78 もう、自分を騙せない(1)
朝からハーブを取っていた。
朝のうちに摘むと新鮮でいいらしい。
ハルムは明るい森の中で一人になったところで、木漏れ日の落ちる草原にゴロリと横になる。
アセリアが、ドレスを売る決意は、どれほどだっただろうと思う。
そしてそんなことを一人で決めてしまったことに、寂しさを覚えてしまう。
相談、出来なかったのか。
それでも、一言くらいは……。
支えてやりたいと思う、のに。
「……ハルム……」
遠くで、声がした。
アセリアの声。
ああ、俺、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
瞼の裏に、木漏れ日の明かりが眩しい。
「ハルム」
遠慮がちな声。
きっと起こしたらいけないかと迷っているのだろう。
「う……っ」
眩しかった明かりがなくなり、アセリアの気配を感じたところで、目をこじ開ける。
うっすらと開けた目の前に、アセリアが覆い被さっていた。
頬に、アセリアの金髪の先が触れる。
くすぐったいな。
「お嬢様……」
アセリアは、思いの外心配そうな顔をしていた。
「何かありましたか……?」
腕のすぐそばに突いた手。
「ハルムは、大丈夫ですの?」
「ええ。ちょっと眠ってしまったようですね」
鼻をくすぐる匂いは、ハーブの香りだろうか。それとも、アセリアの香りか。
「……ハルムが居眠りなんて、珍しいですわね」
「ああ」
柔らかな香りに包まれて、まだぼんやりとする。
俺を起こそうと伸ばしかけた手を、アセリアはまだフラフラと空中で漂わせていた。
その手を、掴む。
その心配そうな顔をどうにかしてやりたかったのと、手がフラフラしていたのが気になってしまったのと、ただ単に手を掴みたかったのと。
そんな気持ちがまぜこぜになった結果だった。
「ハ、ルム……!」
アセリアは、そんな気持ちに反して、余計に混乱した顔をした。
赤くなって困る顔を見せるアセリアは、素直に可愛いと思う。
もっと困らせてやりたいとさえ、思う。
もしかしたらこれはまだ夢かもしれないななんて思いながら、ゆったりと身体を起こす。
力がすっかり抜け、抵抗することもないまま、素直に手を握られているアセリアの瞳の中を覗き込む。
その指の感触を楽しみつつ、もう一度尋ねた。
「何かありましたか?」
「ハ、ハルムが……!大丈夫なのかと思いまして……!」
すっかり真っ赤になり視線を泳がせるアセリアの言っていることが、やっとハルムの耳に入ってきた。
「あっ」
やっと自分のやらかしに気付き、ハルムはアセリアの手を離す。
頭の先まで、熱が上がっていくのがわかる。
俺、何やって……。
「すみません、お嬢様」
「い、いえ。大丈夫ですわ」
甘々な感じで続きます!!




