109 お祭りを作りますわよ!(1)
会議会場は、広場だった。
椅子もテーブルもないので、地面に座り、丸くなった。
メンバーは、アセリアの他にハルム、村長、ファエン、バルド。それ以外は、通りすがりの村民がいたりいなかったり、通り過ぎたり聞き耳を立てていたりだ。
「ここに丸く舞台を作るのはどうですの?」
広場はそれぞれの民家に囲まれており、どこが端ということはない。
なので、舞台を作るなら真ん中だ。
「いいですね。一段高いだけの舞台なら、男どもがなんとかしてくれるでしょう」
「木材も、その程度なら周りの森で出して来れそうですね」
「周りに椅子と、テーブルと……」
「鶏、出そうか?」
と声をかけてきたのはオエグさんだ。
「そりゃあ、嬉しいな」
「まあ、オエグにばかり頼るわけにはいかないからね。その前に男どもで狩りに行ってくれるかい?」
「ああ、もちろんだ。どっちにしろリーフ討伐の時期だからな」
「リーフはそんなに多いんですの?」
アセリアが顔を上げる。
「いや、冬の食料にするんだ」
「問題は出しものですわね」
手の中には金貨20枚。
アセリアが王宮で見たことのある、夜会の出しものだった楽団や詩の朗読をしていた俳優たちは、流石に金貨20枚では舞台に立ってはくれないだろう。
「わたくし、詩の朗読はしたことがないのですけれど、お、覚えている詩ならありますわ」
そう呟きながらハルムの方を見た顔が、よほど冷や汗ダラダラで切羽詰まった顔をしていたのだろう。
「無理はしなくていいですよ」
とあまりにもそっけない返事が返ってきた。
であれば、この金額で何処からか連れてくるしかない。
オーディションのようなものをするわけにも、……いきませんわよね。
「アセリアちゃん」
そこへ話しかけてきたのは、よく広場で遊んでいる子供の一人、ソフテだ。
ちょっとひしゃげたツインテールが揺れる。
「うち、家族で歌いたい!」
アセリアは、それを聞いて、ドキリとする。
「そ、そうですわね」
見たこともないものを見た時のよう。いや、それはもう、見たこともないものを見た時の衝撃だった。
「何も、外から連れてくる必要はありませんわよね」
そう、何も、王都の舞台でしかやってないような大人向けのものをやる必要もない。
この村のお祭りなのだから、この村で楽しむためのものが出来ればいいのだ。
泣きそうになる。
そんな当たり前のことにも気付けないだなんて。
「では、お願い出来ますかしら」
微笑むと、ソフテが、
「任せて、アセリアちゃん!」
と嬉しそうにジャンプしてくれた。
「俺も!」
とソフテの後ろから顔を出したのは、やはりこの辺りで見かける10代前半の少年だ。
「みんなで劇したい!」
「あたしもー!」
そこからは大騒ぎだった。
「ダンスしよう!」
と言い出した女の子たちが、その場で手を繋いでダンスを踊り出したり。おじさんたちが肩を組んで歌い出したり。
「悪くない案だったようですね、お嬢様」
隣にいたハルムが、コッソリと内緒話みたいに言った。
「ええ、楽しくなりそうですわ!」
いい感じに秋に向かっていきますね!




