33 今度は屋根修理ですわね!任せてくださいませ!(2)
「なんでですの?」
と言ったアセリアに、ハルムは、
「どうしてもですよ」
と返事をしただけだった。
周りに居たおじさまたちから、
「おーぉ」
と冷めた声があがった。
ハルムが静かにそちらをじっと見ると、おじさまは気まずそうに、
「いいじゃねえか。減るもんじゃなし」
なんて言う。
ハルムが、屋根に登っていく。
屋根に当たる陽の光が、視界に入り、とても眩しい。
しばらくすると、頭上からハルムの声が聞こえた。
「ところどころ、瓦が割れてるところがありますね。何か石を探して、埋めたほうがいいかもしれません」
「そうですの」
しばらく経つと、スルスルとハルムが降りてきた。
「さすがに余分な瓦はないので。何か、水に強いもので埋めないと」
少しだけ不満に思っていた気持ちをなかったことにする。
きっとハルムだって、屋根の上に二人は危ないとか、そういう理由ですわよ。
そこへ、後ろに居た子供が声を上げた。
「薄い石なら、河原に落ちてるよ」
と、持っていた石を見せてくれる。
それは、どこかの地層から落ちてきたような薄い岩のような石だった。
「確かに、これなら応急処置にはなりますね」
「じゃあ、これから拾いにまいりますわね?」
やっとやることが出来たと、ワクワクしながらアセリアが言う。
けれど、子供があっさり、
「僕たち、もっとたくさん持ってるよ。あげるよ」
と何処かへ走って行ってしまった。
「拾いに……まいりませんわよね」
「そうですね。あの少年を待ちましょうか」
「そう……ですわね」
小屋の庭は、酒まで煽りやんややんやと騒がしい。
柵に飛んできた小鳥も、あまりの騒がしさにすぐに飛んでいってしまう。
「これだよ!」
と先ほどの子供が、すぐに石をいくつも抱えて走って来た。
「そんなに走っては危ないですわよ」
声をかけると、
「へへっ」
と嬉しそうに笑った。
「兄ちゃん、上に行ってなよ。オレ、ポッケに入れてるから、少しずつ持って上がるよ」
あら。それは心許ないですわね。ハルムだって許すはずありませんわ。
なんてタカを括っていたところ、ハルムが、
「じゃあよろしくお願いしますね」
なんて梯子を登っていく。
あら?
ハルムが登り切ったあと、子供が後に続いた。
あらあら?
上を見上げる。
両耳に、また騒ぎ立てている村民たちの声が届く。
「よぉーし、がんばれよ!チビ」
「兄ちゃんちゃんと見てるんだぞ!」
なんですの?
なんでですの?
あの小さな子供より、わたくしの方が、頼りないなんて思われましたの?
アセリアは、そんな光景をいつもの微笑みで眺めた。
そして、ひとしきり眺めると、くるりと後ろを向いて、その微笑みのままに庭を出ていった。
背後では、屋根の上でハルムと子供が屋根の修復作業に精を出していた。
まだ小屋が眺められる小高い丘の上で振り向くと、アセリアは黙ったまま小屋の光景を眺めた。
そしてまた、村の方へと一人、歩いて行ったのだった。
ハルムが怒った理由なんて、なかなかアセリアに届かなそうですね。




