87 それは余計なお世話ってものじゃありませんこと?(2)
「ファエンさん、これなら少しは金になるだろ?」
バルドのその言葉に、ファエンは眉をひそめた。
「まあ確かに、この形なら、商品にはならずとも、俺の食事にはなるな」
「じゃあこれの交換品はアセリアちゃんに」
「はい?」
突然名前を呼ばれ、眉をひそめたのはアセリアだった。
「そういうわけにはいきませんわ。あなたのパンじゃありませんの」
「でも、アセリアちゃんのジャムだろ?」
「はぁ」
とため息を吐く。
バルドは言っても聞かないだろう。
特別悪い人間でもないのだけれど。
「では、はんぶんこいたしましょう」
その提案が限界だった。
「じゃあ、半分な」
その提案を飲んだのは、ファエンの方だ。
「この辺りのならいいよ」
と商品台の上を示す。
そこにあるのは、小物や食料だ。
「あら」
塩と書いてある小さい袋に目が行く。
これなら、役立ちそうですわね。
「アセリアちゃんは塩にするの?」
「そうですわね。これにしますわ」
「じゃあ、俺もこれ」
「塩、ですの?」
「ああ。パン作りには必須だからさ」
そんなわけで、アセリアとバルドは小さな塩の袋を手に入れ、ファエンはバターたっぷりのジャム乗せパンを広場にいた子供達と一緒に食べたというわけだった。
アセリアの手の中には、小さな紙の袋が残った。
「感謝いたしますわ」
外向きのほんのりとした微笑みを讃えて、踵を返した。
後ろから、バルドがついてくる。
アセリアは、くるりと後ろを振り返ると、バルドを威圧的に見上げた。
身長差はかなりあるし、バルドは身体ががっしりしているタイプだけれど、負ける気はしなかった。
「なんですの?」
バルドがにっこりと笑う。
「ウィンリーたちと約束してるんだろ?」
「ですわ」
「俺もなんだ」
「……あら」
アセリアは背筋を伸ばす。
「あなたが来るなんて、聞いておりませんわ」
そこで、バルドはまた、お盆の上をアセリアに見せた。
お盆の上には、先ほどのジャム乗せパンが5つ。
「おやつのパンを寄越せって言われててさ」
「そうですの」
くるりと歩き出したアセリアについて、バルドがまた歩き出す。
「同じ方向だね」
「……ですわね」
仕方なく、ウィンリーたちと約束している木陰まで、バルドと共に歩いた。
「アセリアちゃんはさ、」
「…………」
質問に、沈黙で返す。
「この村が好き?」
「……そうですわね」
特に、否定する気は起きなかった。
受け入れてくれてありがたいと、感謝してもしきれないくらいだ。
「俺さ、この村が好きなんだ」
「そうですの」
「だから、悪いイメージは持ってほしくはないからさ。何か、困ったことがあったら言ってよ」
アセリアは、バルドを見上げる。
「……今までのことは謝る。ごめん。心配とかさ、いろいろあって、つい。改めて、友達になれたらいいと思う」
確かに冷たくしすぎでしたかしら。
どちらにしろ、この村にいる以上、粉屋を無視するわけにもいきませんわよね。
「ふぅ」
一つため息をついて、アセリアは村はずれの木陰まで、歩いていった。
バルドくん別に悪いやつではないんですよ!




