110 お祭りを作りますわよ!(2)
アセリアとハルム、そのまま広場で地面に座っていた。
次の会議の相手は子供たちだ。
「俺、主役ー!」
「あ、あたしも勇者!」
「あたし……、あたしはぁ……」
子供たちが好き勝手言う中で、みんなで何か劇を作ろうというのだった。
「その前にどんな話をするか決めないといけませんわよ」
アセリアがピシャリと言うと、ソフテが嬉しそうに声をあげる。
「アセリアちゃんは何するの?」
アセリアは、少し面食らった。
自分が劇に出るという発想には至らなかったからだ。
「わたくしは、劇には出ませんわよ。さすがに、子供の劇に一緒に出るなんていたしませんわ」
そう言った瞬間、
「えー」
子供たちの口から不満の声が上がる。
「やりませんわよ」
「じゃあハルムは!?」
ソフテが少し怒り気味に聞いたけれど、
「私も、それは遠慮しておきます」
とハルムは優しい笑みを浮かべた。
「話はどうしましょうか」
「わたくし、話を作るなんて出来ませんわよ」
「俺もー」
「あたしも」
みんな口々に言うので、ハルムが思案の顔を見せた。
「では、覚えている物語を劇にするのがよさそうですね」
「物語?」
子供たち全員が、キョトンとした。
この村には、基本的に本はない。
あまり外の村と交流があるわけでもない。
橋が壊れているせいで、吟遊詩人もこの村まではやって来ないのだ。
大人たちから聞く話はあれど、話を聞く度に違う話になることもあり、あまり物語という感覚はない。
それでも子供たちは、一瞬の後、堰を切ったように口々に物語を語り出した。
「勇者がね!ドラゴンを倒すの!ドラゴンって、あのお山のドラゴンよ!」
「ロマンチックな話じゃなきゃダメよ!」
アセリアは呆気に取られる。これほどまでに騒がしい場所など、初めての体験だった。
チラリとハルムを見ると、やはり困惑した表情を浮かべている。
そうですわよね。ハルムだって、わたくしと同じ環境で過ごしてきたんですもの。
「そういえば」
アセリアがふと口にする。
「ユニコーンの話がありましたわね」
「ユニコーン……あの、乙女とユニコーンの物語ですか?」
「そうですわ」
かつて、アセリアとハルムが隣同士で勉学に励んでいた時、授業で出てきた物語だ。
なんでも、神話を元にした有名な話とかで、暗記までさせられた。
「どんな話なの?」
ソフテが目をキラキラさせた。
「あれは、遠い遠い神聖な森での話」
そこには、ユニコーンが住んでいた。
白く白く、どこまでも白い森の中。木々は硬く結晶化していて、触れれば壊れてしまいそうな森。
そこへ一人の乙女が迷い込んだ。
相手がユニコーンだと知らぬまま、陰から聞こえる声に支えられ、乙女は助かることになる。
それはそれは、淡い恋の物語だ。
「素敵な話ね」
うっとりとそう言ったのはソフテの姉だ。
「じゃあそれにしよう!」
騒がしさは消えない。
「私もいいと思います」
そう言って、ハルムが優しい視線をくれた。
ソフテは6歳くらい、ソフテ姉は11歳くらいです。姉は妹の面倒をよく見ているようです。ソフテのひしゃげた髪を結んでいるのもこの子。




