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茗荷  作者: 花村かおり
3/9

茗荷3

その日、直子は午後に休暇をもらって、午前中の業務を終わらせて、あわてて事務所をでた。離れて暮している5歳年上の兄から連絡があり、会いたいと言われたからだ。

寿屋の前を通ると誠二さんが女の人と談笑をしていた。直子は軽く会釈をして通り過ぎようとすると、

「直ちゃん、お帰り、今日は早いんだね」と誠二さんが声をかけてきた。

「ええ、今日は兄と約束をしているので、無理を言って、休みをもらったんです」

「へえ、隆と会うのか、元気しているかな?よろしく言っておいて」と誠二さんは言った。

「はい、伝えておきます」と言うと、誠二さんが女の人と一緒だったから、なんとなく会話をするのがはばかられたため、では、と言って急いで家に向かった。

家に着くと否や、母が、

「直ちゃん、今日は早いじゃない、どうしたの?」

「ちょっと、友達と会う約束をしていてね、午後お休みをもらったの」

「へえ、いいわねえ」と母は言うと、仕事に戻っていった。

両親に兄の隆と会うことは伝えられなかった。

兄は5年前に家を出ていた。兄には近所に幼馴染の婚約者が居た。しかし、結婚式をどうするか決める段階になって、突然、婚約者と別れてしまったのだった。

それと同時に兄は家を出た。母は

「何も家を出なくてもいいじゃない」と言った。兄はそのころ、実家の理容店で理容師として働いていたからだ。

「美希に申し訳ない。俺にはもう会いたくないだろうしさ」と言って、さっさと別の理容店に就職を決め、家を出て行った。それからは年に1度ぐらいしか実家には戻ってこない。

兄は直子だけに道ならぬ恋をしたと告白をした。好きになってはいけない既婚者の女性を好きになってしまったということだった。相手も自分のことを好きでいてくれる。こんな気持ちになったのは初めてなんだよ、と言った。


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