118 夏は収穫の時期ですわね!(2)
不覚ですわ。
アセリアはベッドの上から、窓の外を見やる。
畑仕事で体調を崩してしまうなんて。
外ではピーピーと鳥が鳴いている。
倒れてそのまま家で休ませてもらい、すでに翌日の昼だ。
ハルムの声が頭の中を巡る。
『無理はしないように』と。
けど。
「もう、元気ですわ」
外は騒がしい。
村人たちが総出で、刈り入れを行っているのだ。
「わたくしだけ何もしないなんて、出来ませんもの」
アセリアは、ブーツに足を入れると、いつもよりもしっかりと紐を締める。
意気揚々と家の扉を開けると、バタン、と扉を締めた。
ズカズカと畑へ歩いて行く。
畑で働く人々の顔がやっと区別つくあたりになって、案の定ハルムが駆け寄ってきた。
「お嬢様!」
「わたくしは……!」
意気込んで働かせて貰おうと思った。
けれど、ハルムの顔を見てしまったから。
なんで、そんな傷ついたような顔をしますの……。
ハルムは、いつだって無表情で仕事を行なっていた。
だから、どう思っているかなんて、考えなくてもよかった。
けど、今は。
「ずるいですわ」
「どっちがですか」
ハルムが、困ったように笑う。
「見学ですか?」
その顔を裏切るわけにはいかないけれど。それでも、ハルムに嘘をつくことも出来なかった。
「……働きに来ましたの」
「無理はするなって言ったはずなんですけどね」
ハルムの眉が寄ったところで、周りに少年たちが集まって来た。アセリアが劇を見ている広場の少年たちだ。
「心配なのかよ」
少年が、ハルムの後ろからにゅっと顔を出す。さらに後ろから出て来たのはミルデだ。
「そりゃ心配よ。奥さんが倒れたのよ?」
心配?
呆れてるんじゃありませんの?
もう一度、改めてハルムの顔を見てみる。
目が合ったハルムは、確かに柔らかいけれど辛そうな顔をしていた。
「そりゃ、心配するでしょう?昨日、あんなふうに倒れられて」
「……そうですの?」
「そうですよ」
「でもよー、ハルム」
少年は少し偉そうだ。
「奥さんだって、ひとりぼっちは寂しいだろ?」
「そうなんですか?」
「そうですわ」
とはいえ、そんな顔を見せられて、無理を言って働きたいと言うことが本当に正しいことなのか少し悩んでしまうけれど。
「……昨日は、意気込みすぎてしまいましたわ。皆さんに負けないように、と。流石に今日からは、自分の体力を考えたいと思いますわ」
「そうは言っても……」
珍しく、ハルムが苦悩の表情をしている。
横から口を出して来たのは、やはりそこにいた少年だ。
「俺たち、奥さん見ててやるからさ。休憩するように言うし、ハルムに細かく報告してやるよ」
「そうですか……?」
そこで爆弾発言をしたのは、その少年たちだった。
「昨日はすごかったもんな!ガバって抱き上げてさ」
「きゃー!」
がば?
いえ、確かに誰かが運んでくれなければどうにもなりませんわ。そしてそれは執事であるほうがいいに決まってますわ。
だから、なんて事……。
「ハ、ハルムなら、やって当然ですわ」
冷静に、と思ったのも束の間。
「声裏返ってんぞ」
なんて声が聞こえたものだから。
アセリアはそれ以上何も言えなくなってしまったのだった。
アセリアと子供たちが仲良くなってきましたね。




