表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/8

6 服を脱がせだなんて、お嬢様はバカなのか?(2)

 これも、だよな。


 緩めたドレスの下に、また交差する紐が腰の辺りまで伸びているのが見える。


 つま先から頭のてっぺんまで、体温が上がるのを無視する。


 ただ、紐を緩めることだけ考えなくては。

 少し夢心地なのを感じながら、紐を解き、緩めていく。


 その服と素肌との間には、もう薄い布一枚だけだ。

 アセリアの背が、微かに震えているのがわかった。

 さっき見てしまったアセリアの赤く火照った顔を思い出す。恥ずかしさに震えているのだろう。

 だから、どうなっても知らないと言ったのに。後先考えずに脱がせだなんて。


 これ以上、触れずに服を緩めるのは不可能だ。

 指先が、薄い布に触れる。布越しに、白い肌に触れる。

 熱いのは、自分の熱だろうか。それともアセリアの熱だろうか。


 今まで、アセリアに触れるほど近付いたことなどなかった。


 それが突然こんな距離だなんて。


「ん……っ」


 ああああああああああああああ……!!!!


 ふいに聞こえたアセリアの声は、聞かなかったことにする。


 もう少し。

 もう少しだ。


 よし……。


「終わりました」

 いつもの顔を保てているとは到底思えなかった。

 身体の熱は、なかなか下がりそうになかった。


 恐る恐るアセリアの様子を見る。

 アセリアも、真っ赤な顔をして俯き震えていた。はだけた肩が細く緩やかな曲線を描いていた。


 そんな顔を見てしまい、こちらは余計に熱が上がりそうだ。


 見なかったことにする。

 アセリアのこれ以上ないほど赤い顔も。火の中の真っ赤な鉄のような自分の中の熱も。


 直視できない。


 ぐりん、と後ろを向く。

「ここまですれば、お嬢様でも一人でどうにかなるでしょう。ベッドでお眠りください。布団はあるようですが、どの程度綺麗なものかわかりません。ドレスは身体に巻いて寝てくださいね。服と食事は明日、どうにかしますから」

 そこまで一気に言ってしまうと、ハルムは突っ立ったまま押し黙る。


「わかりました。そうします」


 背後から、小さな声が聞こえた。いつもの自信たっぷりの声とは違う。まるで、ただの少女のような声だった。

 衣擦れの音に、耳を澄ます。

 聞かないようにするというのは土台無理な話だった。


 ギシ、と大きな音が聞こえ、アセリアがベッドに上がったのがわかった。

 音がしなくなるのを待って、ほどほどの時間をそのままで過ごした後、ハルムはそろそろとアセリアの様子を窺った。

 ベッドの上に、アセリアの背中が見えた。

 背中は思った以上にはだけており、肩甲骨が露わになっている。


 ゴクリ。


 思わず喉を鳴らしてしまう。

 ハルムはもうアセリアにそれ以上近付くことさえ出来なかった。本当なら、布団をかけてやった方がよかったのかもしれないが。


 扉のそばまで行き、扉に寄りかかるようにしながら、そのまま地面に座り込む。

 扉に鍵はついているものの、鍵がどこまで有効かわからないからだ。

 扉のそばにいれば、扉が開いた時にすぐに気付ける。


 ハルムは膝を抱えると、そのまま腕に頭を預けた。

ハルムくんは今夜は寝られなさそうですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ