木の人型
「うお! 戻ってきたぞ」
ルビが言って、私とカリンは身構えた。魔獣だったら、確実に襲ってくるはずだ。
木の人型はこちらの様子を伺っているようだ。
「こっわ、動くマネキンかよ」
マネキン……確かに洋服屋にあるそれに似ているかもしれない。
ん? 待てよ? あれが魔獣で顔がないって確かどこかで何か聞いたような?
「リティさん、ここはあたしが」
「あ、うん、助かるよ」
朝から黒系、白系、赤系、白系と術を使い過ぎている。雑魚っぽいし、相手にしたくない。
「一体、何が目的なんスか?」
一歩前へ出たカリンが問うが、木の魔獣は反応なし。少なくとも白系ではなさそうだ。
「危険なことに変わりはないっス」
カリンは胸元から、ペンダントらしきものを取り出した。水晶のようなそれの中に術円が見える。持ち歩き方はそれぞれだけど、中々お洒落な方法だ。
「黒き魔獣の地よ。アリーナの息吹をここに。カリン・ビア・ハルビアの名の元に顕現せよ!」
ペンダントトップから黒い光が噴き出し、出現したのは、黒系のライオン型魔獣、アクノだ。
「行けーっ」
木の魔獣を指で指すカリン。アクノは勢いよくそれに飛び掛かった。しかし、不思議な動きで横に避けられる。
「!」
アクノは戸惑うことなく、右足を踏ん張って方向転換すると、再び突進した。あのアクノ、カリンの相棒なのかもしれない。動きに躊躇いがない。
しかし、やはり避けられる。
なんだろう、あの動き。突っ立ったまま横にスライドしているような。
「アクノ、もう一回」
いや、ただ単に飛び掛かるだけじゃ攻撃は届かないだろう。
しかし、カリンのアクノはさっきと同じように体を回転させる。三回目、地面を蹴ろうとしたその瞬間、
「顕現せよ」
カリンの口から詠唱の最後の言葉が漏れた……?
スライド避けの予備動作に入っていた木の魔獣だったが、カリンの二体目には反応できなかったようだ。ペンダントから飛び出してきた子どもタイプのアクノが一体目のアクノの背中を踏み台にして、かなり素早い動きで木の魔獣の肩に体当たり、
「よし、そのまま!」
子どもアクノはそれを押し倒して、頭に牙を立てたのだった。さらに一体目アクノものしかかり、完全に動きを封じてしまった。
「おお、連携プレーか」
ルビが感心したように言う。
カリンの召喚術の使い方は中々個性が出てる。
「さあ、捕まえたっスよー」
カリンがアクノ達が押さえつけている木の魔獣を覗き込むと、
「……あれ」
彼女は眉を寄せた。
「どうしたの?」
駆け寄って、同じようにそれを見やる。
そこにあったのは人型ではなかった。根元から掘り起こされてしまったらしい太い木が、横たわっていた。
もしかして元の状態に、戻った?




