27 害獣には負けられませんわ!(3)
アセリアはぎゅっと目をつむる。
もうダメですわもうダメですわもうダメですわ!やっと明るくなってきた人生もここでお終いですの!?ああ、なんだか身体が安らかな気持ちになってきましたわ。なんてあたたかい……。
ふっと目を開ける。
目を開ける、と、そこに見えたのは、誰かの腕だった。
「!?!?!?」
こんなに近くに誰かの腕なんて見たことありませんわ。ダンスの時だって……。
つまり、それはダンス以上に誰かに密着している証拠だった。
温かい腕。
わたくし、腕に抱かれていますわね……?
アセリアは視線を上げる。
他でもない、ハルムの横顔。
ぽぽぽぽぽっと顔が熱くなるのを感じる。
ハルムは、アセリアを庇うように抱きしめ、害獣と対峙していた。
なんですの、この状況。
ハルムはわたくしを守ろうとして?
そんな……!騎士ではなくただの執事ですのに……!
「わ、わたくしも戦いますわ……!」
ガバッと自分の足で立ち、害獣をこの目に収めようと鋭い視線を投げかけた。
「あら?」
巨大な動物が牙を剥いているんじゃ、なんて想像したけれど、そんなものはどこにもいない。
「あらあら?」
目の前にいるのは、目を閉じて倒れている小型の動物だけだ。
アセリアでもなんとか抱えられそうな小さな動物。
「……死んでますの?」
「いえ、私は何もしてないのですが」
「これが、リーフですの?」
「はい。おそらくは」
じ……っと見ていると、リーフはひょこんと顔を上げた。
死んだふりでしたのね?
目が合い、お互いにびっくりしていると、リーフは恐る恐る森の奥へと帰っていった。
もふもふの尻尾を揺らし、人間のいない長閑な森の奥へと。
「ふっ」
なんだかおかしくなる。
「なんですのあれ。愛嬌のある動物ですわね」
ハルムが、アセリアの顔を驚くような目で見て、ふっと緊張を緩めた。
「そうですね。けど、あれがたくさんいたら、確かに作物は根こそぎ持っていかれそうですね」
「そういうことのようですわね」
一件落着、と呼ぶには、アセリアの背中に感じるハルムの手のひらが気になった。
「あの……ハルム」
「なんですか」
「近過ぎませんこと?」
「あぁ」
お互い何でもないように、足を後ろに一歩引き、向かい合ったままゆっくりと離れた。
お互い顔は赤かったけれど、それはお互いに見なかったことにした。
「あはははははは」
ウィンリーと合流し、そのことを尋ねると、ウィンリーは大きく笑った。
「そうよ。それがリーフ。怖くはないんだけど雑食でね。食料を放置してしまうと必ず取りにくるわ」
「そうでしたのね」
アセリアは、あの愛嬌のある動物を思い出す。
「面白い動物でしたわ」
「まぁね」
とウィンリーが頷いた。
「またご一緒してよろしいですかしら」
ドキドキしながら尋ねると、ウィンリーは、
「もちろん」
と笑った。
初めてのお友達、ですかね。




