107 とうとうやってきましたわね!
その日、広場は祭りのようだった。
むしろ、祭りといっても過言ではなかった。
その夏も間近な晴れた日、ファエンが持ってきたのは、大きな豆の袋だった。
広場では、大きな豆の袋を前に、子供たちが話になって踊っていた。
豆は子供たちにとって、姉さんや母さんたちが手に入れた、希望そのものだったのだ。
畑に豆をまくことを承諾したオタルさんだったけれど、流石に全ての麦を豆に変えるわけにはいかないと、現在の畑の周りのかつては畑だった土地を、開墾することになったのだ。
それで出てきたのはなんと村の住人全て。
約300人もの人間が、畑を作ろうと、その日広場に集まったのだった。
300人もの人間を前にして、ファエンは、「コホン」とひとつ咳払いをした。
商人らしく、少しもったいをつけているのだ。
いつもの商人のテーブルには、今日は何も載っていない。
ただ、ファエンは、大きな袋に手をかけていた。
ポンポン、と手のひらで袋を叩いて見せる。
袋の中には、かなりいっぱいに豆が入っているようだった。
「ちょっと君、来てくれたまえ」
ちょいちょい、と指で誘ったのは、すぐ近くにいたハルムだ。
「はい」
執事らしい所作で真っ直ぐに立つハルムに、ファエンは袋を持つよう指示した。ファエンが上側、ハルムが下側だ。
「さあ、ご覧あれ!」
ザラザラザラザラ。
袋から、大きな豆が転がり出てくる。
黒い筋のある大きな豆だ。
「ソラマメ、ですわね」
転がり出てきた豆を一つ拾い、アセリアがまじまじと見る。
ハルムや村長、それにオタルさんも、その豆を検分するように手に取って見る。
ハルムが、村長とオタルさんに目で合図をする。村長とオタルさんが大きく、満足げに頷くのを確認すると、ハルムがファエンに向き合った。
「注文通りのようですね」
ファエンは、チッチッと人差し指を振る。
「注文以上と言ってもらいたいね」
ハルムは不敵な笑みを見せる。
「ええ。もちろんです」
村人たちは、合間に、「おお!」だの「キャー!」だのの声を欠かさない。まるでそれは、一つの劇を見ているかのようだった。
それで取引は、終わったかのように見えた。
けれど、もう一つ、ハルムの手に渡った袋があった。
それは、両の手のひらに収まるような小さな袋だ。
「これも、買ってきたぜ」
ハルムは中を確認すると、
「ええ、ありがとうございます」
と、また笑みを見せた。
アセリアがハルムの方へ寄っていく。
「なんですの?」
袋を覗くと、小さなつぶつぶが袋いっぱいに入っていた。
「花の種ですよ」
「花の?」
「ええ。春になると、真っ赤な花が咲くらしいです」
「真っ赤な花が?」
真っ赤というと、何の種だろう。
バラか、チューリップか、もしくは……。
「それは楽しみね」
アセリアが微笑むと、ハルムはニッコリと笑顔を見せた。
とうとう豆を手に入れました!!ソラマメでした〜!




