91 光り輝く明日のために
赤い髪を持つ少女の背中から唐突に銀色に輝く刃物が飛び出した。
ファブリスは驚いて少女から離れる。
すると背中が裂けて、なかから銀色の髪を持つ少女が飛び出した。
「ルーナ!」
ファブリスは喜びのあまり、その少女の名前を呼ぶ。
「ファブリス、あれは……?」
そう言って俺は空に浮かぶ魔法陣を指さした。
「あれは『千年越しの悪夢』が世界を滅ぼすためにつくった魔法陣だ。世界を救うためにはあれを阻止するしかない」
「わかった」
俺はそう返事をすると空に向かって上昇した。
後ろでファブリスが俺を呼び止める声がするが完全に無視する。
もしかしたら俺は死んでしまうかもしれない。
それでも、みんなを守れるんだったら死んだって構わない!
俺は勢いよく鞘から刀を抜刀した。
そして魔法陣のあるところまでたどり着くと『吸収』を発動した。
これで全部吸い尽くせば……
しかしそう簡単に思惑通りにはいかなかった。
「ぐっ……!」
多い。多すぎる。
これをすべて吸い尽くすのは不可能だ。
でもやるしかない!
《『天の加護システム』起動、確認しました》
その声がしたのと同時に純白の翼が背中から生えた。
その純白の翼はゆっくりと羽を広げていく。
からだのなかに吸収されていく魔力の量は増えたが、それでも無理そうだ。
刀の刀身にピキピキとひびが入っていく。
恐らく刀がもう限界なのだろう。
それでも俺は魔力を吸収することを辞めなかった。
そしてついに俺の刀が割れた。
刀身の欠片が下に落ちていく。
「ルーナ!」
後ろからファブリスが手を伸ばしながらこちらに向かってくる。
「来るな!」
俺はその手を握らずに翼を羽ばたかせてファブリスを落下させた。
ごめん、ファブリス。
でもこれはお前を巻き込ませないためなんだ。許してくれ。
段々と魔法陣の形がブレていく。
それでも残りの魔力は膨大だった。
そろそろ、からだのほうも限界が来てる。
持ちこたえてくれ。俺のからだ!
しばらくそうしていると俺のからだに異変が起こった。
魔力が魔法陣のほうに逆流し始めたのだ。
ダメだ! 俺は誰一人として死なせるわけにはいかないんだ!
「ぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
魔力が俺と魔法陣の間で暴れ出す。
魔力の暴走。
魔力と魔力がぶつかり爆発が起こる。
それは決して俺に被害がないわけではなかった。
むしろ重傷である。
俺は地面にむかって落下しながら魔法陣が消えていくのを眺めていた。
そんな俺のからだを誰かが抱いた。
抱いた、というよりお姫様だっこに近い。
その人物の顔を見るとそれはファブリスだった。
あぁ、気づいてしまった。
いままで否定していた気持ち、そして素直になれなかった気持ちに。
たぶんこうやってファブリスにやられたのがトリガーになったのだろう。
これでたぶん俺の男としての精神は死んでしまった。
その時、俺を強烈な眠気が襲った。
どうやらこの感じは長い眠りになりそうだ。
「どうした!?」
いきなりウトウトし始めた俺に慌ててファブリスが呼びかける。
「大丈夫、大丈夫。たぶん……」
俺はゆっくりと瞼を閉じる。
たぶん寒くないから死なないとは思う。
だけど本当に目覚めるのかすこし不安だ。
次に目覚めるときは何年、時が経っていることだろう。
「なぁファブリス」
「なんだ?」
俺の息を吐くような声にファブリスは耳を澄ました。
「俺がいなくなっても、何年たっても忘れるなよ?」
「そんなこと言うなよ。死ぬみたいじゃないか。例えそうだとしても忘れるわけないだろ」
「だよな」
俺は長い溜息を吐いた。
目覚めたらきちんと、その言葉を言おう。
俺はファブリスに笑いかけた。
「ごめん、ファブリス……。ちょっと眠くなっちゃった、かな…………」
次の瞬間にはもう彼の腕に抱かれていた少女は一本の刀に姿を変えていた。
その鞘にはかつてその少女にプレゼントしたブローチが、どんな方法を使ったかは知らないが埋め込まれていた。
そのブローチがキラリと光に反射して輝く。
その刀を抱く少年は涙を流しながら静かに刀に語り掛けた。
「ルーナ、君のことはどんな時も絶対に忘れないよ。おやすみ」
いつかまた必ず会える。
それがいつになろうと自分は彼女を待ち続ける。
そう心に刻んで彼は光り輝く明日に向かって歩き出した。
いつか再会の日が訪れることを強く願いながら。
To be continued!
(まだ完結しないんだぜ!)




