124 大切なお話(3)
やっと涙が収まってきた頃、目の前に居るのは、バルドとウィンリーだった。
そんな風に見られると困ってしまう。
目を泳がせる。
けれど、これだけは言っておかなくては。
「わたくし、バルドの申し出は受けられませんわ。どうしても……その……、ハルムがいいので」
バルドは少し面食らった顔をしたあと、
「くはっ」
と苦笑した。
「そりゃあ、相手がいる奴にプロポーズしたのは申し訳なかったけどさ。そんなに泣かせるつもりはなかったんだ」
「あ、相手なんていませんわ」
「え?」
バルドとウィンリーが固まる。
「ハルムは……、ただの執事ですもの」
「ただの執事……。ただの執事?」
バルドが困惑した声を出した。
「わたくし、婚約破棄されてしまいまして、家を追い出されましたの
」
「婚約破棄って……どうして……」
ウィンリーが心配そうな顔でずずいっと寄ってきた。
「お相手の方に、新しい婚約者ができましたの」
「なにそれ、浮気じゃない……」
「まじか……」
「それで、その責任を取るために」
バルドとウィンリーが、2人揃って「んん?」という顔をした。
そうですわよね。格下が責任を取らなければならない常識など、ここにはありませんわよね。
「ハルムは、わたくしの執事だったせいで、同じように追い出されてしまって一緒にここへ。それ以上の関係はありませんわ」
「まったくの主人と執事だと?」
「ですわ。わ、わたくしがちょっと……、特別に思ってしまっているだけで……。それ以上はまったく何も」
「何も……」
二人が呆気に取られる。
「アイツも……可哀想なやつだったんだな……」
「ここまで届いてないなんて……」
バルドが、溜まった空気を吹き飛ばすように手を振る。
「まあ、アイツがいいっていうんなら、俺は味方だからさ」
そう言われ、バルドの顔を見上げる。
太陽の光に照らされ、明るく笑っている。
……やっぱり、いい方、なんですわよね。
「まあ、どうせ俺以外に二人にちょっかい出すやつなんてこの村にはいないだろうし。どうせ、ダンスも仲良く踊るんだろ?」
思わず、バルドの顔をキョトンと見てしまう。
「特に、そういう予定はありませんわ」
「なんですって!?」
「なんだと……?」
ここまで来てとうとう、二人の眉の動きがシンクロした。
それを見たアセリアが、パチパチとまばたきをする。
「嘘だろう……?なんで……。まさか、俺に遠慮してるのか……?」
「違うと思う」
なんで、なんて言われると悲しくなる。
ハルムにとって単純に、アセリアと踊りたいなどという不純な気持ちが湧かないからでしかないのだから。
「かまいませんわ」
アセリアが笑ってみせた。
「わたくしの方から、誘えばいいことですもの」
さて、とうとう自覚したアセリア。果たしてハルムを誘えるのでしょうか。




