腐っていくのは父さんに示しがつかないな」
そう言って、少しだけ元気になる先輩。やはり、少しでも笑顔のほうが先輩はきれいだ。
由愛の笑顔は天真爛漫でかわいらしい笑顔だが、先輩はどこか儚げながらもすっきりしたような笑顔。これが大人っぽい笑顔というやつか?ちょっとイケメン気味だな。
まあ、なんでもいいけどな。これで、結城さんお依頼は完全達成だ。
「有藤」
「はい?」
「ありがとう。私の心を助けてくれて。明日、お前の部室に行く。待っていてくれるか?」
「いいですよ、待ってます」
宗光さん、あなたの娘さんはちょっと強くなりましたよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事件から数日。
遊園地で暴れた男は、まあ色々な罪で逮捕されていた。その後も家宅捜索などでバラバラになった人の死体が、各部に分けてホルマリン漬けにされていたのが見つかったらしい。
その数なんと18人。
いずれもホームレスなど身元の特定が難しい人ばかりだった。
まあ、色々な余罪込みで極刑は確定だろう。むしろ、それ以外にあり得てはいけない。
ちなみに犯人の名前は上杉遠矢。大学生らしい。
この国で一番偏差値の高い大学に通っていたらしい。また、新三〇駅で叫ばれちゃうよ。
話は変わって、事件の次の日、宣言通り部室に風見先輩が来た。
なんか来たとき、頬を染めてしおらしかった。まあ、俺も恋愛経験はあるのだからなんとなくわかるが、本人から何も言ってこないなら触れないでおこうと思う。
無駄に動いて彼女を傷つけるのも忍びないから。
ちなみに、遊園地で購入したお菓子は、芽衣や澄香に好評だった。ぬいぐるみの方も、結城さんには好評だったらしく、先輩はとても喜んでいた。
余談だが、今先輩は学校で人気が上がっている。今までは風紀委員長ということもあって厳しかった彼女だが、休み明けの登校から人当たりがよくなり、告白する生徒も増えているようだ。
俺に発現した三つ目の姿。まだ俺には、隠された力があるのだろうか?俺はそんな厨二めいたことに思いをはせるのだった。




