119 わたくしのダンスのお相手は(1)
「ずんたった〜ずんたった〜」
昼の眩しさの中で、広場で踊っているのは子供たちだ。
二人ずつ手を取り、くるりくるりと回っている。
刈り入れから早めに休憩を取らされたアセリアは、木陰でその様子を眺めていた。
この村でも、ダンスはペアで踊るんですのね。
けど、わたくしの知っているダンスとは随分違いますわ。
アセリアの知っているダンスは、宮廷のホールで踊るものだ。
アセリアがまず最初に王子と踊る。婚約者として。
そして、ダンスに誘ってきたおじさまがたと踊る。
貴族の息子たちと踊る。
いつだって同じ。最初から最後まで。
同じステップ。同じ速さ。同じルート。
相手が王子であっても、どこかの誰かであっても同じだった。
ただ、周りの音に耳を澄ませ、同じステップを踏むだけ。
それがどうだろう。
目の前の子供たちは、キャアキャア言いながら、思い思いのステップを踏んでいる。
……あれが、ダンスですのね。
では、わたくしが踏んでいたステップはなんだったのだろう。
そんなことをふと思ったところで、
「アセリアちゃん!」
声がかかった。
目の前で踊っていた子供たちだ。
アセリアの両側にトサッと陣取ったのはソフテとミルデだった。
「アセリアちゃんは、ダンス誰と踊るの?」
ダンスを踊る?
「どういう意味ですの?」
「収穫祭のダンスのことだよ!」
アセリアはそこで、キョトンとしてしまった。
収穫祭でペアのダンスを踊る?そんな出し物があっただなんて。
「ダンスがあるんですの?」
尋ねると、一斉に、
「そうだよ!」
と返事が返ってくる。
「みなさん、ペアで踊るんですの?」
「そう!姉ちゃんはセインと踊るんだから!」
と、ソフテがニコニコと教えてくれる。
「きゃあ!なんでバラしちゃうの!」
右から左から、キャアキャアと可愛らしい声が飛んでくる。
そうですのね。乙女はユニコーンと……。
「わたくしは、どなたもおりませんわ」
そう当たり前のことを返事する。
収穫祭の時は仕事もある。劇のこともある。
きっとダンスどころではないだろう。
それに……わたくしと踊る殿方などおりませんわ。
恋人も婚約者もいない。
それに、誰にも言っておりませんけれど、何かあってこの村に来たのは明白。
そんなアセリアとわざわざ踊る男性など、居るとは思えなかった。
「アセリアちゃんもダンス、踊った方がいいよ!」
あっけらかんと、ソフテが言う。
「けど、どなたからも、誘われておりませんのよ?」
その疑問に、ソフテがキョトンとアセリアの顔を見上げた。
「アセリアちゃんの方から誘えばいいんだよ?」
「あら?」
いいんですの?それはマナー違反ではなくて?
「ソフテも自分からお誘いしたよ!他にも、隣のおばちゃんがおいちゃん誘ってたし」
「いいんですの……?」
王都では、女性から誘うのは御法度だったけれど。
もし、自分から誘えるのなら、わたくしはどなたを誘いますかしら。
さて、ダンスのお相手は誰になるでしょうか!




