69 取引
「え?気になるところ、そこですか?ファブリスさんの居場所とかじゃなくて?」
俺の言葉に動揺を隠せずに少女は言った。
「ファブリスはいまはどうでもいい!まずはなぜ俺を刀にしたのか聞きたい!それと人化したらなぜ女になったかもな!」
俺は少女に詰め寄る。
すると少女は「どうでもいいとか、ひっど……」と小声で言ってから答えた。
「まずあなたを付喪神にした理由は面白そうだったからです。性転換の件も同じですよ」
「おいこら。そんな理由でトカゲに襲われたり、蜘蛛に襲われたりしたのかよ。しかも性転換しちゃってるせいで色々めんどくさいことになってるし!」
俺がそう言うと面白そうに笑いながら少女は答える。
「いやぁ、あなたを見ていると飽きないんですよねぇ。だからこのままにさせてください」
「いや、このままって……」
俺はため息混じりにそう言う。
突然、元の姿に戻されるのは色々と困るし、しょうがない。
だけどこいつのお楽しみにされるだなんて御免だ。
「さてさて、あなたはファブリスさんの居場所がどこだか知りたいですかぁ?」
笑顔でそう聞いてくる少女に俺は無言で頷いた。
すると少女は笑いながら語った。
「しょうがないですねぇ。だったら、私がこれから出す条件をすべてクリアしたら教えてあげましょう」
「条件?」
「はい。まずあなたにやってもらいたいことは十二賢人のNO.1とNO.3を殺すことです」
「十二賢人……」
聞いたことがあるようなないような……
そう思っているとすぐに少女が補足説明をしてくれた。
「十二賢人とは異世界から召喚されてやってきた十二人の賢人のことで、あなたはその十一番目です。基本的には死者のなかから適性のある者を選ぶのですが、勝手に選ばせていただきました!テヘペロ」
そう言って少女は舌を出した。
テヘペロじゃねぇんだよ。このクソ女神が。
そう思いながら俺は彼女に聞きたいことを言う。
「他には?」
「他には……そうですね……適当に酒でも買ってきてください」
「げっ……」
俺は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
酒と言われてあまりいい思い出はない。
それを見てか少女は笑いながら「冗談、冗談」と言った。
「酒なんてたくさん保存してますから心配しないでください。あなたはただNO.1とNO.3を殺すことだけを考えてください」
「ははは……」
そこで俺はひとつの疑問に気づく。
「でも十二賢人を集めたのに、なんで殺す必要があるんだ?」
俺は無意識のうちに彼女に質問していた。
それに彼女は笑顔を崩さず、答える。
「さぁ?どうしてでしょうかね?」
俺はそう言う彼女に恐れに近い感情を抱いていた。
なぜなら彼女の口はたしかに笑っているが、目元は笑っていなかったからだ。
こいつ、なにか隠しているな……
「ところでそのNO.1とNO.3とやらにはどこで会えるんだ?」
俺は恐怖心を押し殺し、少女に尋ねる。
「二人はいつも共に行動しています。どこかの国、団体に所属しているわけではなく世界中を放浪しているのですが次はレクイエムに来るみたいですね。そこを狙ってください」
「わかった」
俺はそう返事をするとレクイエムにむかって飛び出した。




