表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/133

121 いつも通りの日のはずだった

 その日、朝からアセリアの様子がおかしかった。

 久々の休日。

 今日は全員、畑仕事は休みとなっている。


 それなのに、アセリアは朝から少し気を張った顔になっていた。

 まるで、夜会の日の朝みたいだな。


 ハルムは、ふと、そんなことを思う。

 思い出すとは思わなかった。

 あまり主人の表情なんて見てはいなかったから。

 体調管理は薬師の仕事。見た目を整えるのはメイドの仕事。

 俺の仕事は、主人のスケジュールを管理すること。


 けれど、確かに重要な仕事の前は少し気を張った顔をしていた気がする。

 貴族の娘にとって、夜会は戦場だった。

 アセリアにとっては、さらにビジネスの場。

 婚約者に会うというのに、それほど明るい顔を見せたことはなかった気がする。


 ……いや、婚約者に会うから、か?


 相手は一国の王子。

 婚約者に会うのに緊張もしていたことだろう。

 それだけ、アセリアにとって大切な相手だったということだ。

 あれでいて、少女らしい気持ちもあっただろうから。


 婚約──。


 自分でそんなことを思っておいて、自分の心に突き刺さる。

 こんなこと、あの頃は考えたこともなかったんだがな。


 そしてその朝、

「では、出掛けて来ますわね」

 アセリアは一人出掛けて行った。

 きっと、誰かと約束でもあったのだろう。

 ……あんな、緊張の顔を見せる誰か。

「いってらっしゃいませ」


 頭を下げる。

 それ以上問い詰めることは出来なかった。アセリアも、何も言わなかった。


 窓の外、アセリアがキビキビと歩く後ろ姿が見える。

 そして、誰かがアセリアに近付いてくる。


 バルド……?


 そしてあろうことかアセリアは、その男と二人、連れ立って歩いて行ったのだ。




 雲が流れる。

 少しすれば戻ってくるんじゃないかと思ったが、アセリアが帰って来ることはなかった。


 探し回るわけにもいかず、ハルムはただ、手持ち無沙汰で家を出る。

 ……何をするか考えられもせず、川沿いに立った、その時だった。


「ハルムじゃん」

 近寄ってきたのは、いつもアセリアと一緒にいる広場の子供たちだ。

 アセリアもこの子供たちを気に入っているらしく、食卓での話題にも、時々のぼることがあった。


「ごきげんよう」


 正面にいた少年が、ソワソワとこちらを見る。フィンとかいったか。

「奥さんは?」

「…………」


 そう気軽に夫婦扱いされるのも困るけれど。

 もう否定する確固たる理由もないような気がして、そのままスルーすることにする。


「お嬢様ですか?まだ外出中ですが」


「そ、そっかぁ〜」

 フィンの目が泳いでいる。

「……何かご存知なのですか?」

「あ、いや。ただ……」

 年長組が顔を見合わせる。


 嫌な予感がした。


「バルドがさ、アセリアちゃんは旦那さんがいるって知ってるけど、……どうしても収穫祭でアセリアちゃんと踊りたいって言って」


 その瞬間、心臓が凍りつく音がした。


 子供たちがざわめく。

「やっぱデートだって。花持ってたもん」

「でも、アセリアちゃんとは踊れないよ?」

「結婚相手じゃなくても出来るって言ってたぞ?」


 なんだそれ。

 頭が……クラクラする……。

アセリアはどこにいるのでしょう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ