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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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34/63

34 お嬢様を見かけませんでしたか?

 慎重に足元を見ながら、屋根の上を歩く。

 今にも割れそうな瓦に足をかけ、そっと歩く。

 なかなか届かないところにあるものだな。


 これまで、色々なことをやってきたつもりだった。

 けど、さすがに屋根修理は庭師や大工の仕事で、自分が屋根修理をすることになるとは思ってはいなかった。


 とはいえ、この小屋だけが頼りなのだ。

 アセリアを守るための。自分を守るための。


 なんとかバランスを保って、手を伸ばす。

「いいですよ」

 すると少年が、薄い石を渡してくれる。

「はい」


 水が入らないよう組み合わせ、なんとか家の屋根にする。


「これでいいですかね」 

 なんとか梯子を辿り、下へと降りる。

 下へ降りている間にも、庭での酒盛りは盛り上がり、大きな声が飛び交う。

「お、やったか兄ちゃん!」

「チビもよくがんばったな!」


 アセリアを登らせなくてよかった。

 あの危険な屋根の上でアセリアをフォロー出来る自信はない。万が一落ちたら大変だ。

 それに、このおっさんたちの前で、スカート姿のアセリアを登らせるわけにはいかなかった。


 トン、と地面に足を着ける。

 振り返ると、アセリアの微笑みが目の前に見られる……はずだった。


「……お嬢様?」

 アセリアの姿が見当たらない。小屋の中だろうか。ここは騒がしいから。

 扉を開けて小屋の中を一通り見渡す。

「お嬢様?」

 いない。


 サッと顔が青くなる。

 胸騒ぎがする。


 居場所がわからないなんて、ここに来て初めて……、いや、ルーシエンに雇われてから初めてのことだった。


「すみません、お嬢様を知りませんか?」

 庭にいる人々に聞いてまわる。けれど、

「知らないネェ」

「あのお嬢ちゃん誰か見たか?」

「いんやぁ。けど、そのうち帰ってくるだろ」

 なんて返事しか返ってはこない。


 小屋の周りには居なさそうだった。

 もしかしたら、村の方へ行ったのかもしれない。


 自然と足が速くなる。


「なんで……、どこに……」

 キョロキョロと辺りを見回す。


 あれでももう18歳だ。子供なわけじゃない。ほっといても大丈夫だ。


 自分に言い聞かせるけれど、足は勝手に速くなるばかりだ。


「アセ……リア……」


 つい、名前を呟く。

 思わず声に出てしまったことに気付き、慌てて、


「お嬢様!」


 と声を上げた。


 広場を一周し、川の見える場所まで走る。

 途中途中で、村民たちに声をかけ、見てはいないという返事を貰う。


 村はずれの牧場まで走り、行き違いになったかとまた小屋の方まで戻ってくる。


 見当たらない。


「はぁ……はぁ……」


 息を整え、まだ昼にもなっていない太陽の下で、短い影を踏む。


 アセリアは、何が好きだっただろう。一人になった時、行こうとする場所はどこだろう。

 8年も一緒に居たのに、そんな簡単なことすら思いつくことも出来ず、途方に暮れる。


 少しでも高い所と思い、辿り着いた丘の上で、木に手を突き、辺りを見渡した。


「お嬢様…………」

まだ、アセリアは迷子中ですね。何をしているのでしょうか。

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