24 卵はきっと手に入れますわ!(2)
広場というのも名ばかりで、この舗装もされていない村の広場は、ただ場所が開けているというだけだ。
ただ、片隅には井戸があり、人が集まりやすいのだろう。
お喋りをしている女性達の周りで地面に絵を描きながら遊んでいる子供達の姿が、妙に景色に馴染んでいて、これが毎日の光景なのだと感じられる。
お年寄り達が散歩をしている。
何処からか、麦の香りが漂う。
歩きながら、アセリアとハルムは推理を始めた。
推理をする、というにはあまりにも長閑な風景過ぎるけれど。
「卵と牛乳、というからには、何か焼き菓子なんじゃないかと思います」
そう推理したのはハルムだった。
「焼き菓子の材料が揃っている、ということ?」
「そうです。小麦粉、卵、牛乳や牛乳から作るバターなどが材料になるはずです」
「そうですの。それなら、その可能性はありますわね」
ふむ、とアセリアは顎に指を添える。
「ハルム、お菓子は作ったことありますの?」
「ありませんね」
ハルムはいつもの無表情の顔だった。誤魔化そうとしているようにしか見えない。
その時、
「お菓子を作るんですか?」
と後ろから声がかかった。
アセリアが、
「きゃっ」
と飛び上がり、ハルムがアセリアを庇うように立ちはだかった。
「何かご用ですか」
ハルムの目が鋭くなる。
確かに、執事だけれど、目の前にいるのは同じ年頃の女の子。
三つ編みにしたおさげの髪。同じような服。同じようなエプロン。
どう見ても危険人物ではなく、この村の娘さんだ。
「大丈夫ですわ、ハルム」
手を下げさせ、その娘さんと向かい合う。
「失礼いたしました。わたくしは、アセリアですわ」
すっかり怖がってしまったその娘さんは、おずおずと名乗る。
「あたしは、ウィンリー。……ごめんなさい、突然後ろから」
アセリアは、すかさずツンと上を向いた。
「謝罪を受け入れますわ。どうぞお気になさらず」
丁寧に返答したというのに、ウィンリーは更に恐縮してしまったようだった。
「ふむ」
アセリアは一つ息を吐く。
「違いますの。わたくし達、オエグさんのお気に入りの“甘いもの”を探し出して、卵をいただきたいのですわ」
「ああ!」
そこでやっとウィンリーはパッと明るい顔に戻る。
「オエグさんのところへ行ってきたのね。あの人、好物には目がないの。一番はブラックベリーなんだけど、今の時期なら残っているリンゴンベリーかしら」
「リンゴンベリー……。赤い実ですわね」
「リンゴンベリーの畑があるんですか?」
「違うわ。森へ入るのよ」
森。
確かに、この村は森に囲まれている。
明るい林や森ばかりで、水も豊富。
小さな果物も取れるのだろう。
「森へ行けばいいんですのね」
意気揚々と歩き出したところへ、
「ちょーっと待った」
ハルムがアセリアを後ろへ引き戻した。
「きゃうっ!……なんですの、ハルム」
「森は、安全なんですか?動物とか」
ハルムがそう尋ねると、
「ああ……。動物。動物ねぇ」
ととぼけようとするウィンリーの姿があった。
どんな動物がいるのでしょうか。




