46 わたくしが畑を生き生きさせてみせますわ!(2)
翌日は、よく晴れていた。
薄い雲がたなびき、澄んだ空気が心地いい。
明るい森に入っていくと、濃くなってきた緑の香りが、爽やかに鼻をつついた。
「オタルさんが言うには、どの森でもハーブは取れるらしいですわね」
「ハーブなら成長も早いですしね。畑の方にも植えれば、売りやすいと思うのですが」
「まあ、探してみるしかありませんわね」
サクサクと草の上を歩く。
散歩にもちょうどいい明るい森だ。
かといって、観光には向きませんわね。宿があるわけでも店があるわけでもない。ここから村を観光向きに育てるのは得策ではありませんわ。
ハルムが、近くで、小さな草を摘む。
「あら、ありましたの?」
「はい。これはマグワート、ですね」
「あら、わたくしにはただの草にしか見えませんわね」
「お嬢様は本ばかりでしたからね。香りや葉の形、覚えてくださいね」
「ええ」
受け取るときに、ハルムの指先が見えた。
あれだけ仕事をしているのに、綺麗な指先ですのね。
「チャイブやタイムもありますね」
それらのハーブは、明るい場所に生えていた。
昔誰かが植えたものが、野生化したようにも見えた。
「これを売って、豆を手に入れることが出来ますわね?」
「そうですね。きっとあの商人も、豆を手に入れてきてくれることでしょう」
「あら?」
その時だった。
明るい森の奥の方に、陽光をふんだんに受けた広場のような場所があった。
「綺麗な場所ですわね」
「ええ。そうですね」
何か白いものが揺れた気がして、早足でそこへ行き、足元を探す。
「これは……」
しゃがみ込みよく見ると、それは陽光に照らされ小さく咲く白い花だった。
これなら分かりますわ!図鑑で見る時も特殊ですし、刺繍のモチーフに使うこともありますわ。
「イチゴ、ですわ」
スカートを握りしめ、立ち上がる。
「ハルム!見てくださいませ!」
呼びかけると、ゆっくりと歩いていたハルムが、ふっと微笑んだ。
あら、ハルムもやっぱり、苺の発見が嬉しいんですわね。これが実れば、売れるかもしれませんし、スイーツも作れるかもしれませんものね!
「ほらほら!はやく!」
足踏みをして追い立てると、ハルムが小走りでやって来る。
「ほら!この辺り、花が咲いてますわ!これ、イチゴですわよね」
「そうですね」
それはいつもと同じ言葉だったけれど、やはりどこか嬉しそうに聞こえた。
「たくさん実ったら売れますかしら!ハルムはケーキを作れまして?」
すると、ハルムがちょっと面白そうに苦笑する。
「作れるわけないでしょう。私は、執事ですよ?さすがにパティシエの真似事は出来ません」
「そうですかしら。ハルムならなんでも出来そうですのに」
そう言って笑いかけると、なんだちょっと眩しい笑顔で、ハルムがまた笑った。
どちらの自覚もないかわいいデートのワンシーンでした!




