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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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106/110

106 そろそろ夏のようですわね!

「今日は暑いね」

 と言ったのはウィンリーだ。


 確かにその日は暑かった。

 サンドイッチをハルムと仲良く食べた後、アセリアたちはまだ川辺にいた。


 その日も、棟梁の演説があった。

 棟梁がみんなに話をするのはもうすっかり定番になり、今日は若い頃、見習いでどんなことをしてどんなことを思ったかという話だった。

 棟梁の声は思いの外よく通り、少し説教じみてはいるものの、娯楽のないこの村では、その朗々と響く声を、みんななかなかに楽しんでいた。


 パチパチと拍手が響くと、女性たちが棟梁の話の感想をワイワイと話し出す。


 確かに今日は、暑いですわね。


 ふと、家のことを思い出す。

 国の北方なだけあって、夏は短い。

 窓を開けていればそれほど苦労はないだろう。

 けれど、家の窓は一つしかない。あれで風は通るだろうか。


 ぼんやりとそんなことを考える。

 水面はキラキラと光を反射して、ここが涼しいのだとアピールしているみたいだ。


「暑いから〜」

「暑いから〜?」


 ミラとウィンリーが立ち上がる。


「ちょっと水浴びしていっちゃおうか!」


 ミラとウィンリーがわっと駆け出した。


 アセリアは「ふふっ」と笑う。

 子供っぽい方たちですわね。


 その時だった。

 ベラが、

「ほら」

 とアセリアの両手を取ったのだ。


「え、ちょっと、困りますわっ」


 笑いながら手を引き、ブーツのままベラはアセリアを川へと誘った。


「きゃっ!冷たっ」


 洗濯の時にザブザブと川へ入ることはある。

 けれど、これほど心の準備もなしに水に入ると、さすがにびっくりする。


「冷たいね〜!」

 と、ザバザバと水を蹴るように歩いて、ウィンリーがそばまで近付いてくる。


「女子!うるせーぞー」

 と、遠くからバルドが声を張り上げる。

 作業場から、ハルムがこちらを笑いながら眺めているのが見えた。


「一緒に遊ぼうよー!」

 ウィンリーが叫ぶ。

 バルドが、周りで雑用していた少年たちと笑う。

「ワッハッハ!仕事中だー!」


 けれど棟梁が、相変わらず明瞭な声で叫んだ。

「いいぞ!少し休憩してこい!倒れられた方が厄介だからな」


 その瞬間、弾かれたように少年たちが川へ走り出した。

 飛び込めるほど深いわけでもない川だというのに、ザブン、ザブン、と大きな音がした。

 水滴が女性たちの方へかかり、

「きゃー!」

 と声が上がる。


 一際大きな音を立てているのがバルドだ。


 困ったように苦笑して、ハルムが遠くからその様子を眺めていた。


 アセリアは、ザバザバと水からあがり、ハルムの手を取った。

「涼しいですわよ」

「え、あ、お嬢様」

 少し動揺したハルムは、それでもアセリアに大人しく手を引かれついてきた。

「私は入れませんよ?」

「ええ。水辺にいるだけでも涼しいと思いますわ」


 ハルムが川の端へ立つ。

 草に滑れば、水の中へ落ちてしまいそうな場所だ。


 アセリアはそんなハルムの手を離さず、ザブザブともう一度水の中へ入った。


「ちょっとお嬢様……!」


 アセリアが「ふふっ」と笑った瞬間、

 ザブン!

 ハルムは水の中へと落ちてしまった。


 ハルムが、困ったような顔で笑う。

「冷たいですね」

「でしょう?とても冷たいですわね!」

夏っぽい感じですね!

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