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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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43/60

43 新しい服はいかがですか、お嬢様

 頭の中で、昼の光景が思い起こされる度、大声で叫びたくなる。


 アセリアの、透けて見える身体のライン。

 恥ずかしがる表情。

 必死に隠す手と、それでも見えてしまう胸元や腰のライン。


 思い出す度に、感情を全て押し殺さないといけなくなる。

 できるだけ無表情で。

 できるだけ何事もなかったように。


 それでも、幾度となく思い出してしまい、自己嫌悪に陥る。


 あの商人、今度会ったらただじゃおかないからな。


 そのせいで、今日はアセリアに対して、おかしな態度になってしまった。

 いつも以上に、言葉が少なかったんじゃないかと不安になる。……いつだって、会話なんてしてこなかったのに。

 いや、二人で暮らさないといけなくなったこの状況では、会話が必要なのは当たり前だ。


 自分に言い聞かせながら、食事を待っているアセリアを盗み見る。

 アセリアは、部屋の中だからだろう、シャツ一枚で過ごしている。


 確かに、貴族のドレス用の薄い下着と比べれば、薄くもないし身体のラインも出ていなくて、随分と守られているように感じる。

 けれど、キルトに包まっていた頃と比べても……。


 脚が出ている範囲は大きい。

 座ってもふくらはぎ辺りまですっかり隠れていたキルトと違い、シャツはどうしても膝下辺りまでしかない。

 それも、素足をそのままに椅子に座っているので、膝がまるっきり出てしまっている。

 元とはいえ、公爵令嬢だったのなら、もっと気にかけて欲しいものだ。

 ……目のやりどころに困るだろうが。


 その脚をチラリと眺め、いけないと視線を逸らす。


 下着で寝る状態を手放したことを、少なからず残念に思っていたわけだけれど、これはこれで……。


「あ、うぅん……」

 誰にともなく誤魔化すように小さく唸った。




 あまり眠れない夜を過ごし、朝、ベッドで目を覚ましたアセリアを眺めた。

「ん〜〜〜、いい朝ですわね」

 とアセリアが言ったのは、社交辞令というわけではない。

 窓からは、暖かな陽射しが差し込んでいる。


 着替えを見ないようにキッチンへ隠れ、頃合いを見計らって部屋へ入る。

 やっとアセリアの着替えもスムーズに進むようになってきて、時間を見計らって行動する、なんてことが出来るようになったところだった。

 エプロンも、自分でつけられるようになっていた。


「髪を整えてもいいですか?」

「あら、珍しいですわね」

 少し恥ずかしそうにした顔を見せる。

「ええ。たまには」


 戸惑いながらも椅子に座ったアセリアの髪を指で掬う。

 香油などはないながらも、水は豊富に使えるため、まだそこらの貴族よりも綺麗な金髪だ。

 下の方から、丁寧に梳かす。


 そしてハルムは、慣れないながらも、その滑らかな金髪を三つ編みに結っていった。


 仕上げに、昨日ついでに買った赤いリボンを結びつける。


「あら、このリボンはどうなさいましたの?」


「昨日の商人から買ったものですよ」


「わたくしの、ために」


「はい」


 余計な気持ちが出ないよう、出来る限り無表情で応える。


 アセリアはそんなハルムに、

「ありがとう、ハルム。嬉しく思いますわ」

 と照れた笑顔を見せたのだった。


 なんだよ、それ。


 まさかそんな顔が、見られるとは思いもせず。


 心の奥に、静かで温かなものが込み上がる。


 ボタンの一つや二つ、惜しくないと思える。


 この位置ではアセリアに顔を見られることがないことだけが、ハルムにとって小さな救いだった。

まさか踊り子アセリアの赤のイメージが忘れられなくて赤のリボンを贈ってしまったとか?まさか!そんな!

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