86 それは余計なお世話ってものじゃありませんこと?(1)
「どうですの?」
ファエンの隣には、腕組みをしたアセリアが、相変わらずバランスの悪い椅子に腰掛けていた。
目の前のファエンは、アセリアから渡された瓶を眺めながら、
「う〜む」
と唸っている。
「まあ、無理だろなぁ」
というのが、ファエンの結論だった。
アセリアは、返してもらった小さな瓶を眺める。
瓶の中に入っているのは、真っ赤なイチゴジャムだ。
イチゴジャム、といっても、砂糖は入っていない。
そのままイチゴを煮ただけに過ぎなかった。
だからといって、砂糖は高級なもの。
香袋の布の借金もありますのに、それを買うわけにはいきませんわね。
砂糖と瓶を買ってしまえば、赤字になってしまう可能性も高い……。
こういう売り方もあるかと思ったのだけれど。
残念ですわ。
「甘くて美味しいですわよ?」
「甘くて美味しいんだがなぁ」
ファエンもアセリアと向かい合って腕組みをしている。
「砂糖がないんじゃ、甘さの調節もできんからなぁ」
結果、二人して首を傾げ、
「う〜ん」
と唸ることになってしまった。
そこに通りかかったのはバルドだ。
「何が甘くて美味しいんだ?」
丸パンを入れた籠を肩に担いでいた。
どうやら、パンの配達の途中らしい。
「このジャムですわ」
バルドに話しかけられるのは、以前強く攻められたこともあり、少し不快だった。
けれど、この小さな村のこと。無視することも簡単ではない。
「へぇ、ジャムか!」
「ですわ。けど、保存や味の統一が難しくて、売れませんの」
「けど、甘いんだろ?」
「それはもう」
「じゃあ、俺にくれない?」
バルドがそう言うと、アセリアがキョトンとし、ファエンの眉が器用に動いた。
「ちょっと試したいことがあってさ」
アセリアは鼻をツンと上に向け、顎に指を当てた。
「まあ、いいですわ」
「ありがとう」
バルドがニッと笑う。
「じゃ、少し待ってて」
「相変わらず強引な方ですわよね」
アセリアがそう口にしたのは、バルドが何処かへ行ってしまったあと、優雅に買い物をし終えた後だった。
香袋一つと、新しい桶二つと交換してもらった。
「ん」
ファエンが、視線だけで、誰かが来たことを示す。
広場に顔を出したのは、戻ってきたバルドだった。
手には、お盆のようなものを持っている。載っているのは、香りからしても茶色い形状からしても、パンのようだった。
「二人とも、食べてほしいんだ」
目の前に出されたパンは、平らに焼いたパンに、ジャムが載ったものだった。
「バターたっぷりだよ」
「あら、確かにいい香りですわね」
その、パンにしては小さなそのジャム乗せパンを口に入れると、サクッと口の中でバターの匂いが広がった。
「美味しいですわね」
アセリアが感心すると、その満足そうな顔を見たバルドがクスクスと笑った。
「食いしん坊なんだな」
アセリアがムッとする。
相変わらず、失礼な方ですわね。
デニッシュ的ななんとやら。




