112 台本会議をいたしますわよ!(1)
目の前で、少年少女たちがわくわくしながらこちらを見ている。
アセリアは、紙の上でペンをふらつかせて、子供たちに向かい合う。
……子供とこれほど触れ合うなんて、初めてのことですわ。けど、これだけ責任のある立場を任されたのですもの。
アセリアは、子供たちがする『ユニコーンと乙女』の劇の台本を書くことになったのだった。
確かに、話をちゃんと知っているのはアセリアとハルムだけ。
それもハルムの方は、橋造りで忙しいときている。
この仕事がアセリアに回ってくるのは、必然というものだった。
「では、まず役を決めなくてはなりませんわ。出てくるのはユニコーン、乙女、それに乙女の父親、森に住む精霊たち」
目の前にいるのは、ソフテ、そしてソフテの姉であるミルデをはじめとした、9人の子供たちだ。
「では、ユニコーンをやりたい人はいらっしゃいますの?」
アセリアがファエンから借りたバランスの悪い椅子の上で腕組みすると、椅子がガタリと揺れた。
「はいはーい!」
手を挙げたのは8人。主役とはいえ、これほど人気が高いとは。
ここはむしろ、ただ一人手を挙げなかったミルデに注目すべきだろうか。
「ミルデ、あなたはなぜ、ユニコーンに手を挙げませんでしたの?」
するとミルデは、恥ずかしそうに手を胸にやり、アセリアを見上げた。
「あ、あたし……、乙女がやりたくて」
乙女が。
「あら!いいですわね!とても似合いますわ!」
その言葉は、お世辞でもなんでもなかった。
アセリアが持ち合わせていない純粋な瞳。綺麗なものへの憧れを、この少女は持っている。
「では、ミルデに乙女を託しますわ。そしてミルデ、あなたはユニコーンはどなたならできると思いますの?」
「あたしは……、セインができると思う」
セインは、9人の中でもおとなしめの、男の子たちからは少し離れ不満そうな顔をしている子だった。
今だって、男の子たちとはしゃぐんじゃない。女の子たちに混じって地面に座り、口を一文字にキュッと閉じているような子だった。
「セインは頭いいし」
ミルデが続ける。
「セインがいい!」
その、ミルデの『セインがいい』という言葉で、アセリアは不思議な空気を感じ取る。
ミルデの控えめな、それでいて想いが乗ってそうな言葉と。
そしてミルデのセインを見る瞳と。
……恋愛的な意味なんですの!?
アセリアが目を丸くする。
こんな子供が?
けど、普通に考えればそれもおかしくないことだ。
アセリアに縁がなかっただけで、子供の頃から恋愛的な噂などはあった気がする。
セインの方はそっけなく、そこに恋愛的な気持ちは見受けられないけれど。
「では、ユニコーンはセインにしますわね」
「うん。任せてよ!」
セインが自信ありげな顔を見せた。
アセリアは『ユニコーン』『乙女』と書き、その横にミルデとセインの名を書きつけたのだった。
アセリアちゃん、おそらく文才とかはそれほどないです。




