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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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125/143

125 そんな話は聞きたくないです(1)

 アセリアは、昼食の時間を過ぎても、なかなか帰ってこなかった。

 子供たちの声が、ハルムの頭の中で響く。

『やっぱデートだって。花持ってたもん』


 デート……ダンスの誘い……。


 帰ってこないところを見ると、アイツの申し出にアセリアが承諾し、そのままデートになった、ということだろう。


「…………」


 イライラする。

 今どこで。

 誰と。

 ……何してるんだよ。


 “デート”という言葉に、ついよろしくない想像をしてしまうが。ちょっと待て、俺。

 二人は恋人というわけじゃない。

 今までそんな気配すらなかった。


 たかが。

 たかが、ダンスを一緒に踊る約束をしただけだ。


 ガンッ。


 思わず、テーブルにフォークを刺してしまう。


 そのフォークを握りしめたまま、ズルズルとテーブルに突っ伏した。


 良いわけない。

 ダンスだって、デートだって、良いわけない。


 今すぐ探し出して、殴りつけてやりたいのに。


 昼食用に準備した皿の上のニンジンが、頭で押し潰された。




 結局、アセリアが家に戻って来たのは、夕方に差し掛かり、夕陽が庭を赤く染め出した頃だった。

 ギギギ、ギ。

 相変わらずの音を立てて、扉が開く。

「送っていただいて、感謝いたしますわ」

 明るい声が聞こえた。


 相手のことは見えないが、どうやら誰かと一緒だったらしい。

 ウィンリーだと、ここまで送って来ることはない。

 なら、やはりアイツか。


 ドス黒い感情を押し込める。


 アセリアが、扉を閉め、こちらを向く。

「おかえりなさいませ」

 ハルムは、いつもの無表情でアセリアを迎えた。


 アセリアはじっとこちらを見て。

 そして、

「ただいま帰りましたわ」

 と穏やかな声で言った。


 なんだ、その間は。




 それから、食事の用意をする間、アセリアはこちらを見ているようだった。

 何か言いたいことがあるみたいに。


 ……聞きたくはなかった。

 だって、アイツと会った後に言わなくてはならないことなんて、一つに決まっていた。


 明るい顔で、

『バルドとダンスを踊ることになりましたの』

 なんて言われてみろ。

 正直、俺はどうなってしまうかわからない。


 けれど、悪い妄想は止むことがなかった。

 事あるごとに、脳内のアセリアが嬉しそうな顔をする。

『バルドと食事をしましたの』

『あの方、とても優しい方ですのよ』


『執事のあなたとは、大違いですわね』


 いや、アセリアはそんな事言わないだろ。

 例え、そう思っていたとしても。

 俺はただの執事で、アイツが村で出会った頼り甲斐のある男であることは、間違いないだろうから。




 けれどあまりにもアセリアがこちらを見るものだから、ハルムの方から尋ねるしかなかった。

 自分でももう、結果が知りたいと思ってしまったのかもしれなかった。

 早く判定を聞いて、この時間を終わりにしたい、なんて。


 だからハルムはアセリアにこう聞いたのだ。


「収穫祭のダンス、お相手はもう、決めてありますか」

ハルムくんの嫉妬回。まあ、突然出ていってこれなら、それはそう。

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