表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/61

38 別に静かだって、なんとも思いませんわ

 二人で歩く道は、静かだった。


 二人とも無言なのは、慣れっこのはずだ。

 今まで隣で勉強をしていても、雑談などしたことはなかった。

 アセリアが話しかけることも、ましてやハルムが話しかけてくることもなかった。


 今だって、それと同じ、はずだ。


 けれど、ハルムは黙りこくったままなのが、ただの無言ではないのではないかと、アセリアは思う。


 確かに、勝手に小屋を出ていったことには、ハルムだって怒るかもしれませんわ。けど、それはハルムがわたくしではなく子供を選んだからですもの。


 けど、それにしたってなんだか……空気が硬い気がするのだ。


 小屋に戻れば、このパンで食事が出来るというのに。


 土の道を歩く。

 暖かな空気が、アセリアの頬を撫でる。


 静かな丘の上で、小屋が見えてきた。

 その時だった。


「この粉は、どうやって手に入れたんですか?」


「あら、それはですわね、わたくしが木の実を拾ってそれと交換したんですの」


 そうですわ!わたくしだって役に立つところを見せなくては。


「……一人で、ですか?」


「ウィンリーと一緒でしたわ」


「そうですか」


 ハルムがほっと息を吐く。


「なんですの?わたくしだって、一人でも出来ることはありますわ。そこまで心配なさらないでくださいませ」


 確かに、公爵令嬢だった頃は、王子の婚約者だったこともあって、過剰に生活は管理されていた。管理していたのはもちろんハルムだ。

 けれどもう、公爵令嬢ではない。一人で出歩くことの危険はあれど、それは他の村の女性たちも同じだろう。

 土地に慣れていないとはいえ、そこまで心配するようなことではないのに。


「そうですね」

 ハルムは、仕事の時の無表情で遠くを見た。


「けど、するんですよ」


 そう呟く声を聞いたのは、気のせいではないと思う。


 ハルムだってこの生活は初めてですものね。今まで管理していた側なら、不安にも思うはず、ですわ。


 青い空に雲が流れていく。




 その日はいつも通り、パンとスープを食べた。

 午後はいつも通り、畑仕事やベリーを探しに出かけた。


 夜、寝る前に、ハルムが、

「ありがとうございます。パンを手に入れてきてくださって」

 と、静かに言った。


 それはなんですの?嬉しいんですの?


 表情は読めない。


 いつも通りに下着姿で布団に包まったまま、ハルムが動く様子をそっと眺めた。

 いつも通り、テキパキと動いている。

 その顔は無表情……というより、何を考えているのかわからない顔だ。


 何を考えているのか不思議に思うのは、初めてのことかもしれませんわね。


 ずっと一緒だったから。ずっと無表情だったから。ずっと言葉を交わすことなんてなかったから。


 そしてアセリアは眠りに落ちる。

 ただ、星に包まれるような夢を見ながら。

ハルムは執事としてもきっと有能だったのでしょうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ