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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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40/62

40 買い物にいきますわよ!(1)

 コンコン、とその日の朝、小屋の扉はノックされた。

「まあ、どなたですかしら」

 こんな小屋といえど、訪問者が来るのはちょっとワクワクしてしまう。

 仕事のときの無表情でいるハルムが、すかさず扉へ向かう。


「どちら様ですか」

 ハルムが、扉を開ける前に声を掛ける。

 なるほど、ああすれば知らない人に扉を開ける必要がなくなるわけですわね。


 優雅にスープを飲みながら、ハルムの様子をうかがう。まあ、おわんから直接すするのでも、やりようによっては優雅に見えるはず。


「あたし!」

 扉の向こうからは、予想外の声が聞こえてくる。

「ウィンリー!」


 少し柔らかい雰囲気になったハルムが、嫌々ながらも扉を開ける。

 確かに執事としては、主人の食事中に来訪者の扉を開けるのは嫌だろう。


 ギ、ギギ、ギーィ。


 建付けの悪い扉が、いつも以上に悲鳴を上げながら開く。

「アセリアちゃん、アセリアちゃん!」


 ウィンリーがアセリアに飛びつくように駆け寄ってきた。

 この人懐っこさにも少し慣れてきた自分を不思議に思う。


「今日は商人が来る日だよ!」




 かくして、二人は村の広場へと向かったのだった。


「これほどの人が、この村にいたのですわね」

 アセリアが感心するほど、広場は人でごった返していた。

 娘たちが新しい服を見せ合い、キャアキャアはしゃいでいる。珍しい食材に目を輝かせているおじさまがいる。いつも畑にいるオタルさんも、新しいクワに興味津々だ。


「あの辺り、ですかしら」

 広場の中心はより一層人だかりが出来ていて、近付くのも一苦労。

 どうやらその中心で、商人は店を開いているらしかった。


「見えません、わね」

「そうですね」


 これまで、買い物といえば家に来てくれるものだった。

 自分から商人に出向くなんて初めてのことで、どうすれば商品が見えるのかもわからない。

 二人でぽやっとしてしまっていると、ウィンリーが、

「いきましょ!」

 と声を大きくして、人垣に突っ込んでいった。


「ああするんですのね」

「じゃあ、いきましょうか」

「わたくしは行きませんわよ?」


 ハルムもあの人垣に少し引いているのか、あまり強くは言って来ない。


「何してるの!早く!」

 強引なのはウィンリーの方だった。

 人垣の中に、比較的背の高いバルドも見える。

 行くしかないですかしら。

 アセリアがウィンリーの方へ向かった瞬間、アセリアのすぐ隣に立ったのはハルムだった。


「仕方ありませんね。私が守るので、お嬢様はどうぞいつも通りに」


「え、ええ。お願いしますわ」


 戸惑いながらも、前へ進み出る。

 思ったよりも、周りの人はアセリアたちを避けてくれた。

「おはよう、お嬢さん」

「兄ちゃん、おはよ」


 思ったよりも、なんてことありませんのね。


 そう思い、気を抜いた瞬間だった。

 ボールを持っていた村民の一人の手が、アセリアの方へ振り下ろされたのだ。


「きゃぁっ!」

 思わず目を閉じる。


「ぅ〜〜〜〜〜〜〜〜……」


 そうですわよね、こんな場所ですもの。事故も暴力沙汰もまったくないわけありませんものね。それにしても痛いのは嫌ですわ。ハルムは守ってくださると言いましたけど、ハルムは腕力はあまりありませんもの。無理なこともありますわ。それにしても、手が振り下ろされるのが遅いですわね。


 恐る恐る目を開けてみれば、目の前にあったのは、ハルムの手だった。

 ハルムの手は、ボールを持った腕を掴んでいる。


「危ないですね」


 振り返ったその腕の持ち主である男性が、

「おおっと。悪い悪い」

 とボールを持っている腕を引く。


 ハルムの胸が。腕が。すぐそばにある。


 ち、近いですわね。

 けど本当に……、守ってくださったのですわね。ハルムが。


 アセリアは、そっとハルムの顔を覗き見る。

やっと、服やらスプーンやらが買えるのでしょうか!お金はないですがね!

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