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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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26/60

26 害獣には負けられませんわ!(2)

「ほら、どうぞ」

 と、ハルムは一粒リンゴンベリーを摘み、アセリアの手の上へ落とした。


「綺麗ですわ」

 口に入れようとして躊躇する。


「大丈夫ですよ」

 摘んだリンゴンベリーをハルムが口に入れた。

 その瞬間、ハルムの表情が崩れた。

 なんだか嬉しそうな、少し楽しそうな顔だ。

「酸っぱいですが、食べられます」


「え、ええ」

 ハルムがこんな顔をするなんて、初めて見ましたわ。……酸っぱいものが好きなんですの?


 なんだか、リンゴンベリーより珍しいものを見た気持ちになる。


「じゃあ……わたくしも……」


「はい、どうぞ」

 とハルムが、リンゴンベリーの一粒を、アセリアの口元に持ってきた。

「!?」

 ハルムの指先が、口元のそばにある。

 ぱーっとアセリアの顔が赤くなった。


「な……っ、さすがに一人で食べられますわ」

 プイッと横を向くと、ハルムが、

「えっ、あぁ……」

 と気まずそうに手を引っ込めた。

 ちょっと顔が赤くなっている。


 ここに来るまで、ハルムと食事なんてしたことはなかった。勘違いしたのだろうか。

 さすがのアセリアでも、口に食事を運んでもらったことはない。


 頬をさすり、早く落ち着くよう、自分に言い聞かせた。


 ハルムの様子をこっそり窺うと、ハルムも違う方向を向いているのがわかった。

 こちらを見ていないなら、この顔も見ていないに違いありませんわ。


 火照った顔が冷めるように、遠くを見やる。

 雲が、遠くへ流れていく。

 こんなに青い空を見たことが、果たしてあっただろうか。

 空はいつだって、窓の外にあるものだったから。


 手の中にあるリンゴンベリーの実を口へ運んだ。

「酸っぱい、ですわ」


 ハルムが、ひょこっとこちらを見た。

 目が合ったことがなんだか楽しくて、「ふふっ」と笑った。


「たくさんありますわね」


 新たな気持ちで、辺りを見渡す。

 もう、昔のわたくしじゃありませんわね。


 赤い実を指で摘み、一つ、取ってみる。

「綺麗な実ですわね」


「ええ。たくさん採っていきましょう」




 ポケットがほどほどのリンゴンベリーで埋まる。

「これくらいにしておきましょうか。なくなると私達も、肉を交換できなくなってしまいます」

「そうですわね」


 そこでアセリアは、木の上に、何か影を見つけた。

「あら……?」


 それは、動物のようだった。

 けれどリスほど小さくはない。猛獣がこの辺りにいるなんて聞いていない。そう、リーフ以外は。


 まさか、リーフ……?


 どんな動物だかわかるほどは見えない。

 けれど、確かにガサガサと自然の草花ではあり得ない音が聞こえている。


 襲われて、リンゴンベリーを盗られてしまうのかもしれない。もしかしたらもっと危ないことが……例えば、リーフは人間も食べるのだとしたら。


「お嬢様、ゆっくり後ろへお下がりください」


 状況を見たハルムが、すかさずアセリアの前に立ってくれる。


「え、えぇ」


 ハルムは、戦えるだろうか。わたくしは……?


 リーフがいるらしき木と対峙する。


 しばらくじっと木を見ていると。

 突然、ブワッ、とその木から影が飛び出してきた。

 影は真っ直ぐに、アセリアの上へのしかかってくる。


「きゃああああああ!」

「お嬢様……!」

次回はリーフ襲来ですね。

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