61 必ず成功させてみせますわ!
「では、草を紐でまとめる感じで」
レアクの声が、部屋の中に響く。
「はい」
女性たちが口々に返事をする。
香袋計画で借り受けた小屋は、村の共通倉庫のような所だった。
一つしかない部屋の中には、10人ほどが座れる長方形のテーブルが、4つ。
それ以外には何もないような小屋だった。
部屋の隅の木箱には、ファエンが持ってきた6反の布が立て掛けてある。
そのすぐ近くのテーブルの上に、小さな木箱に入った糸やら紐、リボンの類が大量に入っていた。
今日はそこに、30人ほどの女性たちが集まり、それぞれハーブを乾燥させるための準備に勤しんでいた。
女性たちは、ウィンリーを始めとする若い女性たちから老人まで、かなり幅広い年齢が集まっていた。
そしてそのみんなが、レアクを"先生"と慕う者たちばかりだ。
アセリアもその女性たちにまじり、草を乾燥する準備に取り掛かる。
先程まで一緒にいたハルムは、部屋の中で何かメモを取っている。村長の指示で、試算や管理を任されているのだ。
だんだんと、形になってきた。
思いがけず、アセリアの心の中が熱くなる。
ただ、村を再興しようと思っただけだ。
ただでさえ、あまり裕福ではないこの村で。
畑も活用できないままでは、村が先細りだと思ったからだ。
自分が住むことになったこの村で。
この村の一員として、何か出来るんじゃないかと思ったからだ。
こんな風に、村が沸き立つなんて、考えてもみなかった。
一、二度商人がいつもより多く来たとか、綺麗な布が村に持ち込まれたとか、そんなことで。
香袋を作る女性たちだけでなく、子供や男性も合わせた村全体が、なんだかいつもよりも活気に満ちていた。
窓の外から、大きな声が聞こえる。
「これからは、もっと卵が食べられるんだって!」
少年たちが笑う。
「母ちゃんたちすっげぇ」
「僕たちも何か売ろうよ」
「なんか探せー!」
いつの間にかメモをまとめながら隣にいたハルムが、にっこりと笑う。
「元気ですね」
「ええ。成功させなくてはいけませんわね」
気合いを入れすぎたのか、思いの外優しい目でハルムがこちらを振り返った。
「大丈夫ですよ。香袋は売れます」
「それは……、根拠があってのことですの?」
少しイタズラっぽく聞けば、
「もちろんです。貴族のお嬢様方にはパフュームが基本です。ですが、つけずにいる魅力や、石鹸の匂い談義を聞いたことがあります。自然の匂いは確実に、貴族のお嬢様方にも届くはずです」
もう遠くなってしまったあの世界。
あの世界に馴染む香袋……。
それは、あの世界を知っているアセリアだからこそ作れるものかもしれなかった。
たくさんのハーブの束が、壁に吊るされていく。
女性たちの歓声が聞こえた。
「そうですわ。わたくし、楽しくなってまいりましたわ」
決意を新たにするアセリアなのでした。




