7 外へ!これが生活の第一歩になるだろう(1)
眠ることが出来ずに、数時間もすれば窓の外は明るくなった。
部屋の中が、簡素だけれど、そこそこ物が揃っていることに気がつく。
けれど、実際、服がないことや部屋が一つしかないことは致命的だ。
ハルムは、眠っているアセリアに視線を向ける。
アセリアが寝返りを打って、枕に注いだ細い金髪やはだけた肩が見えて、そこから視線を無理やり剥がす。
早いところ、服や食べ物を持ってこないと、と立ち上がった。
何度もただ一つしかない扉の建て付けを確認し、誰にも見つからないよう、まだ霧の残る朝の空気の中へ出た。
何よりも大切なのは、ここに人間がいると誰にも気付かれないこと。流石に裸の女性一人がいることが周りにバレるのはよろしくない。
こんな田舎ならば、悪漢の一人や二人居るだろう。
家の外は、昨夜見た真っ暗な世界とは、別世界だった。
家の裏手に小さな林はあるものの、あとは見通しがいい開けた場所だった。
腰までしかない門の前には、小さく細いながらも道がある。
右手側は小高い丘に繋がる。丘の上は、民家がいくつかと畑になっているようで、どうやら村はあっち側らしい。
左手方面は、林沿いに道が続いた先はどうやら川だ。
ここは、村はずれらしい。
人間を求めて村の方へ歩いていく。
村らしき場所にはすぐに着いた。
ここが……村?
足が止まった。
冗談だろう?と思う。
それほど、見たこともないものだった。
村というより集落だろうか。荒れ果てている。人が暮らせるなんて信じられないくらいだ。
アセリアとハルムがやって来た小屋ほどではないが、どこもその倍くらいしかない家が、数十軒といったところか。
鶏を飼っている家を通り過ぎ、川から入る用水路に沿って歩くと、用水路のそばで洗濯をしている女性たちの声が聞こえる。
そばを通ると、すっと声が静かになり、こちらを見ている視線を感じた。
これほどの小さい村なら、見知らぬ者は注目されても仕方がないか。
そのまま、店を探すため、村の中央部へ。
村の中央には、広場があった。
広場、といっても、家が建たずに開けているというだけの円形広場だ。
ここらが中心部、か?
店らしきものはないときている。いや、薬師の家らしきものがあるから、実質一つだ。
近くの井戸で談笑していた3人のおばさん達がこちらに気付き、すかさず囲まれた。
「あら、見ない顔」
「美少年じゃないの」
「どこかのお貴族様?」
「あ、」
ここで隠しても仕方がない。何度も会うことになるのだから。
「ここへ越してきた、ハルムといいます」
「あらあら」
「どうしたの?家探し?」
「実は……、服と食事がなくて、困っているんです」
すると、女性達は不躾にもハルムの上から下まで品定めするように視線を走らせた。
「確かにそれじゃあ、生活はしづらいわね」
そこからは、近くにいた男達も加わり、ガヤガヤと大変なことになった。
さて、村人との遭遇。あまり店らしきものはないようで、前途多難です。




