47 いざ出陣、ですわ!
アセリアとハルムの二人は、籠に入れたハーブを持ち、村の広場まで来ていた。
一緒にいるのは、村長と、畑仕事のまとめ役であるオタルさんだ。
「つまり、豆が土を回復させるので、輪作として、麦、豆、ニンジンを順番に植えるとうまくいくはずなんです。それに加えてもう一年、休ませた方がいい。草を植えて牛に食べさせるのもいいです」
ハルムが二人に説明していく。
こういう説明をするのは、ハルムの方が得意だ。
ハルムは執事の経験もあり、落ち着いた声で分かりやすい説明をする。
「あー……つまり、豆を間に挟めばいいってことか?」
「ですわ!」
そこですかさずアセリアが、得意満面な顔を見せた。
「そんなこと、聞いたことあるかい?村長」
オタルさんに声をかけられ、村長が眉を寄せる。
「農作については詳しくなくて。すまないね」
「豆を買う金は何処から出るんだ?豆に変えた場所は、その年は麦が取れなくなるんだろう?休耕もしてはいるが、そんなに頻繁には出来ない。パンは冬の大事な食料だ。冬のパンが足りないと、人が死ぬ」
その言葉は重かった。
けれどアセリアも、このままでは先細るばかりの村を案じてのことだ。
負けてはいられない。
「豆を使っていない畑に植えれば、少しはよくなるはずですわ。もっといい麦がもっと広い場所で取れるようになれば、今よりも沢山の麦が手に入りますのよ」
カゴの中のハーブを差し出した。
「これを使うのはいかがです?このハーブを他の町に売るんですの。ハーブならたくさんできますし、ハーブはどの町でも使うものですわ。それに、森でイチゴが生えているのを見ましたの。あれを売ればいいんじゃありませんこと?」
すると、村長とオタルさんが、困ったように顔を見合わせた。
「それは出来ないんだ」
「何故ですの?」
「そんな新鮮なものを売るなんて、出来ないんだよ。商人は月一で来るのが精一杯だ。それも、いつ来るか見通せない。何せ隣の町まで5時間かかるからな。それほど定期的には来ないんだ」
「そうですの……?」
「それはおかしいんじゃないですか?」
と冷静な声を上げたのはハルムだ。
「王都からここまで馬車で一晩で着きました。10時間も走ってないはずです。10時間もあれば王都まででも着くはずなのに、5時間かかってやっと隣町とは、どういうことですか」
相変わらずの無表情で、敵意の欠片も感じられない。ただ、現実的な話をしているのが誰からも見て取れた。
「ああ、お二人は、軽い馬車で来たのでしょう。それなら黒い橋を渡れる。商人の馬車は商品が載っている分重いので、黒い橋は渡れないのですよ。川をずっと迂回して、白い橋まで行かなくては」
アセリアはハルムと顔を見合わせた。
確かにここにきた時の馬車は、ルーシエンの持つ馬車の中でも貧相とも言える使用人が使うような馬車だった。
「そう簡単では、ありませんのね」
「そのようですね」
ため息を吐くアセリアに、声を掛けたのはハルムだった。
「まず、橋を見に行きましょうか」
「……諦めませんのね?」
「はい。もちろんですよ。ここで折れるなんて、もったいないじゃありませんか」
かなり貧乏な村ですが、村の改革はうまくいくのでしょうか。




